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勇者36番  作者: ハムリンゴ
第二幕:急なスカウトに、笑うしかない件について。
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33) 旅立ちの時なのね。

ばたん、ぱたん。この森の生活で、最後の朝の音。


「勇者様、朝ですよ。起きてくださいませ」

「あ、あぁ……おはようさん」


 あれ?白髪君はドコだ?帰っちゃったか?


「あ、五の白龍は帰ってしまいましたよ。やっと開放されたとか言ってました」

「そうか、それは良かったなぁ」


 渋々共同生活を強いられたのかデレたのかは解らないが、白髪君も今日で元の生活に戻れるワケだ、うん。

 普段通りに朝食を済ませて、ふと思う。明日からこんな食生活は無いんだよな……下手すりゃもっと悪いかも知れない。


「なんだか、寂しくなっちゃいますね」

「あぁ、短い間だったけど……ありがとな」


「あ……暗い雰囲気になりますね。これではダメです、折角の門出なのですから明るく行きましょう」

「そうだな、うん、そうだ」


 小屋を出て、ユウコ龍の家に向かう。清々しい朝だというのに、緊張で息苦しい。


「よく来たのぉ、どうじゃ?呪いがスッカリ解けた気分は?」

「えぇ、お陰さまで……呪われる以前の様な軽い気分になりました」


「あいたたたた、そう来たか。合いも変わらず手厳しいのぉ」


 というワケで、出立の準備タイムとなりました。


「まぁ、迷惑料と考えてもらって構わんよ。旅の準備はワシらの方で整えた」

「なんか……全部持って歩ける気がしませんよ?」


「それも対策済みじゃ、ホレ。イイ物がある“精霊付きの背負袋”じゃ、素晴らしいじゃろ?」

「あ、でも……大事なものは入れるとマズイんじゃありませんでしたっけ?」


「あぁ、大丈夫じゃ。それも手は打ってある」

「もしかして……その精霊へ荷物に手を出したらコロスとか、物騒な契約を結んでません?」


「お、良く解ったの?流石は腹黒勇者殿じゃわい」

「お褒め戴き、至極恐悦でございまする」


「くっ……褒めたつもりは無いんじゃがのぉ」


 貰ったのは、精霊付き背負袋とキャンプセット、路銀、移動用の羽織、認識票、そして変な金属の塊だった。


「何でしょうか……この金属塊はオリハ・ルコンですか?」

「おお、解るか?しかし、普通のモノとは違うぞ?これはな……」

「長の話は長くなるので、某が簡潔に説明するでござる」


「宜しくお願いします」

「ぐぅ……長たるワシを何だと……」


 軽く落ち込んでいるユウコ龍を放置して、青い龍の人が金属塊について説明をしてくれた。

 オリハ・ルコンという金属にオイラの血を混ぜて精製し、龍の秘術を加えた魔道具だという事。

 オイラの血は、前に腕を喰い千切られた際に採取したと……いつの間に何やってんだか、怖いよ。

 んで、その効果は……


「精神感応金属、ですか?」

「うむ、勇者殿の思う様な形になるでござる。慣れるまでが大変でござるがな」


 金属塊を手にとってみる……ヒンヤリとして気持ちがいい。

 ソレに魔力を通す感じで水のイメージを持つと、ベチャッと床に零れた。水銀の様な感じだ。

 続けて、氷をイメージしてみると、刺々しい氷柱形状なった。次は手元に戻って来るようにイメージを……


ざくっ。


「あだだだだだ……」

「勇者様、何をやっているんですか……」


 手元に戻るイメージを流すと、金属塊はちゃんと戻ってきた。手の中にシッカリと……刺の先端も一緒に掌に収まっている。


「形だけ変わるんじゃ無いのね?意識的に動かせるのねっ!?」

「流石というか、何というかの……予想を超えとるわ、違う方向でな」


 直ぐにヒスイちゃんが手の傷を魔法で治癒してくれている、ありがたい事です。


「それでの、こっちの羽織なんじゃがの、この……あ」


 またも、ユウコ龍から説明の権利を奪い取った青い龍の人が話し出す。

 この羽織は、ローブの上からでも装着出来るモノで、ローブに密着するような細工がしてあるそうだ。

 動きを阻害しないように柔らかく、色も金属光沢のある黒に近い灰色。

 説明では、隠密用に開発された布だそうで、纏うと視認され辛くなるとのコト。

 裏側は明るく艶のない銀色で、砂漠などで使うのだそうだ。リバーシブルとは格好いいな!


「勇者殿の行動は、目立たない、回避する、を重点的にしとるようでの。なかなか面白そうじゃて」

「揉め事とか、痛いのはイヤですからね」


「あとは、認識票じゃ」


 普通のドッグタグだった。首からぶら下げるやつ……ちゃんと2枚付いてるや。

 死んだ時に回収しての報告用と、そのまま残して遺体の確認用の合わせて2枚……

 ちなみに「認識票」にも、“血入り”で微量のオリハ・ルコンが埋め込まれているという。“龍の秘術”は入ってないそうだ。

 そのオリハ・ルコンが身元確認用の魔道具となり、他人に奪われても使えないそうだ。


「最後は路銀と保存食じゃな、通常は其の辺の獲物でも狩って食べるんじゃぞ?」


 保存食は30日分ほど突っ込んであるらしい。それだけあれば大丈夫な気がするんだが、持てる限り詰め込んだ。

 あとは、サバイバルスキルは授業で受けたし、結界魔法もキャンプセットに入っている。路銀は金貨3枚分。


「それでは、そろそろじゃの」

「そうですね、お暇致します。ありがとうございました」


 青い龍の人が“冒険者ギルドで渡せ”と自ら抜いた鱗を手渡され、更に通り名を教えてくれた。“蒼光”と言うらしい、名前から雷系統だと思う。


「それでは、行ってきます」

「ほほう、戻ってくる気かえ?いつでも遊びにおいで。手厚く追い返してやるわ」



~~~~~~~~



 そして、ヒスイちゃんに乗せられて森の端まで到着っと。


「ここまで、です……頑張って下さいね」

「あぁ、ヒスイも頑張って出ておいで」


「あら……?“ちゃん”付けじゃ無くなりました?」

「そりゃそうだ、ヒスイには本当に世話になったし、尊敬もしている。それと最後くらい格好付けないとな?」


「ふえぇ……」


 ありゃ……泣いちゃったよ?なぜ泣く?泣かせてしまったのか?どうしよう……どうすれば?

 解らないながらも、考えて考えた挙句、そっとハグしてみた。一瞬驚かれたが、そのまま段々と落ち着きを取り戻してきた。


「絶対に、森から出て探しに行きますから、死なないで下さいね?」

「あぁ、またその時は背中に乗せてくれよな?」


 ずっと見送られるのは嫌なので、ヒスイを追い返した後にオイラは商都へと歩き出した。

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