45) 通り名なのね。
さって、ハルゥ市に着いた。
街の建築構造がブロックと樹脂っぽいと変わってはいないんだが……
「しっかし派手だよなぁ」
独り言スキルが上がりそうな田舎者発言をしてみるがそんなスキルは上がらない、聞き手が居るので大丈夫!魔道書と精霊達だけど。
まぁ、とにかく街の色が特に派手なのだ。原色の建物が立ち並び、隣同士で同じ配色がない。
赤青黄、白黒緑……“群青色キレイ”とか言ってしまいそうだ。
門で確認した冒険者ギルドへ歩きながら周りを見ると、魔道具を扱う露店ばかり並んでいる。
「流石は魔導都市と呼ばれている街だよねぇ」
『そんなコトはどうでもいい……疲れたよぉ』
肩に乗っているキュー&シーは座っているのではなく、グッタリ猫のように伸し掛っている。
昨晩の寝る前の魔力消費訓練に付き合って貰ったんだけど、なにやらヤリ過ぎたようだ。
キューちゃんには、出来るだけ広範囲の高出力で植物の成長を促す魔法を使って貰った。森林育成ってエコな感じだよね?
シーちゃんには、やはり広範囲高出力で光を吸収する闇の魔法を展開させた。夜はグッスリ寝れるように配慮しましたって感じ。
精霊魔法を使った魔力消費を重点に置いて、危害が発生しないように考えた末の選択だった。
結果……朝起きてみると森がキノコだらけになっていた。
もちろん、野営を即座に撤収して逃げましたとも。
というわけで、精霊魔法を派手に使ったお陰で二人は疲労困憊に陥っている。
「疲れているのなら、袋に戻ったら?肩に乗ってたら辛くない?」
『あんなトコより、こっちの方が断然マシよ。それに魔力残渣が気持ちいいのよ』
冒険者ギルドに到着したオイラは、そのままカウンターへ行かずに掲示板へ向かった。
朝一番の忙しいラッシュ時に“訪問クエスト”の処理は嫌がらせだと思うんだ。
(っと、こっちはクエスト掲示板じゃないな……時事報?)
仮面のお蔭で文字が読めた。何故か勇者に関する記事が大きく掲載されている。
・召喚された3人の勇者に続く“勇者予備隊”が各地域の迷宮へ演習。
・シュンの迷宮より這い出た魔物を速やかに3人の勇者が撃退。
・活性化されたトウ迷宮を勇者と予備隊が制圧。
(召喚された勇者が3人って何?あと33人はドコ行った?)
記事の詳細を読んだトコロで、何となく残りの33人が勇者予備隊だということに気付いた。
各地域に派遣された勇者たちが、黙々と迷宮へ入って実践経験を積んでいるのも理解できた。
「なんだか、置いていかれた感じがするよなぁ……」
まぁ、嘆いても仕方がないし目立ったらアウトな気がするので、地道にやっていこうと決意してカウンターへ向かった。
「お疲れ様です、如何致しますか?」
「あ、訪問クエスト達成をお願いします」
「それでは、認識票を確認させて下さい」
認識票を読み取り器に押し込み、内容を確認した受付嬢はオイラに伝言があるとの事で2~3分程待たされた。
「2件の伝言と、“通り名”登録、それに物品の譲渡がありました」
「通り名って、ナニ?」
オイラの質問に少し驚いた受付嬢だが、直ぐに気を取り直して説明してもらった。
“通り名”とは、冒険者ギルドに留まらず各種ギルドでも取り入れられているシステムだということ。
ギルドに登録する名前が偽名でも問題なく登録できるために、同じ名前が多数存在すると面倒事が増える点からの対策のヒトツらしい。
通り名を付けることで個人の特定をし易くなるという事だ。あと、その人の動向や職業も伺えるようにもなると。
登録方法は権力者の一発入力か多数の応募によるもので、通り名も複数登録されるらしい。“自称”は出来ないんだね……
「んで、オイラの通り名って“お荷物”と“破砕”ですか……」
“お荷物”は解る、初の迷宮探索で笑われたからな。それはいい、目立たないからな。
だが……“破砕”ってナニ?オイラ何か壊した?理由が知りたい、誰が登録した?
何故か受付嬢の顔が引き攣っている……思いっきり笑いを堪えているようにしか見えない。
「ですよねぇ、“お荷物破砕”って踏んだり蹴ったりですよねぇ?」
「ぷっ……っく!」
持たせた荷物を破砕するようなヤツに“荷物持ち”を任せられる心の広い冒険者なんて居ないだろうな、絶対。
段々可笑しくなってきてオイラが笑ったら、受付嬢も釣られて堪らず笑い出した。
カウンター越しに笑い合う二人を生暖かい目で見守られながら、落ち着いたとこで伝言の方に目を通す。
ひとつめは「街に着いたら連絡寄越せ。近ければ迷宮探索へ誘うからな!(アイロ・ダッテサ)」あら、嫌な予感がするなぁ。放置だ、放置。
ふたつめは「勇者様、砦での資産を譲渡完了致しました、確認下さいね(ニジーナ・ナイロ)」うお?振り込んだ?振り込んだ詐欺ですか?怖いよコレ!?
(って何故にオイラを“勇者様”と呼ぶ?しかも「下さいね。」と?)
「残るは、物品の譲渡……何か振り込まれたのかな?」
「あ、ハイ。目録をお持ちしました。内容を御確認下さい」
そう言って受付嬢は冊子をオイラに手渡した。
冊子を読んでみると、凄い種類の品物が羅列されている。ちゃんと中身を見ていくと、何だか見知ったモノが記入されていた。
「あー、えっと……確認してもいいかな?」
「ハイ、どうぞ?」
「この、ニジーナさんってもしかすると商国お抱えの魔術師だったりします?」
「えっ?“彩色魔術師”や“奇天烈博士”の通り名を持つ人ですよ?通り名は御存知無いですか?」
「ありゃ……名前を聞いてなかったもんなぁ」
「そうですかぁ。超有名人ですよ?色んな意味で」
「うん、色んな意味はオイラも解った。そうか、小柄なのに有名なんだねぇ……」
「ひっ!?」
受付嬢は返す言葉もなく硬直し、目を見開き、顔も引き攣っていた。今度は驚愕の表情だ。
「え?オイラ何か言った?マズイ事言った?」
「本人の前で、身体的な特徴を仰らない方が良いですよ?酷い目に遭いますよ?」
「気にしてるのか……なるほど、気をつけます。怒らせたら怖そうだもんね」
「殺される事は無いですけど、トラウマを仕込まれて再起不能になったりしますから、ご注意下さいね?」
怖ぇよ小柄ちゃん、どんだけ身長に強いコンプレックス持ってんだよ!?
「了解、心にしっかと刻んでおくよ。しかし、彩色魔術師は解るんだが、奇天烈博士ってなに?」
「あ、はい。魔道具作成の第一人者で、一般人が理解できない魔道具を打ち出すのが有名な人ですので、そういう通り名が付いたようですね」
何やってんだ……
「んじゃ、返事を書いておくかな」
「わかりました、道具をお持ち致しますね」
オイラは小柄ちゃんへとメール返信の要領で近況を書いた。




