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勇者36番  作者: ハムリンゴ
第三幕:捨てられても、頑張ろうと思う件について。
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37) 危なかったのね。

 オイラの投げた松明は、小さな点となって飛んでいく。


「ど、どうしましょう……?」

「まぁ、森が燃えたら色々とまぁ……面白いことになるな。」


 注入した魔力が切れれば、そのまま落下するのだが……適当にやったのでいつ切れるか解らない。

 最悪、森の中に落ちて火事にでもなったら、相当の被害が出るはずだ……ヤバイ。


「取ってきます。」


 派手なショーを開催している演習場の向こう側へ走って行き、影になって真っ暗になっている場所まで進んでいく。

 次に仮面レーダで周囲に誰も居ないことを確認して羽織を纏い、無属性魔法による飛躍を行う。

 まず、斥力の魔法陣を地面に投射、自分を目標に魔法を発動させて飛ぶ。次に勢いが着いた段階で無重力の魔法を自分に掛ける。


リン……ふぉん。


 しかし、松明まで一直線に飛べるわけでもなく、空中で何度も微調整をしながら方向を変えて飛んでいく。

 そして追いついた……オイラはオリハルコンを棒状に変えて振り下ろすと、叩きつけられた松明は下の川へと吸い込まれていった。


「よし、ミッション完了!」


 あとは同じ手順で隠れるように街の反対側まで跳躍し、裏路地に着地した。そして羽織を脱ぎ、雑踏に紛れ込む。

 しまった!着地点を考えるべきだった……ここは……どう見ても色街だ。


「こらこら、お前が来るには10年早いぞ?」


 後ろから襟首を掴まれ、ヒョイと持ち上げられた。


「やっぱお前、面白いヤツだな。飯を奢ってやるから付き合え。」


 オイラは有無を言わされないまま、川岸で話しかけられた“男”に子猫のような格好で運ばれた。



~~~~~~~~



「で、何やった?」

「秘密です。」


「おおう、それだけ食って秘密かよ!?」

「奢られる理由は知りませんが、出されたモノは戴く主義ですので。」


「お前……魔道士か?」

「えぇ、駆け出しですけどね。」


「主軸の魔法は何だ?」

「秘密です。」


「何処の所属だ?」

「どこにも属していません。強いて言うなら“龍族”ですかね。」


「お前、人間だろ?」

「えぇ、色々事情がありまして。」


「それも、秘密なのか?」

「はい。面倒事は嫌いなので。」


「面倒事が嫌いと言いながら、“龍族”を口にするとは……お前、相当腹黒いな?関わるなってか?」

「腹黒ですか?何故か皆そう言うんですよね。あ、これ、美味しいです。おかわりしても良いですか?」


 恐らく、カエルの足だと思うが味付けがしっかりしている。尋ねれば料理法とか教えてもらえるだろうか?


「名前は何と言うんだ?俺はアイロだ、アイロ・ダッテサという。」

「アイロさんですか。僕は……」


「お、お前……実はバカか?」

「すいません、偽名を忘れてしまいまして。」


 しまった、自分の設定した名前を忘れて、つい認識票を見てしまった……


「うっわ、自分で偽名とか言いやがった。」

「あ、そりゃマズイっすね。」


 おバカのダブルアップに成功したオイラは、目の前の呆れた顔の男を観察する。

 躰はガタイ君並にデカイ。獲物は無いが、筋肉と篭手が凄いので格闘家かも知れない。これは逃げられそうにないな……


「まぁ、偽名でもいいや。どう呼べば良いんだ?」

「ナナシノ。」


「そうか、結構この国の事情に詳しいと思ってたんだが、お前くらいの年齢で魔道士ってのは聞いたことがないわ。」

「歳は……24です。」


「うお?見た目と随分違うんだな。」

「えぇ、なので仮面を着けています。」


「なるほどなぁ。んで何しに此処へ?」

「迷宮探索の荷物持ちとして、商隊に乗り込んでます。」


「へぇ……魔道士の癖に荷物持ちって、冗談にしか聞こえないぞ?」

「今日、冒険者ギルドに入ったばかりでFランクなんですよ。」


「なるほどな、それでどこの商隊だ?どこに泊まっている?」

「あ……ここってどこですか?」


「迷子かよ……」

「いえ、演習場まで行けば大丈夫ですよ。」


「それを、迷子って言うんだよ。」


 そう言えば商隊の名前とか聞いて無かったな。いや、言ってたかな?

 演習場まで案内してもらっている間に、アイロさんはオイラについて興味を持った経緯を話してくれた。

 アイロさんは松明の処理に走って隠れて跳躍したオイラを“見て”いたそうだ。

 そして松明を叩き落とした後、上空をすっ飛んでいくオイラを捕まえて話をしたくなったそうな。

 どんだけ目が良いんだか……


「ホレ、もうすぐ演習場だ。」

「あ、ありがとうございます。」


「イイって事よ。明日からよろしくな。」

「いえいえ、こちらこそ宜しくお願いします?」


 アイロさんと別れてちょっと遅い時間と思ってたのに、意外と寝ている人が少なかった。

 もしかして、夜通し飲んだくれているのだろうか?

 とりあえず、隅の方で自分の範囲だけに結界魔法を張り、眠りについた。



~~~~~~~~



「おう、ナナシノ!起きろ、行くぞ?」

「え?あ、おはようございます……行くって、アイロさん何故にっ!?」


「あ?途中参加に決まってんだろうが?」

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