31) 呪いが解かれる日なのね。
「では、準備も整ったところで、始めるとするかのぉ」
オイラは今、ユウコ龍に呼び出されて解呪の魔法を受けている。
やっと、呪いによる能力低下から開放される時が来たようだ。
「なんか、生贄になった気分ですよ……」
生贄か……小柄ちゃんとの日々を思い耽る。
身体に掛かっている魔法を全て解かれ、立てないオイラを青い龍の人が魔法陣の中央へと運ぶ。
心配そうに見つめるヒスイちゃんと、何だか面白く無さそうな白髪君に見守られて横たわる。
「ほい、完了じゃ」
「え?何?もう終わりですか!?」
「そうじゃ、もう自力で立てるじゃろ?」
何もしていない様に見えたが、本当に呪いは解けていた……普通に立ち上がることができた。
「おお?立てたよ!?凄いっす!!」
「あ、いや……スマンかった。色々迷惑を掛けたようじゃ、スマン」
「オイラこそ色々勉強させて戴きました。有難うございます」
「勇者様、良かったですね……お疲れ様でした」
「あぁ、これで居なくなると思うと少々、少々だが寂しくなるな」
これで普通に?属性魔法が使えるよ……無職から魔道士になって宮廷魔道士へのサクセスストーリーを進むぞ。
「と、いう訳で……ステータスオープン!」
ぱしシん。
ユウコ龍が確認の為にステータスプレートを手渡してきた。仮面の効果で、視界の隅にステータスが表記されるのは内緒にしているが。
「えっと……どういう事か解りません。“呪”は外れているけど、属性魔法(行使)が“皆無”ってなっていますよ?」
「そうじゃのぉ、マイナス効果となる呪いは完全に除去できたんじゃが?」
自己能力の数字の部分は後で検証するとして、属性魔法(行使)の表記がオカシイ、前回は減少だったのに今の皆無ってナニ?
ユウコ龍は呪いに減少等の効果は無いと言うが、解除されていないので呪いとは“別モノ”と言うことか?
「えっと……勇者様のスキルが成長する方向が……マイナス方面に向かったのではないでしょうか?」
「「あ」」
ヒスイちゃんの考察に、オイラとユウコ龍は直ぐに納得できた。たぶん、それが正解だと思う。呪いの効果では無さそうだ。
「結局、オイラには属性魔法が使えないのか……」
「勇者様……属性魔法が使えなくても、無属性と支援魔法が王級クラスになってますよ?」
「何それ?王級クラスって?凄いの?」
「あ、そう言えば授業内容にありませんでしたね。魔法を使いこなせる階級です、7段階中の上から2番目クラスという事です」
ヒスイちゃん曰く、魔法で上から3番目クラスの魔法がひとつでもあれば、宮廷魔道士に選抜されるそうだ。
なので、前に断ったはずの宮廷魔道士になる事を再考して下さいと、念を押されてしまった。
「しかし、勇者殿は属性魔法が使えないのに、五の白に土魔法で対抗しておったのぉ?」
「あ、それは魔導書のお陰です。魔導書を通すと普通に魔法が使えるんですよ」
「また、それは不可解なコトじゃ。魔法陣で変換される魔力にも使用者の特性が乗るんじゃが……使えるとな?」
「はい、羊皮紙の魔法陣で発動させると全くダメですが、この魔導書なら上手に使えるようです」
「ふむ、その魔導書を見せて貰えぬかの?」
オイラから手渡された☆導きの書☆を持ったユウコ龍は、中を開こうとして……やめた。そして、そのままオイラへ返してくれた。
「なるほど、かなりレアな魔導書じゃのぉ。無くさないようにするんじゃぞ?」
「はい、気をつけます」
「というわけで、急で申し訳ないが……解呪後は森から出て貰う約束じゃったからの……」
「えぇ、承知しております。森は人間に対して友好的では無い事も解っています」
「スマンのぉ。あまり見せたくは無いんじゃが、まだ連中は人間に対する不信感が残っておっての……」
「そうですか、いつかその不信感を払拭できる手伝いをさせて下さい。精一杯、頑張りますから」
「ほっほ、言うのぉ。そうじゃ、鍛錬の成果とやらを見せてくれぬか?」
「あ、はい。全力でやっても?」
「あぁ、五の白を単独で倒したニンゲンじゃからのぉ。少し興味があるのじゃ」
ヒスイちゃん達を置いて、ユウコ龍と2人で演習場に向かい、オイラはショーの準備を始める。
演習場は人払いをしている。全力で放った魔法により、勇者……人間に対する不安を煽らない為に。
オイラは金属板状に加工した魔法陣を並列に、しかも複数組み合わせた魔道具を取り出した。
まず、“弾”を斥力の魔法で射出する。魔法陣の並列処理5段により相乗効果が半端なく、シャレにならない程の加速が掛かる。
次に、“弾”に無重力の魔法で重力の影響を無くす。放物線を描くことなく直進させる事ができて、射線管理が簡単になる。
最後、“弾”へ加重の魔法で質量を上げて、着弾時の破壊力を上げる。コレも3段の魔法陣を並列処理させている。
重力関係の効果も視認できる範囲までと、かなり広がっている。
命中精度はまだ納得できるレベルでは無いが、オイラの無属性魔法修練の成果を御覧あれ。
「さて、結界は準備できたぞな。中央の発着岩に向かって放ってみせい」
オイラは魔道具で小石を拾い上げ、魔道具が壊れない程度の魔力を注入し、発動させた。
ほんっ。
投げた小石は一瞬で消え去る……まっすぐ飛んでいったと思う。
ごぱっ。
広場中央の片隅にある龍の発着岩に当たって小石は砕け散ったようだ。
ずぱん。
砕けた小石が跳弾でもしたか?
「勇者殿……お前さん……何をした?」
「ダメダメですね、小石程度じゃ破壊力がありませんでしたね」
「は?ちょっと、来るのじゃ!」
ユウコ龍にグイグイと手を引かれ、発着岩の前まで連れて行かれた。
「この穴、お前さんの飛ばした石が貫通した跡じゃ」
「はい?石はココで砕け散ったと思いましたが?」
「馬鹿者!この岩と……向こう側の、ワシの結界も貫いたわい。」
「ほえ?」
こちら側から見た発着岩にはポツンと穴が空いていたが、反対側はぶっちゃけていた。




