36) 練習は欠かせないのね。
えっと、素性がバレてしまったオイラは、緑の爺さんと対峙する形をとっている。
「あの……オイラ捕まっちゃうんでしょうか?」
「何故に?」
「龍に食われずに生きて戻って来ましたから。」
「また隷属に戻りたいのか?」
「戻りたいとは思いませんが、会いたい人は居ます。」
「戻る必要は無いぞな。」
「もしかして、何か条件付きになってしまうのですか?」
「状況を報告してくれるだけで、良い。」
「言える事と、言いたくない事がありますよ?」
「ほっほ、言いよるわい。」
結局、状況報告とはオイラの冒険者としての“活動報告”の事だった。それだけで良いらしい、何だか助かった気がする。
「はい、これで手続きは完了です。頑張って下さいね。」
「あ、はい。頑張ります。」
戻ってきた認識票には“F”のマークの刻印の他に、赤いフレームが装飾されていた。認識票がそのまま、冒険者の証(Fランク)になるだそうだ。
そして、ベタな設定だと思うがクエスト(ギルドからの依頼)を完遂していくと、どんどんランクが上がるシステムらしい。
「オイラが出来るクエストってありますか?」
「えぇ、向こうに各ランク毎の掲示板がありますので、できそうなモノを選んで下さいませ。」
なるほど、流石は最低ランク……ベタに薬草採取や荷物運びなどの下っ端作業が多いなぁ。
お?“迷宮探索”で荷物運びって面白そうだな。やってみるか。
「おねいさん、コレを受けたいのですが……」
「あら、初めて受けるにしてはハードルが高いわよ?」
「不相応ですか?」
「まぁ、大丈夫でしょう。でも、明日の早朝に出発よ?」
「解りました、早起きして来ますね。」
「受付た事を伝えておくわね。出遅れるとペナルティが課せられるから、気をつけてね。」
“ペナルティ”にちょっとした脅迫観念を抱きながら、宿屋へ戻って夕食後に部屋の中で身体強化魔法の練習を行ってから眠りについた。
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次の日の早朝、冒険者ギルドに再び着くと受付のお姉さんが裏手のドアまで案内してくれた。
「日程は出発後2日で現場到着、3日目の朝から半日程迷宮へ潜って、5日目の夕方に此処へ戻る計画よ。」
「了解!」
裏手のドアから出ると、何人かの集団がバタバタと馬車に荷物を詰め込んでいるのが目に入った。
「おう、坊主こっちだ!早速だが手伝ってくれ。」
「ガッテン承知の助!」
オイラは自身に身体強化の魔法を掛けて、荷物運びを手伝う。
ヒョイヒョイと荷物を手際良く馬車に詰め込んでいると、怒られた。
「コラ坊主!力技で詰め込むんじゃない、配置を考えて置くんだ。馬車が傾くじゃねぇか。」
「あ、なるほど……理解しました!」
何となく詰めていたが、バランスを考え無いと馬車が走行中にひっくり返る可能性があるのか……なるほどなるほど。
重さとバランス、そして荷物の中身を考えて詰め込んで行く。もちろん使用頻度の低いものは奥へ、高いものは手前に。
「なんだ、できるじゃねぇか。」
「ありがとうございまっす!」
パズルを解くような感覚で、どんどん楽しくなって詰め込んでいった。
「坊主、ご苦労、もう終わりだ!しかも馬車がヒトツ余ったぞ……凄いじゃねぇか。」
「あ……もしかして馬車ひとつ分の仕事が無くなっったのですか?」
「問題無い。勿体無いから、もう少し欲張ってみるか。この一台分のアガリは弾むぞ、坊主の手柄だからな!」
「ありがとうございまっす!」
あ、何か解らないうちに臨時収入を約束されてしまった。ラッキー!
少し待っていると、新たな荷物がやってきて空いた馬車に詰め込まれる。
「少々遅れたが、出発するぞ~!」
「「「おおー!」」」
何だか物々しい雰囲気で街を出た。馬車8台に荷物と人員をそれぞれ乗せ、ガラガラと進んでいく。結構速いな……
荷物持ちは歩くのかと思ったら、「軍隊じゃねえよ!」と笑われた。笑いのツボが解らない……
「そろそろ着くぞ、準備しておけよ!」
中継する街に到着するようだ、ココで運んできた荷物を3割ほど下ろし、新たな物資を詰め込む。
日が沈む頃には作業が終わり、宿泊施設へ移動する。馬車用の車庫があって、その横で雑魚寝できる団体用の広間がある。
「皆!ご苦労だった。では、朝の出発まで自由時間だ。解散!」
うっわ、またアバウトな……出発の時間まで自由時間って、どこの格安ツアーだよ?
結局、時間の潰し方を思い付かなかったので、魔法の訓練をすることにした。
「すいません、ココに演習場はありますか?」
「あぁ、向こうだ。川岸にある壁の向こう側にあるぞ。流れ弾には注意しろよ?」
流れ弾ってナンデスカー?
ふごう!ばしゃーん。ばらばらばら。
現場に着いて理解した。なるほどなー、仕切りが無いのかぁ。そりゃあ流れ弾が飛んでくるわ。
皆が思い思いに川に向かって大きな魔法を放っている。結構いるのね魔法使い。
「デモンストレーションだ。ああやってアピールしているだけだ。ツマらん。」
「何の為のアピールでしょうか?」
「まぁ、魔法使って己の強さを見せつけたいだけだ。」
「そっかぁ、単に魔法を撃つだけで偉いのですか?」
「そりゃそうだろ?お前も憧れて魔術師を目指してるんだろ?」
「えぇ、私にはこれしか取り柄が無かったもので……」
「はぁ?魔術を行使する才能を“これしか”って言うのか?お前、面白いヤツだな。」
「他にやれることが無かったもので……」
「何かやってみろよ?」
リクエストされたので束で燃えている松明のひとつを掴んで適当に投げた。松明は魔法で質量を無効化しているので、延々と飛んでいく。
「うっわ、お前……危ないヤツだな。」
「危ないですか?アレに破壊力とか全く無いんですけど?」
「向こうの森が燃えたら、どーすんだ?」
「あ……」




