43) 追加されたのね。
「さってと、もう一眠りするか……」
キューちゃんを丁寧に送り返した後、もう一枚の毛布を取り出して再び眠りにつく事にする。
毛布を交互に使えば精霊サンも出てくることは無いだろうからな。
あ、ちゃんと毛布は畳む様に伝えるのを忘れてた。今度出てきたら躾しよう。
(んで……何故またオイラの毛布が剥ぎ取られているんだ?何故に?)
目の前に、ふたつの毛布の塊が転がっている。
もう一度確認しても、やっぱりオイラの使っていた二枚目の毛布が奪われている。
さらに、キューちゃんの簀巻きに使った毛布まで転がっている。
「何か、嫌な予感しかしないぞ?そう思わない?」
すっぴょこ☆
「肯定されてもな……もう朝だし、毛布を両方共背負袋に突っ込むか?」
ぷいぷい☆
☆導きの書☆が仮面に飛びついて装着を誘っている。
やっぱり、装着して確認しないとダメか……
案の定、毛布から淡い緑の左足が生えている。
「精霊が……精霊が増えてるぞ!?」
しかも、何故かもう二枚目の毛布から黒水晶の様な足が生えている。
キューちゃんと思われる方の毛布を掴んで、振るい落とす。しかしキューちゃん……起きない。
もう片方も同じように振い落した。こちらも起きない。
だらしなく眠っている精霊が二人も目の前で裸のまま、転がっている。
そっと、毛布を被せて考える。
一人はキューちゃんだろ?もう一人は誰?キューちゃんが連れてきたのか?
「気にすると負けだな、よし朝食にするか。」
寝床にしていた樹上シェルターの天井を取り払い、朝日を浴びながら保存食を摂った。
明るくなったはずなのに、二人とも起きてこない。まだ被せた毛布に包まっている。
さて……
ぱちん。
『いったーい!なに!?』
キューちゃんが飛び起きた。昨晩と全く同じ反応だ。
「おはようさん、それ増えてるけど……誰?」
『はい?誰って?知らないわよ!っていうか、お尻痛いよ!?』
「知らないの?君の背負袋の中から連れてきたんじゃないのか?」
『ポーチの子でしょ?あなたの持ってるもうひとつの袋の魔道具。』
「あ……そっちか。んで、何故に出てきたと思う?」
『そりゃ、出ても問題が無いと解ったからじゃない?』
「そんなものか?」
『そんなものよ?』
オイラが危害を加えないと判断したらしく、ポーチと背負袋から精霊達が這い出てきたワケだ。
キューちゃん曰く、袋に入ってきたアイテムの“魔力の残渣”を吸うより、直接使用者から漏れている魔力を吸った方が効率が良いらしい。
「起こせないのか?」
『ボクはイキナリ叩き起こした癖に?』
「なんか、割れそうじゃん?」
『ボクのお尻は割れちゃったよ?ほら?』
ビシィッ!
『にぎゃあ!?』
「ケツ向けるなバカ、服を着ろ。」
『ふ?ふわぁ……』
あ、今のキューちゃんの悲鳴で目が覚めたようだ。
「おはようさん。」
『ん、おはよう……見えてる?』
「あぁ、バッチリ見えてる。」
『変態さん?』
「何故にっ!?最初の会話で何を掴んだ!?」
『何となく?』
「まぁ、良いや。名前は?」
『シー・ハオ・エス。』
“シーちゃん”の単語しか返さない微妙な会話で得られた情報は、彼女の名前と精霊としての属性くらいのモノだった。
キューちゃんとの質疑応答では、精霊付きの道具には特殊な契約によって精霊がついており、収納物から魔力を得ることで効果を発生させるという。
通常の精霊との契約方法は血と言葉により締結され、契約の一方的な破棄はリスクが伴う。精霊側の場合は能力の半減、使用者側の場合は聖痕が残る。
契約違反の聖痕は、他の精霊魔法を契約する際に大きな障害となり、真面に精霊魔法が使えないと考えたほうが良い。
また、野良の精霊達は体内の魔力が無くなると弱体化してしまうので、魔力の濃い地域を好んで住んでいる。
さらに、精霊魔法は契約した精霊へ“コトノハ”により魔力を提供し、魔法を具現化する。要するに“生きた魔法陣”だ。
精霊にもステータスはあるしスキルや特性もあるそうで、高位になると普通に見れるし触れることも可能らしい。
「触れられるということは、キューちゃんは位の高い精霊なのか?」
『高位の精霊が袋に憑くワケないじゃないのよさ?おバカさんですか?』
びしぃっ!
『ふぎゃあぁっ!』
偉そうな姿にカチンときたので、再度“デコピン”をキューちゃんに放った。
『容赦無しね。』
「あぁ、接触できるのは高位の精霊じゃなかったのか?」
シーちゃんの頭を軽く撫でて、仮面を外して再度触れてみると見えてはいないが感触はある。
『むきぃ!何この扱いの違いはナニっ!?』
『変態さん?』
「あぁ、すまん。見えていないけど触れることが可能らしいな。これは仮面の効果では無いな、しかし、何故に変態と?」
ん?あれ?
人差し指と中指の間に腕?いや……親指と人差し指、それと薬指と小指の間にも腕が?あら?。
ぺたぺた、ぐぐっと軽く摩ってみると、毛が無く柔らかい……
『大胆。』
「うっわ!ゴメンッ!頭じゃ無かったのかよっ!?」
思いっきりシーちゃんの体ごと……意外と感触の良い胸を鷲掴みにしてしまっていた。




