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勇者36番  作者: ハムリンゴ
第一幕:急に呼ばれて、困ってしまう件について。
16/134

15) 初めての戦いなのね。

 戦闘開始の銅鑼が鳴った。


……


 3人は余裕の表情でジリジリと近づいてくる。

 とりあえずオイラは魔法の有効範囲に3人を入れるように横に回り込む。


「さぁ、狩りの時間、だな?」

「わははは、浮かれていると噛み付かれるぞ。がははは!」

「少しは俺の分も残しておいてくれよ?ぎゃはははは!」


 剣士と槌戦士は同時にオイラに突っ込んでくる。全くの覇気無しで……弄ぶ気満々だ。


「ていっ!」


 オイラは手に握っていた砂を思いっきり2人の顔に撒きつける。


「うおっ!」

「いてぇ!」


 2人とも目を抑えて蹲り、砂を払いに掛かる。


「ひ、卑怯だぞお前!砂で目潰しとか考えられんわ!」

「あ?1人相手に3人で襲いかかる奴が、偉そうに講釈垂れるな!バカか!?」


「て、てめえぇ!」


 挑発に乗った魔法使いくん、魔法陣に3度触れて見え見えの射線でぶっ放す。

 そんな直線的な攻撃が当たるわけも無く、発動前にオイラは着弾点にから離脱している。


「当たるかバカ。ほんとにバカだろ?」

「こ、殺す!殺してやる!!」


 激怒した魔法使い君は次々と魔法を放つ。射線が読まれている事に気づいてないのか?

 いい案を思いついたオイラは、ちょっとした演技を始める。


「あわわわ、あぶねぇ!当たる!」

「当たれよ!止まれや!当たらねぇだろ!」


 そういえば、魔法使いくんは前の模擬戦で戦士2人が足止めしたところを狙ってたよな。つまりコントロールに確度がないはずだ。

 それと……そろそろ2人が目から砂を払い除けそうだな。


「あだぁ!しまったぁ!躓いた!!」


 オイラは戦士2人の前に転ぶようにスライディングをした。


「よっしゃ!死ねやぁ!!」

 (タイミングバッチリ!)


 砂を払った2人が転んでいるオイラを確認し、得物を持って立ちはだかる。同時に攻撃魔法が剣士の横を掠めた。残念!当たらなかったか。

 寸前のトコロで気づいたのか魔法の軌道を変えた魔法使いくん、やるね!凄いよ。うん、凄い。オイラにも当たらなかったけど。


「てめぇ!何しやがんだ!?」

「あ、イヤ……魔法の射線上に入ってきた……そう、入ってきたお前の方が悪いんだろうが!?」

「仲間割れしている場合かお前ら!?」


 このまま仲間割れして、同士討ち……なんて甘いよなぁ。


「ぶっ殺す!」

「許さねぇ!」


 戦士2人が凄い剣幕で襲いかかろうと踏み込んだ瞬間、オイラは重力無視の魔法を一瞬発動させる。


「うぉお!?」

「あがぁ!」


 見事に踏み込みに失敗して転んだ2人。しかも剣の人……自分の得物で肩口をザックリ自爆。


「ぐっ……いてぇ!」

「何か魔法を使ったみたいだぞ!注意しろ!!」


 剣士は直ぐに治癒促進剤を肩口にかけると、みるみる傷口が塞がって行く。効果抜群って感じ?

 ここでオイラの攻撃魔法を使っても、あの傷薬でチャラになりそうだ。どのみち、もっと近づいて撃たないと効果無いだろうし。

 そのあと、2回ほど踏み込むタイミングで体勢を崩していたが、残念ながら大きな怪我もせず耐えていた。


「よっしゃ!」

「おう!」


 突っ込んできた戦士2人は踏み込みを掛ける寸前に、急にくるりと二手に分かれた。そして、その間から炎が吹き出して来た。

 今までにない連携攻撃を今更使って来た、なんてこったい。


「っ……!」


 咄嗟に“打ち消しの魔法”を使った。結果……炎の魔法は掻き消え、その場にいる4人全員崩れ落ちた。


「うおっ!」

「足が!?」

「おぶっ!」

「オイラも!?」


 そういえば、オイラにも身体強化の魔法が掛かっていたのを忘れていた。

 やばい、体を軽くするペンダントの効果は常時発動で大丈夫だろうけど、身体強化魔法がない……立てねぇぞ。


(やばい、立てなきゃフルボッコ確定コースじゃねぇか!)

ぴょこ!☆


 魔導書が意思表示をしている、ココで攻撃しろってか!?立てなくてもチャンスと言えばチャンスか!

 なんとか腕を動かし栞に触れて魔法を発動させる……魔法が出ない!?慌てて確認すると異変に気付いた。

 ……なんと、普通に立ち上がれた。


(身体強化魔法か!?)

ぴょこぴょこ!☆


 どうやら、栞のページは身体強化の魔法陣だったようだ。攻撃魔法のページだって肯定しただろ、アンタ……

 攻撃魔法が無くなって、翻弄してチマチマ削る計画が台無しになった。どないしよ……

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