37) 危なかったのね。
オイラの投げた松明は、小さな点となって飛んでいく。
「ど、どうしましょう……?」
「まぁ、森が燃えたら色々とまぁ……面白いことになるな。」
注入した魔力が切れれば、そのまま落下するのだが……適当にやったのでいつ切れるか解らない。
最悪、森の中に落ちて火事にでもなったら、相当の被害が出るはずだ……ヤバイ。
「取ってきます。」
派手なショーを開催している演習場の向こう側へ走って行き、影になって真っ暗になっている場所まで進んでいく。
次に仮面レーダで周囲に誰も居ないことを確認して羽織を纏い、無属性魔法による飛躍を行う。
まず、斥力の魔法陣を地面に投射、自分を目標に魔法を発動させて飛ぶ。次に勢いが着いた段階で無重力の魔法を自分に掛ける。
リン……ふぉん。
しかし、松明まで一直線に飛べるわけでもなく、空中で何度も微調整をしながら方向を変えて飛んでいく。
そして追いついた……オイラはオリハルコンを棒状に変えて振り下ろすと、叩きつけられた松明は下の川へと吸い込まれていった。
「よし、ミッション完了!」
あとは同じ手順で隠れるように街の反対側まで跳躍し、裏路地に着地した。そして羽織を脱ぎ、雑踏に紛れ込む。
しまった!着地点を考えるべきだった……ここは……どう見ても色街だ。
「こらこら、お前が来るには10年早いぞ?」
後ろから襟首を掴まれ、ヒョイと持ち上げられた。
「やっぱお前、面白いヤツだな。飯を奢ってやるから付き合え。」
オイラは有無を言わされないまま、川岸で話しかけられた“男”に子猫のような格好で運ばれた。
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「で、何やった?」
「秘密です。」
「おおう、それだけ食って秘密かよ!?」
「奢られる理由は知りませんが、出されたモノは戴く主義ですので。」
「お前……魔道士か?」
「えぇ、駆け出しですけどね。」
「主軸の魔法は何だ?」
「秘密です。」
「何処の所属だ?」
「どこにも属していません。強いて言うなら“龍族”ですかね。」
「お前、人間だろ?」
「えぇ、色々事情がありまして。」
「それも、秘密なのか?」
「はい。面倒事は嫌いなので。」
「面倒事が嫌いと言いながら、“龍族”を口にするとは……お前、相当腹黒いな?関わるなってか?」
「腹黒ですか?何故か皆そう言うんですよね。あ、これ、美味しいです。おかわりしても良いですか?」
恐らく、カエルの足だと思うが味付けがしっかりしている。尋ねれば料理法とか教えてもらえるだろうか?
「名前は何と言うんだ?俺はアイロだ、アイロ・ダッテサという。」
「アイロさんですか。僕は……」
「お、お前……実はバカか?」
「すいません、偽名を忘れてしまいまして。」
しまった、自分の設定した名前を忘れて、つい認識票を見てしまった……
「うっわ、自分で偽名とか言いやがった。」
「あ、そりゃマズイっすね。」
おバカのダブルアップに成功したオイラは、目の前の呆れた顔の男を観察する。
躰はガタイ君並にデカイ。獲物は無いが、筋肉と篭手が凄いので格闘家かも知れない。これは逃げられそうにないな……
「まぁ、偽名でもいいや。どう呼べば良いんだ?」
「ナナシノ。」
「そうか、結構この国の事情に詳しいと思ってたんだが、お前くらいの年齢で魔道士ってのは聞いたことがないわ。」
「歳は……24です。」
「うお?見た目と随分違うんだな。」
「えぇ、なので仮面を着けています。」
「なるほどなぁ。んで何しに此処へ?」
「迷宮探索の荷物持ちとして、商隊に乗り込んでます。」
「へぇ……魔道士の癖に荷物持ちって、冗談にしか聞こえないぞ?」
「今日、冒険者ギルドに入ったばかりでFランクなんですよ。」
「なるほどな、それでどこの商隊だ?どこに泊まっている?」
「あ……ここってどこですか?」
「迷子かよ……」
「いえ、演習場まで行けば大丈夫ですよ。」
「それを、迷子って言うんだよ。」
そう言えば商隊の名前とか聞いて無かったな。いや、言ってたかな?
演習場まで案内してもらっている間に、アイロさんはオイラについて興味を持った経緯を話してくれた。
アイロさんは松明の処理に走って隠れて跳躍したオイラを“見て”いたそうだ。
そして松明を叩き落とした後、上空をすっ飛んでいくオイラを捕まえて話をしたくなったそうな。
どんだけ目が良いんだか……
「ホレ、もうすぐ演習場だ。」
「あ、ありがとうございます。」
「イイって事よ。明日からよろしくな。」
「いえいえ、こちらこそ宜しくお願いします?」
アイロさんと別れてちょっと遅い時間と思ってたのに、意外と寝ている人が少なかった。
もしかして、夜通し飲んだくれているのだろうか?
とりあえず、隅の方で自分の範囲だけに結界魔法を張り、眠りについた。
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「おう、ナナシノ!起きろ、行くぞ?」
「え?あ、おはようございます……行くって、アイロさん何故にっ!?」
「あ?途中参加に決まってんだろうが?」




