34) 初めての村なのね。
結論、現在は完全に迷っています。
意気揚々と商都へ向かい歩き出して、数時間後の状況です。
道なりにズンズン南下していると、仮面レーダーに人らしき反応があったので避けて森の中に入りました。
さらに森の中でも反応が見られたので、避けながら奥へと進んだのが敗因になったようです、ハイ。
「拙いよなぁ、仮面の地図に現在地とか出ないのかよ……」
迷った事を棚に上げて、オイラは独り言スキルと愚痴スキルをゴリゴリ向上させている。
空を見上げても鬱蒼とした森なので、太陽の位置も視認出来なかった。ただ、暗くなる方向が何となく解っただけ。
(っと、空だよ……森から飛び出して山の位置を確認すればイイじゃん。オイラってお利口さんだ!)
と思った時には既に日は沈んでおり、真っ暗だった。仮面の暗視機能も遠くまではフォロー出来ていなかった。
「仕方ない、今日は野宿だな……」
木と木の間にハンモックを地上10メートルくらいの高さに括りつけ、その周囲をグルッと☆導きの書☆の土魔法でシェルター状に囲んでもらう。
その土壁を加重の魔法で押し固め、崩れないようにして中に入った。あとは結界の魔法を作動させて出来上がり。さぁ寝るぞ!
そして、次の日の朝。
「おはようさん。」
ぴょこ☆
話相手が居ない訳ではない、聞いてくれるヤツがいる。例え相手が書物の姿をしていようとも……“ぼっち”じゃない。
保存食を食べ、片付け後に寝床を取り壊して出発の準備は完了だ。あとは森から上空へ飛び出して、太陽の位置と現在地の確認だ。
斥力の魔法を自分に掛け、身体強化の魔法を使って勢いよく上空へ駆け上がる。
「よし、見えた!大小の山の方向を確認したっ!」
あとは、重力操作の魔法を調整してゆっくりと着地する。
仮面の地図を確認しながら現在地を割り出すと、商都まであと一日半程度の道のりだと解った。
商都に向かう途中で数人の反応を避けるように進んでいくと、村落を発見した。やっと普通の御飯が食べられそうだな。
「すいません、一晩泊めていただける宿屋はありますか?」
「仮面を外して、認識票を見せて頂きたい。」
明らかに警戒色バリバリの門番に、オイラは仮面を外し両手をあげて近づく。もちろん手には認識票をぶら下げて。
「もしかして、エルフか?」
「とんでもない、只の旅行者ですよ?耳と髪の色が普通でしょ?」
恐らく、認識票に表示してある年齢と、見た目のギャップに疑惑を持たれたようだ。
「そうか、その先の木造で大きな村長の家が宿になっている。ホラ、見えるだろ?あそこだ。」
「ありがとう、助かりました。」
嫌味の無い様に門番へ銅貨数枚を手渡し、村の中へと入って行く。
「夕飯、朝飯付きで、銀貨1枚じゃ。」
村長らしき人物が宿代を提示してきた、聞いていた相場より高いッス。しかし、値切れば有無を言わさず追い出されそうなので素直に払う。
食堂には先客である村人が数人座っており、物珍しそうにオイラを遠慮なくジロジロと見ている。恥ずかしいなぁ、もう……
「なぁ、どこから来なさった?暇なので何か珍しい話でも聞かせてくれぬか?」
婆ちゃんが話しかけてきた。触りのない人物で探りを入れてきたってワケですな?
「あぁ、悠古の森から一昨日出てきた。珍しい話は無いなぁ。」
“悠古の森”と言った瞬間にその場が凍りついた様に思えた……しまった、禁止ワードか何か言ってしまったか!?
「あぁ、悠古の森と言ってもアノ付近の村ですよ?森の中だったら、出てこれる訳が無いですよね?騒がせて申し訳ないです。」
慌てて取り繕ったセリフに、とりあえず安心したようだ。元通りまでとは言わないが、落ち着いた雰囲気に戻った。
「そうかえ、そうかえ。あの付近は魔物も多く冒険者だか盗賊が多かったじゃろ?」
「えぇ、見えるモノは全て避けて来ましたからね、苦労しましたよ。」
「ところで、お主がきた方角に妙な魔物が木々の上を飛び回っている噂があるんじゃが、見なかったかえ?」
「あ~見ましたよ……でも、オイラは魔物の獲物では無かったみたいですねぇ。見つかったと思った時は焦りましたけど、見逃して貰えたようです。」
その魔物とは、多分オイラの事だろうな……見えたモノを避けるのに迂回を立体的に、つまり頭上を通ったからね。うん、次は気を付けよう。
「その格好じゃと、魔術師かえ?」
「えぇ、魔道士を目指して村から出てきました。少しばかり魔力が多い様なので……」
「そうかえ、この村にも何人かそう言って出て行った馬鹿者が居るんじゃが、戻って来やしない。」
「すいません、数年に一度は自分の村に戻るように頑張ります。」
「ほっほ、そうじゃろそうじゃろ。心配は掛けるもんじゃ無いぞえ?」
「ありがとうございます、置いてきた者の気持ちを汲み取ることができました。」
置いてきた者か……小柄ちゃんやヒスイの事なのかな。ちょっとシンミリしてきた。
「すまんの、湿った話になったようじゃ。ホレ、シッカリ食べて頑張って行きな。」
「はい、いただきます。」
あぁ、草じゃない、野菜だ!スープも肉も美味い。でもちょっと……草の味が無くて物足りないって気がするぞ?
夕食の後は泊まる部屋に入り、浄化の魔法陣で体を流し、結界を張って眠りについた。村の中でも安心は出来ないからね。
何事も無く、朝が来て朝食を摂る。昨晩の婆ちゃんが食事の世話をしてくれた。どうやら出て行った孫を思い出したという事らしい。
「食事、美味しかったです。ありがとう。」
「いやいや、お代は貰っておるからの。足りなきゃあっちの連中の分を誤魔化してくるんじゃが、大丈夫かえ?」
「ええ、お腹いっぱいで動けなくなるのは問題ですからね。ごちそうさまでした。」
「そうかえ、そうかえ。若いのにしっかりしておるようじゃ、感心感心。」
“世話がしたい”オーラが出ている婆ちゃんに商都までのルートを訪ねると、親切丁寧に教えてくれた。
「さって、変なイベントも発生しなかったし、頑張って行きますかぇ。」
あ、口調が伝染ってしもた……
門番に軽く挨拶をして、村を出て行く。
村民と無駄に仲良くなると、強襲イベントとか発生するかと思ったけど、そんなベタなことは無かったな……良かったよかった。
村からある程度離れたトコロで、仮面を付けてフードを被り、羽織を纏って商都へと森の中を進んで行く。




