20) 到着したのね。
「もう一度云う。古き龍に呪われし勇者よ、出てきて呉れまいか?」
青っぽい龍が古臭い言葉遣いでオイラ達の集団に話しかけてくる。
間を空けて、何か気付いたのか青っぽい龍はモゴモゴと言うと淡い光に包まれた。
「驚かせて済まない。これで害意は無いことを知って頂きたいでござる」
青っぽい龍は人型に姿を変え、右手を胸に当ててお辞儀をしてきた。
圧倒的に不利な状況であり、要求を飲むしか無いと思ったのでガタイ君に確認をする。
ガタイ君は真っ直ぐオイラの目を見ながら一度頷き、護衛達を退かせた。
「小さき勇者よ、此度は我が一族の長の命により、お迎えに参りました。何卒、御同行願いたく」
いやん……監禁の後は拉致ですか、そうですかー。
自分の身に降りかかった出来事に、軽く自嘲しながら考えを巡らせる。
「他の人達に危害を加えないと約束してくれるなら、御申し出を承りたいと思う所存であります」
「勿論でござる」
思いついた訳の解らん丁寧語をオイラは駆使して、青い龍にガタイ君達の安全をお願いしてみた。
そして即答した青い龍の人は、自分の首の後ろに手を回しブチッと痛そうな音をさせて何か引き抜いた。
「これを身につけると良いでござる。我が一族であれば、それを見せると悪意の無い限り攻撃されまいて」
手渡された何かを見ると、青っぽい鱗だった。やり過ぎたのか、護衛の人数分より多いぞ?
ガタイ君にそのウロコを手渡し、オイラは反対側の手で握手を求めた。
「仕方ないわ、行ってくる。ヨロシク言っといて。また会いに行きます、ってね」
「あぁ、待っているように伝えておくよ。死ぬんじゃないぞ?必ず帰ってこいよ?」
ガタイ君とガッチリ握手を交わし、オイラは青っぽい龍の人に向かって歩く。
まだ、臨戦態勢中のガタイ君率いる護衛団を後に、オイラは何の抵抗も出来ずに拉致された……
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「怖えぇ……」
「大丈夫でござるよ」
オイラは今、15階建てのマンションくらいの高さを青い龍にガッチリ掴まれて飛んでいる。
あれだ、両足を固定されていない吊り下げタイプのジェットコースターがピッタリの表現だと思う。レールが無いけど……
「そろそろ到着するでござる」
広大な森に霧が掛かった領域があり、そこへ向かって降下を始める。
中に突っ込むと、霧の濃度が高いのか結構な圧力を感じて息を止めてしまった。
やがて霧が晴れると、これもまた森の視覚的な圧力で息を飲んでしまう。
広場に舞い降りた青い龍はオイラを気遣うように、そっと降ろしてくれた。
「到着早々申し訳無いでござるが、こちらへ」
人型になった青い龍は広場の外へオイラを導いていく。
「凄いな……」
前の石造りの砦とは対照的に、目の前で乱立するツリーハウスに感動を覚えた。
大きな木の側面から“生えた”枝状の階段を上り、一際大きなハウスに辿り着く。
大きな両開きの扉を二つほど潜り広間に着くと、これまた広い大きいテーブルがある。
少しサイズの大きな椅子を勧められて、オイラは座っている。
「済まない、お待たせした」
後ろのドアが開き、コツコツと足音を立てて誰かが入ってきた。
オイラの両側に立っていた護衛らしき人が姿勢をビッと正して敬礼を行うので、慌ててオイラも椅子から降りてしまった。
「イヤイヤ、それは申し訳ない。楽にしてくだされ、無礼なのはワシの方じゃからな」
一人称“ワシ”の人を見ると、何故か……黒髪の少女だった。っていうか幼女だ。
黒髪の幼女の後ろには、さっきの青い龍の人が付いている。
「重々申し訳ない事をした、すまん!」
幼女は深々と90度腰を曲げる最敬礼で、オイラに謝ってきた。サッパリ要領が掴めない、何を謝ってるのか解らん。
唖然とするオイラを見て、青い龍の人が幼女に何かを囁いている。
「あ、そうじゃった!スマン!!順を追って説明しないとな」
「順を追って?」
「ワシは、この領域の族長で、悠古の龍と呼ばれておる。真名は秘密じゃ、呪われるからの……それから……」
……長かった……夏休み前の校長先生の訓示より長かった……まだ小さいのに、生い先不安になるレベルの話術でした。
要約すると、ユウコ龍はオイラの目の前で首を飛ばされた龍の転生だということ。
首を飛ばされた時に狙いを間違え、てオイラに呪いを掛けたこと。
オイラを探すのに手間が掛かり、漸く発見し同行して貰えたこと……等々。
関係のある点を簡潔に並べたら3行足らずなのに、亜神がどうとか転生ミスったとか、次は此方の番だとか……長いよ。
「解って頂けたかの?」
「3秒で要約すると?」
「すまんかった、許してくれ」
「いや、謝られても……もう何とか乗り越えたから」
ユウコ龍は再び最敬礼の謝罪をするが、オイラには実感がない。
「しかし、長たるもの謝罪のみで済まされる訳にもいかん。解呪と……その隷属の腕輪の処理を任せて貰えぬか?」
「え?これって外せるの?無理に外すと死んじゃうって聞いたんだけど?」
「あぁ、人間風情の呪いなど容易いものよ」
そう言うと、ユウコ龍は小さな龍に変身……サイズ的には十分大きいんだが、広間には収まっている。
そして、オイラに向かうと鼻息を荒くして睨みつけた。
「……!?」
声が出なかった、動くことも侭為らない。完全に雰囲気に呑まれた様だ。
がちん。
ユウコ龍の口がニカッと開き、牙が綺麗に並んでいるな……と思う間もなく、それは素早く動いて閉じられた。
動いた先はオイラの右側であり、確認するとオイラの右の肘から先は無くなっていて、間を置いてボタボタと血が出てきた。
考えたくは無いが、恐らくオイラの腕はユウコ龍の牙の中に収まっている。
「……!!」
それでもやっぱり、声を出す事も動くこともできなかった。




