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勇者36番  作者: ハムリンゴ
第三幕:捨てられても、頑張ろうと思う件について。
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44) 契約してみたのね。

 結局、ふたりの精霊との会話ですっかり昼も過ぎ、次の目的地へ到着する時間が遅れてしまった。

 衛星都市ハルゥ市。

 隣接する国の軍事力が魔法寄りになっている為に、対抗的に魔導都市となっているようだ。

 ちなみに、西側のフュー市は隣接国が武力に偏っている為に戦士や弓師等の武術都市である。


「さって、野宿の準備すっかね?」

すっぴょこ☆


 オイラと☆導きの書☆でシェルター状の寝床を樹上に設営し、寝るまでの時間を魔法の訓練に充てる。

 魔法の訓練と言っても、最近は属性魔法(無)のスキルレベルが上がらないので、別属性の魔法を使っている。

 しかし、属性魔法(行使)のスキルが“無効”って表示になっている為か、全く発動しない。

 いや、発動しないというのは語弊がある。しっかりと魔力は減っているので発動はしているが、効果無しって事だろう。

 ただ、属性魔法のレベル自体は使っているうちに上がるので、何だかソレが楽しくなってきている。


「あ、そうだ。キューちゃんにシーちゃん、聞こえたら出てきてくれないか?」


 寝床の屋根から中に向かって2人の精霊を呼んでみる。顔を上げると、2人ともいつの間にか隣に座っていた。

 

「うおう、はやっ!?」

『なぁに?』


「アイテムに付いた魔力の残渣を吸うって言ってたけど、直接本人から吸うのはダメなのか?」

『直接吸うとなると……契約したいの?』


「契約しないと吸えないのか?」

『ありゃ?契約を知らないの?魔法使いなのに?大丈夫なの?変態なの?』


 イラっときたのでキューちゃんにデコピン一発を放ったあと、その痛みを回復させてから講座が始まった。

 精霊魔法とは、契約した精霊を媒体として魔法を具現化するそうだ。もちろん、その際に魔力を消費する。

 そこで使用中に発生する魔力残渣を吸収するそうだ。

 また、契約無しで魔力を直接吸うのはあまり効率が悪く、身体にも良くないらしい。同調とか共有等、何とか難しいことを言っていた。


「んじゃ、契約するか?」

『何それ?軽いよ!?』


 何か驚かれた。精霊との契約というのは、もっと厳かに執り行われるものなのか?

 イヤ……だらしなく惰眠を貪っている姿を見れば、そんな気も失せてしまうよな?


『あ、でも……本契約するのなら、背負袋の契約が無くなっちゃうのよさ?』

「あら、そりゃ拙いな。」


 本契約となる場合はキューちゃん本来の属性が顕れるので、精霊付き袋の空間魔法に制限が掛かるらしい。

 精霊程度の大きさなら、精霊界へ持ち込むことが可能だが、大きなアイテムは無理とのこと。


『大丈夫』

「はい?」


 ずっと黙っていたシーちゃんが会話に参加してきた。自信を持った目でオイラを見据えている。


『空間属性もある』

「えっと……もっと詳しく?」


 またしても時間を掛けて講義が開始される。

 曰く、シーちゃんの属性は“闇”であるが、空間も操る特性もあるとのこと。

 つまり、本契約を結んでもバッグの荷物の出し入れには問題が無いらしい。

 キューちゃんは“地属性”なのだそうだ。


「んで、契約には何が必要なのかね?」

『えっとね、契約の儀式を行えば良いだけなのよ』


「なるほどね、どうする?契約する?」

『え……?普通は人間の方から契約を求めて来るんだけど?』


 キューちゃんが契約するのはオイラからお願いしなさいよ?的な事を仰るので、話の方向を変えてみる。


「んじゃ、シーちゃんはオイラと契約する?」

『ん、する』

『ちょっと!?ボクとも契約してよっ!』


 と、いうわけで……オイラはキュー&シーと契約する事となりました。


 キューちゃんは大地の精霊で、地属性や植物系統の魔法を使うとの事。

 シーちゃんは混沌の精霊で、空間や闇の属性が得意なのだそうだ。

 精霊付きの背負い袋の担当はキューちゃんに任せた。もちろんポーチは使用不可になる。


「それで、契約の儀式ってどうするんだ?」

『右腕を出して頂戴』


「おう。」


 オイラが右腕を出すとキューちゃんが腕を抱え込み、ちょっと引っ掻いた。

 チクリと痛みはあったが驚く程でもなく、滲み出た血を指で伸ばしグルッと輪を描いた。

 腕に血の腕輪を描いた後、何か呟くと血の部分が光りだした。


ぱしん。


「うおっ!?」

『ボクの分は完了っと』

『ウチのぶん』


 シーちゃんも血で描かれた線の横に同じように傷を入れ、血の腕輪を描き何か呟く。


ぱしん。


 オイラの右腕には、クッキリと2本の線が刻み込まれた。


「んで、直接魔力を吸えるようになったのか?」

『私達を通して魔法を使えば、出来るから。やってみる?』


「っていうかさ、何の魔法が使えるの?」

『えぇ~!?知らないの!?知らないで契約したのっ!?バカなの?なんて無知!変態!!』


「むかっ!」

『何度も同じ手がボク……ぐはっ!?』


 キューちゃんは、オイラが構えたデコピンの準備態勢に気付いて頭を庇ったので、腹にヒットさせてみた。


「んじゃ、任せるから危なくない程度の魔法を使ってみてよ?」

『ん、解った』


 そうして、寝るまでの時間をオイラの魔力消費に勤しんだのでしたぁ。

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