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勇者36番  作者: ハムリンゴ
第二幕:急なスカウトに、笑うしかない件について。
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28) 新生活、なのね。

ぱたん、ばたん。小気味よく窓を開ける音がする。


「おはようございます~」

「おはようさーん」

「む……?」


 少し昨日とは変わった雰囲気で、変わっていない朝食が用意されている。


「いただきまーす」

「いただきます」

「なんだ……その合言葉は?」


「これは、食べられる者達への感謝の気持ちなのですよ?」


 ヒスイちゃんがチョット得意そうに説明をする。それ、オイラの受け売りなんだけど……まぁ、オイラも受け売りなんだけどな。


「とって食われるヤツに感謝しろというのか?」

「えぇ、食べられてしまうモノの命を戴いていますからね。居なくなれば、私たちも生きていけませんから」


 まぁ、捕食する側の勝手な思い付きである事には変わらないんだが、長年染み付いた癖は抜けないものだ。


「ごちそうさまでした」

「ごちそうさま」

「ご、ごちそーうさ」


 朝御飯の次は未作成の魔法陣を書写するために工房へ向かう。


「おはようございまーっす!」

「オウ、今日も早いな!おっ?珍しいのが来たな!!」

「何故に俺が魔方陣なんかに関わらないといけないんだ……」


 オイラはそんな白髪君を無視して、書写を開始する。


「オウ!五の白よ、そこの坊主に負けたんだってな!?」

「ううっ!煩い!」


「ホホ!何故負けたか解らんか?お前が嫌ってる人間の使う魔法陣だぞ?」

「解ってるさ!次こそ発動させる前に止められればっ!!」


「ホウ!それなら、次も負けが確定しとるわ馬鹿者!」

「お、長と同じ事を言うなっ!俺はもっと鍛えて強くなるんだ!」


 痛いところを突かれて怒るのは、まだまだ子供だなぁ……と、聞き耳を立てなくても聞こえる会話に心の中でツッコミを入れる。

 あ、白髪君……怒ってどっか行っちゃったよ?一緒に練習するんじゃ無かったのか?


「オウ!五の白との決闘で、初っ端に地味な立ち回りを見せたらしいじゃないか?」

「えぇ、勝とうが負けようが嫌な思いをすると思いましてね。魔力切れを起こすまで逃げるつもりだったんですよ」


「ホウ!そりゃ長も怒るわな!がははは!!」


 話はそこで終わり、黙々と書き写す作業に没頭する。


 昼御飯のあとは演習場でひたすら魔法の練習だ。


ぼしゅ!べたん!

ぼしゅ!べたん!

ぼしゅ!べたん!

ぼしゅ!べたん!


「お、お前……なにやってんだ?」

「何って、魔法の練習だが?」


 白髪君がオイラの練習に難癖を付けにきた。

 ただ、オイラは☆導きの書☆の出す土壁に加重の魔法を重ね、地面を出っ張ってらせては倒す作業を延々と素早く行っている。

 魔法陣に魔力を吸わせるのではなく流し込む事で発動効率を上げて、連続的な土壁作成と崩壊を可能にした。


「チマチマと地味すぎる!練習するなら、もっと火力のある技だろ?」

「反復練習は必要だろ?それとイザという時に大技で対応出来るワケないんだから、さ?」


「戦闘開始と同時に高火力で圧倒すれば良いじゃないか」

「その火力が全く当たらなかったら、どうするんだ?」


「必中必殺の一撃を編み出せば良いんだよ!その為の練習じゃないか!」

「だったら、オイラは回避離脱の技を開発するよ。お互い得意分野で技を磨けばいいじゃないか」


 なんだか水掛け論になりそうなので、相手の意見に呑まれずに独自の方向で行こうと思う。

 ただ白髪君と意見が分かれたままだが、押し付け合うのも士気が下がるだろう。

 そうだ!白髪君の練習の手助けに、身体強化魔法でもお見舞いしてやる。“援護”の偉大さを思い知れ。


「通しま~す、えいっ!」


 オイラは魔法の目標を、火球の溜めに入っている白髪君に設定し発動させた。


ぐがぼんっ!ばたっ……


 あ……白髪君の火球が口の中で暴発した。

 あ、白髪君が白目剥いてる、口から白煙を上げて。

 あぁ、うん。そうだね、次からはチャンと告知してから掛けてあげよう、うん。


「大丈夫か……か?これ飲んだら立ち上がれるか?」


 流石に龍の姿のまま治療小屋まで連れて行けるワケもなく、手持ちの回復促進剤数本で応急処置を施す。


「う……何が起きた?急に俺の気の流れが活性化したんだが……」

「すまん、練習の足しになるかと身体強化の魔法を掛けたんだ」


「な?何故に!?人間の……お前の魔法が俺に掛かるんだ?」

「知らんがな、掛かったもんは仕方が無いだろ」


 そして、身体強化の魔法効果のある約1時間程度の間、白髪君は見違えるような動きで体術の訓練を行っていた。

 続けて掛けようかと言ったら断られた。今の気の流れを忘れないように、素で練習をするんだそうな。

 そういえば、自分以外に支援魔法を掛けるというのは初めてだった事に気付いた。次は☆導きの書☆に掛けてみよう。


ごばぁっ!

ずおんっ!


 結果。強化に慣れていないのか、☆導きの書☆の魔法が暴走気味に発動していました……まる。


ぴょこぴょこ☆

すっぴょこ☆


 あ、意外と楽しそうだ。

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