26) おはよう……なのね。
「おっはようございまーす!勇者様、朝ですよー!」
「うっは、むっちゃダルい……」
「あらあら、大丈夫ですか?今日はお休みになられますか?」
「いや、なんかこの感覚は知ってる……」
仮面を装着してオイラの魔力残量を確認してみると……
「やりやがったな、ちょっとは自重しろよなぁ?」
「どうされました?何か至らない事でもありましたでしょうか?」
「あ、いや……ヒスイちゃんじゃない。ヒスイちゃんには凄く御世話になってる、本当にありがとう。」
「え、いえ……とんでもないです。こちらこそ……」
やってくれたのは☆導きの書☆の方だ、魔力吸収の魔法を寝ているオイラで練習していたようだ。
「ちょっと気分転換に外の空気を吸ってくるね」
「あ、はい。すぐに朝食の準備を致しますので、お早めに戻ってきて下さいませ」
外に出たのは魔力吸収の腕輪を使用する効果範囲にヒスイちゃんを巻き込まないのと同時に、☆導きの書☆に文句を言うためだ。
「オイラが気を失うレベルまで吸ったろ?」
ぷ~い☆
「いや、誤魔化しても可愛くないから」
すすっ☆
「栞を隠しても、意味無いと思うぞ?」
ぴょこぴょこ☆
なんだか新しい表現方法を編み出した☆導きの書☆に軽く注意をして、魔力吸収後に小屋へと戻った。
朝食後は工房へ向かい、まだ書写が出来ていない魔法陣を描き、昼と夜の部は魔法の練習をしてみた。
夜の部は、訓練する人が居ないので☆導きの書☆も勝手に魔法を発動させている。オイラより才能があるようだ……
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「おはようございます、勇者様。起きて下さいませ~」
「あ、おはようさん。今日も元気だね」
「えぇ、ひとりじゃないって気分が良いですから」
あら、ヒスイちゃんって孤独だったのか?そういえば「混じり色」って呼ばれてたな……ハブられてた?
「よし、今日は練習は休みにするわ」
「あ、はい。それでは朝食後にお茶を淹れますね」
「あ、違う違う。今日はヒスイちゃんの案内でデートでも如何ですか?」
「デートって……なんでしょう?」
あぁ、恥ずかしいけど思い切って言ったのに……通じていなかった!
ボケた事を気付かれずに、その内容を説明するような屈辱的なオチになるとは!
「あ、いや……その。今日はヒスイちゃんの行きたい場所、好きな所にオイラを連れて行って欲しいんだけど?」
「あ、はい。解りました、考えてみますね。ちょっと待って下さい」
ありゃ、普段通りの反応だった……“デレる”かと思ったのに残念。オイラ如きじゃ動じないのか?
そうか、そういう対象じゃないのか。人と龍だもんな、ちょっと残念だ。まぁ、オイラも幼女趣味じゃないけどな……酸っぱい葡萄かよ。
と、強がってみたけどやっぱり残念。これで、ヒスイちゃんが同い年レベルだったら、かなりヘコんでたかも。
ヒスイちゃんは、10分程度で準備ができたようだ。
「では、勇者様。乗ってください」
凄いモノを見た。オイラの目の前に翡翠色の龍が居る。髪と一緒で見る角度でキラキラと色が変わる鱗だ。
見た目は東洋の龍で、どこに乗るのか解らないでいたら首の後ろに跨がされた。
「ちゃんと掴まって下さいませ」
「り、了解!」
ぶわっと浮き上がり、向きを変えて飛び立った。羽根も無いのに飛べるのは魔法の所為かと思ったが、仮面には反応が無かった。
数分で目的地に到着した。其処はいかにも絵に描いた“湖畔”って感じの場所だった。
「着きました、勇者様。こんな何も無い所で宜しいのでしょうか?」
「ヒスイちゃんが来たい場所なんだよね?」
「はい、落ち込んだ時によく来る場所です」
「あ、もしかして嫌な思いさせちゃったかな……?」
「いえ、ココに来ると嫌な事とかあっても少しだけ元気が取り戻せるんです」
「そっか……涼しくていい眺めだね。山と湖と森、確かに落ち着くよ。オイラも気に入ったよ」
「え、あ……き、気に入って頂けて良かったです」
落ち着いてるからといって、何もしないのもアレなので水場での定番である「水切り」をしてみた。
平たい石が跳ねるのを興味深く見るので、やり方を教える。
ヒスイちゃんは数回でコツを掴み、飽きもせず何度も何度も投げている。
「まぁ、落ち込んだら一緒にココに来よう。お互いに愚痴ってスッキリしようぜ」
「あ……は、はい。お願いします」
ヒスイちゃんに用意してもらった昼御飯を岩の上に広げ、一緒に食べた。
相変わらずパンと肉と草だったが、外で食べると味が違う気がしてならない。良いぞピクニック効果!
「さ、帰りましょう!勇者様」
「あ、おう!帰りも宜しく!」
昼飯を片付けたあと、何の話もないままに時間だけが過ぎていき、とうとう我慢できなくなったようだ。
オイラもあまりこういう雰囲気の対応が解っていないので、そろそろ帰ろうかと切り出しそうになっていたが……
「勇者様……私、誰かを乗せて飛ぶのは初めてです」
「そうなんだ?でも、全然怖くないよ?また乗せて欲しいくらいだよ。気持ちがいい」
「そ、そうですか……いつでも言って下さいませ」
少し遠回りをしてもらって、演習場へフワリと降り立った。
「お疲れ様でした、ありがとう」
「いえいえ、私も楽しかったです。あの場所は夜も綺麗なんですよ」
「また、人間の異端者と龍の異端者で揃って悪巧みか?」
また、高圧的な態度で話しかけてくるヤツが居た。白髪君だった……




