38) 初めての迷宮体験なのね。
中継点の街を出発。朝から夕方にかけて移動して、日が沈む頃には目的の迷宮街へと到着した。
「あー、ここ久しぶりだわ。」
「来られたことがあるんですか?」
「あぁ、追放令を出された事がある。」
「えっと……戻ってきて良いんですか?」
「あぁ、制限期間は切れているからな。大丈夫だ、たぶん。」
「何して追い出されたのかは、聞きませんよ?」
「あぁ、そうしてくれるか。面倒臭ぇわ。」
街に着き、荷物の積み下ろしをしていると、向こうの方でアイロさんがオイラを指差してゲラゲラ大笑いしていた。
「本当に荷物持ちだったのかよ?」
「僕は嘘を吐きませんよ?誤魔化しはしますが。」
「結局、吐くんじゃねぇか。」
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クエスト開始3日目の朝、オイラはついに迷宮の入口へと辿り着いた。これから半日の間、迷宮へ潜ることになる。
何故か、アイロさんと商隊長のフンバルト氏とオイラの3名で……
なぜこうなったかは、少し前に遡る。
「私は、商隊長を務めておりますフンバルトと申します。」
「お、無理言って済まない。ちょっとした事情があって割り込ませて戴く事になった。」
「いえいえ、格闘家のアイロ氏が参加してくれるとは心強い限りですよ。」
「いや、寄った商隊が有名なフンバルト商会だとは、思ってもみなかった。」
なんだか、堅苦しい挨拶のあと事件は起こった。
「それで、参加していただくパーティはどういたしましょうか?」
「あ?俺が?パーティに参加するのか?」
「えぇ、商会開催の探索には商人と荷物持ちが同伴するルールですので、参加して頂かないと……」
「無理、俺……知らんヤツと組むと碌なことにならん。ソロで行く。」
なんの為に参加したんだ、アイロさん?
「そう言われましても、ソロとなると商人と荷物持ちが足りませぬ。」
「だったら必要な荷物持ちは、俺が冒険者ギルドを通して斡旋する。それと監視商人はフンバルト氏にお願いできないか?」
「えっ!?」
まさかの逆指名でした。
「俺の荷物持ちは……そこのナナシノに任せる。」
「えっ!?」
まさかの御指名でした……
パーティを組む際に、編成用プレートを冒険者ギルドまで借りに行く話があったが、オイラがそっと出すとアイロさんとフンバルト氏が驚いていた。気にはしていない。
そして、パーティ編成後に……オイラはついに迷宮の入口へと辿り着き、現在に至る。
「どのへんまで潜れば良いんだ?」
「可能な限り、という契約です。」
こういう主催者がいる迷宮探索はよくあるイベントらしい。
迷宮内で得られた物資の取得権は主催者になるが、潜った階数により破格の報酬が出る。
得られた物資を着服しないように、各パーティには監視役として主催者側の商人が同行し、物資を荷物持ちが管理する。
「さって、入るか。」
「久しぶりですよ、迷宮に入るなんて。」
「僕は初めてです。」
ここの迷宮の構造はシンプルだ、入口から枝分かれした通路をドンドン進んでいくと、突き当りで大部屋にぶち当たるそうだ。
その大部屋には魔物が居るが、居ない時もある。大部屋の奥には下へ降りる階段か坂道がある。
階段や坂道を降りるまでの階層を、ひとつとカウントする。
通路で遭遇した魔物はアイロさんがサックリ殴り飛ばしていた。魔物より出てきた物資はフンバルト氏がメモを取り、オイラが鞄へ入れる。
「さって、大部屋だな。準備は良いか?」
「最初の階ですし、そんなに気合を入れなくても宜しいのでは?」
ずんどこ進んでいき、大きなイベントも発生しないまま、最初の突き当たり部屋に到着した。
「ナナシノ、入って魔物と戦ってみろ。」
「はい!?」
「アイロ殿、無茶を言ってはいけません。最初の階層と言えども初期ランクの冒険者が太刀打ちできるわけがありませんよ!?」
「大丈夫だ、俺が保証する。やってみろ、楽しいぞ?」
「イヤイヤイヤ……保証されても、何の準備もしていませんって。」
「なんだ?魔道書があれば充分じゃないのか?もしかして魔石が必要か?」
「そういうことじゃないけど……」
「では、問題無いよな?どーんと行ってこい。危ないと思ったら俺がやる。」
「はい……」
何だか有無を言わせて貰えない雰囲気の中、ドアを開ける。魔物が居ません様に……あ、居た。
アイロさんが楽しそうにオイラの背中を押しながら部屋の中に入る。後ろからフンバルト氏もついてきた。
きしゃあ!
「あの、変なのを倒せば良いのですか?」
「ぶはっ!知らんのか!?変なのって……ナナシノ、お前本当に面白いよなぁ?」
「えぇ、迷宮へ入る前に魔物等の知識を仕入れて来なかったのですか……」
部屋の奥から凄く威嚇している魔物を前に、ふざけた雰囲気が漂っている。
魔物の姿は大きなハサミを持つ体長2メートルほどのダンゴムシだ。
オイラは背負袋からミトン型のふざけた魔道具を装着して、掴んだ小石を投げた。
ぼいっ、ぷんっ。
ぴし、ごばっ!
ユウコ龍の前で失敗してから、何度も練習して命中率も上げた。魔道具の魔法陣を破壊しない程度に威力も最適化した。
でも……それでも、威力が少しだけ、チョットだけ、強かったようだ。前と同じで向こう側がぶっちゃけている。
「お前……何をした?」
あれ?オイラ……また何かやらかした?




