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勇者36番  作者: ハムリンゴ
第二幕:急なスカウトに、笑うしかない件について。
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32) 再び……なのね。

「まったく……勇者というヤツ等は侮れぬわ」

「すいません、以後気を付けます……」


「見たところ、全力じゃ無かろうて?」

「はい、全力でやると魔道具が壊れますので……」


「信じられぬわ……しかし、射線上に誰も居なくて良かったわい」


 プリプリと怒るユウコ龍のあとに続いて歩く。


「明日じゃ、出発は明日の昼に変更じゃ。良いか?」

「あ、はい。解りました……」


 てっきり、これから準備して退去かと思ってたのに拍子抜けした。

 まぁ、時間が出来たから挨拶巡りでもするか。


「オウ!今日は遅いじゃねぇか!?寝坊でもしたか!?」

「すいません、明日に発つ事になりまして……挨拶に来ました」


「ホウ!外でも頑張れよ!」

「えぇ、色々と御世話になりました。」


 ペコリと頭を下げると、師匠はオイラに2本のインゴットを手渡してきた。


「オウ!持っていけ、餞別だ!」

「あ、ありがとうございます!」


「オウ!大事に使えよ!?オリハ・ルコンだからな!」

「うお!?良いんですか!?こんなにも!?」」


「オウ、これまで魔法陣について積極的に取り組んで来た奴は、お前が初めてだからな。特別だ!」

「重ね重ね、ありがとうございました!」


 工房から出て、次は演習場だ。会話は少なかったが治療小屋の龍人達にも別れの挨拶をした。

 何となく、避けられている様な気がしていたが、別れるとなると寂しかったらしい。

 解毒や回復薬などをセットで頂いた。御世話になりっぱなしだったのに申し訳無い。ありがとう!


「えっと、結構な期間居たのに挨拶巡りが2件とは……我ながら寂しい性格ですなぁ」


 独り言スキルを上げながら、小屋まで戻るとヒスイちゃんが片付けをしていた。そうか……御役御免になるんだっけな。


「今までありがとうな、何か御礼がしたいんだけど……こういうのに慣れてなくて、どうすればいいんだろ?」

「わ、私に聞かれても……でも、十分すぎる程のモノを勇者様には戴きましたから構いませんよ?」


「え?オイラは何もあげてないよ?」

「いいえ、戴きました。人から称される名を、“翡翠”という名前を。私はこれからヒスイと名乗ります」


「そ、そうか……そうだと知っていたら、もっと可愛い名前を考えたんだけど……」

「本当に気に入りました。色が変わる曖昧な存在の私に、自信と名前を持たせてくれた勇者様に感謝します」


 あ、やばい……ヒスイちゃんが泣きそうだ、どうしよう?ヤバイ。あ、そうだ!


「あ、ヒスイちゃん?夕食までまだ時間があるからさ……前に連れて行ってくれた場所に行かない?」

「ふえ?良いんですか?明日の昼までしか無い大事な時間ですよ?」


「だって、挨拶巡りは2件しか無かったし、挨拶を済ませたのにノコノコ戻っても恥ずかしいし……」

「解りました、それなら夕食もソコで摂ってしまいましょう。待ってて下さいませ」


 泣きそうな雰囲気だったヒスイちゃんは、嬉しそうに隣の部屋に入って夕方ピクニックの準備を始めだした。

 オイラはさっき貰った荷物を纏めて……って?あれ?インゴット1本足りない?ドコいった??


ぷっ。

ごとん。


 荷物と一緒に置いていた☆導きの書☆が、金属色の塊を吐き出した。


「待てい……“喰った”な?折角戴いた大事なインゴットを食べたのか?」

ぴょこぴょこ☆


「んで、吐き出した金属塊は何だ?」

すっぴょこ☆


「あ……これはミスリル、真銀か?」

ぴょこぴょこ☆


 体内のミスリルを、オリハ・ルコンに入れ替えたのか?漫画か?X計画か?

 いや、しかし、確かに……ミスリルより魔力伝導率の高いとされるオリハ・ルコンの方が良さそうだな。


「なるほど、な……もう1本必要か?」

ぷいぷいっ☆


「そうか、必要なら伝えてくれよ?」

ぴょこ☆


 まぁ、いつ使うか解らないモノより、こういうモノは必要とする時に使うべきだろうな。

 色々と片付けが終わらせると後ろからパタパタと軽い足音を立てて、ヒスイちゃんが大きな包を抱えて出てきた。


「勇者様、準備が整いました。さぁ、行きましょう!」

「あ、あぁ。」


 10分後には、前に来た湖畔に着地して腰を下ろしていた。前回と違って夕日を眺めながらの食事だった。

 いつもと変わらないパンと草と肉と草の食事だが、やはり外で食べると美味しく感じてしまう。

 食べ終わって片付けが終わる頃には、日は沈み星が瞬きだしていた。


「凄いな……召喚前の世界と星の位置が違っても、綺麗なのは変わらないな」

「そうなんですか?星の位置が違うとなると、占星術師が困りますねぇ」


 なるほど、オイラの星座の知識が全然使えないぞ。話題が無くて困るじゃねぇか。


「出発されたら、どこを目指すのですか?」

「えっと、まだ決めてないんだ。お薦めの場所とかある?」


「私……まだこの森を出た事が無いんですけど、出たら商都には行ってみたいと思ってます」

「よし、オイラの向かう所は商都にしよう」


「えっ!?そんなに簡単に決めて良いんですか?」

「別に良いよ。決めた、商都だ」


「だったら……私が人の地に降りたら、会いに行きますので、またこうやってデートしましょうね?」

「あ、あぁ……その時は宜しくな」


 あれ?あれ?オイラの方が年上のはずなのに……リードされっぱなしな気がしてきた。

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