35) 捕まるワケにはいかないのね。
結論、現在は完全に追跡されています。
村から出発して、数時間後の状況です。
商都へ向かって森伝いに進んでいくと、仮面レーダーで確認しながら避けたはずの反応が一定の距離を保ってピッタリと追跡されています。
このままだと商都からドンドン離れる方角です、ハイ。
「拙いよなぁ……水面下では鯨、水面上にはカモメって感じの追い詰められた鰯のようだ……」
そう、森の上空に飛び出して地上の反応を振り切ろうとしたら、大きい変な鳥にロックオンされてしまった。以降は上空をずっと旋回しているし……
地上ではこちらからは見えにくい位置で、狩人っぽい追跡者2人がいる。
「鳥には悪いが、対応するならソッチだろうなぁ。」
オイラは森の上空へ勢いよく飛び出すことを選んだ。
くけぇぇぇっ!
飛び上がったオイラをガッチリ掴んだ怪鳥は、巣があると思われる方向へと飛んでいく。
こういう鳥は、捕まえた得物を空中で捌く器用な事はしない。空を飛ぶか地上で捌く、の2択だからだ。
抵抗する元気な獲物は爪でダメージを蓄積させるか、引っ掛けて空中から落としたダメージで弱らせて連れ去る。
オイラは抵抗していないので、攻撃されずにあっさり運ばれている。
「すまんな、利用して。」
ある程度、狩人から離れたのを見計らって魔法を撃ってもらう。
「鳥の頭部に水球を発生させて。」
ぴょこ☆
鳥の頭に大量の水が発生する。普通なら流れ落ちるだけなのだが、普通なら……な。
ぎょぼっ!?
発生した水は鳥の頭にスッポリ纏わり付いている。発生した水に無重力の魔法を添えたからだ。
失速すると水は惰性で流れ落ちるが、流出以上の量を追加で発生して貰っているので、怪鳥は軽く溺れそうになっている。
耐え切れず水から逃げる事にした鳥は、オイラを手放した。うん、殺してない、濡らしただけだ、大丈夫。
空中で手放されたオイラは、重力操作の魔法を使って難無く森の中に着地する。仮面レーダーには狩人と思われる反応は無し……と。
羽織を脱ぎ、街道沿いを歩くことにした。もう、追われるのは面倒だ。
森からガサガサと出て行くと、ギョッとした通行人が居たが盗賊じゃないと分かると安心したようだ。
それと……仮面を付けていることは珍しく無いようだ。というか何人か付けているのを確認した。
「あー、歩くの面倒だぁ……遅いよぉ。」
数時間歩き続けての感想だ。森の中なら、木々の間を縫うように跳躍して行ける。
しかし、街道でやると確実に目立つ……ダメだよなぁ。
「やっぱり……森がイイ……森が足りねぇ。」
禁断症状が出たような気になって、フラフラと森へと入ってしまう。
そして、身体強化と重力操作の魔法で木々の枝から枝へ飛び移って移動する。何だか忍者になった気分だ、忍者……イイね!
「おっとっと……着いたな。」
森が途切れ、大きな川が流れている。ちょっと先に大きな石橋が掛かっている。向こう側は砦状の市街地があるはずだ。
オイラが召喚された場所だ、ナーツ市だったかな。恐らく高台の要塞が、小柄ちゃん達が住んでいる場所だと思う。
「ノコノコ出頭したら、また掴まって隷属にされちゃうんだろうなぁ……」
小柄ちゃんには会いたいが、掴まってしまうのも戴けない。どうしたもんかねぇ。
「お前、エルフか?」
「とんでもない、オイラの髪と耳を見てくださいよ?」
また、門番に有らぬ疑いを掛けられてしまった。仮面を外した見た目と、認識票との年齢のギャップがあると大変だよなぁ。
「そうか、ここには何の用事で来たんだ?」
「口減らしで村を追い出されましてね、少々魔力が有るもんだから冒険者になって見返してやりたいんですよ?」
「なるほど、若いのに大変だな。まぁ、シッカリ頑張れや。」
「はい!ありがとうございます!ところで、安くて良い宿屋ってありますか?」
「あぁ、それなら……」
門番に宿屋の位置と名前を教えてもらい、市街地に入ることができた。
宿屋は直ぐに見つかり、さっと手配をする。日が沈んでから次の日の昼までの、一泊夕食付きで銀貨一枚だった。
宿屋のカウンターで冒険者ギルドの場所を聞き、今度はそこへ向かう。村人から冒険者へのクラスアップをするんだ。
「いらっしゃいませ、どの様な御用件でしょうか?」
「えっと、冒険者としての、登録をお願いします。」
「初期登録なら、保証料込みで金貨一枚となりますが、宜しいでしょうか?」
「あ、はい。用意しています。それとコレを……」
オイラは“蒼光”に渡されたウロコを一緒に提出した。すると、受付嬢の顔からスマイルが消え奥の部屋へ案内された。
部屋で数分待っていると、身なりの良い爺さんが入ってきた。緑の魔法使いだ……ベタすぎる。
「お主、龍族か?」
「とんでもない、普通の村人ですよ?」
「これは“蒼光”の鱗じゃな?どこでコレを?」
「冒険者ギルドで渡せとしか伺っておりませんでしたので、それ以上のことは解りません。」
「仮面を外して、認識票を見せて呉れぬか?」
「解りました……どうぞ。」
「お主……エルフか?」
「人間ですってば……」
どんだけエルフにこだわりがあるんだ、この国の人達は……
「それでは、これに触れて“ステータスオープン”と唱えてくれ。」
「ステータスオープン」
ぱしシん。
「なんじゃこりゃ……なるほどな。龍族に取り込まれるだけの条件が揃っておるわ。」
「条件……ですか?」
「お主、龍に呪われた上に悠古の森で食い殺されたと噂されている……36番目の召喚者じゃろ?」
オイラ……食い殺された事になってるんだ?やっぱり掴まって連行とかされるのかな?
思いっきり飛び出して逃げたくなったけど、ここは密室で……無理だよなぁ。どうしましょ?




