15) 初めての戦いなのね。
戦闘開始の銅鑼が鳴った。
……
3人は余裕の表情でジリジリと近づいてくる。
とりあえずオイラは魔法の有効範囲に3人を入れるように横に回り込む。
「さぁ、狩りの時間、だな?」
「わははは、浮かれていると噛み付かれるぞ。がははは!」
「少しは俺の分も残しておいてくれよ?ぎゃはははは!」
剣士と槌戦士は同時にオイラに突っ込んでくる。全くの覇気無しで……弄ぶ気満々だ。
「ていっ!」
オイラは手に握っていた砂を思いっきり2人の顔に撒きつける。
「うおっ!」
「いてぇ!」
2人とも目を抑えて蹲り、砂を払いに掛かる。
「ひ、卑怯だぞお前!砂で目潰しとか考えられんわ!」
「あ?1人相手に3人で襲いかかる奴が、偉そうに講釈垂れるな!バカか!?」
「て、てめえぇ!」
挑発に乗った魔法使いくん、魔法陣に3度触れて見え見えの射線でぶっ放す。
そんな直線的な攻撃が当たるわけも無く、発動前にオイラは着弾点にから離脱している。
「当たるかバカ。ほんとにバカだろ?」
「こ、殺す!殺してやる!!」
激怒した魔法使い君は次々と魔法を放つ。射線が読まれている事に気づいてないのか?
いい案を思いついたオイラは、ちょっとした演技を始める。
「あわわわ、あぶねぇ!当たる!」
「当たれよ!止まれや!当たらねぇだろ!」
そういえば、魔法使いくんは前の模擬戦で戦士2人が足止めしたところを狙ってたよな。つまりコントロールに確度がないはずだ。
それと……そろそろ2人が目から砂を払い除けそうだな。
「あだぁ!しまったぁ!躓いた!!」
オイラは戦士2人の前に転ぶようにスライディングをした。
「よっしゃ!死ねやぁ!!」
(タイミングバッチリ!)
砂を払った2人が転んでいるオイラを確認し、得物を持って立ちはだかる。同時に攻撃魔法が剣士の横を掠めた。残念!当たらなかったか。
寸前のトコロで気づいたのか魔法の軌道を変えた魔法使いくん、やるね!凄いよ。うん、凄い。オイラにも当たらなかったけど。
「てめぇ!何しやがんだ!?」
「あ、イヤ……魔法の射線上に入ってきた……そう、入ってきたお前の方が悪いんだろうが!?」
「仲間割れしている場合かお前ら!?」
このまま仲間割れして、同士討ち……なんて甘いよなぁ。
「ぶっ殺す!」
「許さねぇ!」
戦士2人が凄い剣幕で襲いかかろうと踏み込んだ瞬間、オイラは重力無視の魔法を一瞬発動させる。
「うぉお!?」
「あがぁ!」
見事に踏み込みに失敗して転んだ2人。しかも剣の人……自分の得物で肩口をザックリ自爆。
「ぐっ……いてぇ!」
「何か魔法を使ったみたいだぞ!注意しろ!!」
剣士は直ぐに治癒促進剤を肩口にかけると、みるみる傷口が塞がって行く。効果抜群って感じ?
ここでオイラの攻撃魔法を使っても、あの傷薬でチャラになりそうだ。どのみち、もっと近づいて撃たないと効果無いだろうし。
そのあと、2回ほど踏み込むタイミングで体勢を崩していたが、残念ながら大きな怪我もせず耐えていた。
「よっしゃ!」
「おう!」
突っ込んできた戦士2人は踏み込みを掛ける寸前に、急にくるりと二手に分かれた。そして、その間から炎が吹き出して来た。
今までにない連携攻撃を今更使って来た、なんてこったい。
「っ……!」
咄嗟に“打ち消しの魔法”を使った。結果……炎の魔法は掻き消え、その場にいる4人全員崩れ落ちた。
「うおっ!」
「足が!?」
「おぶっ!」
「オイラも!?」
そういえば、オイラにも身体強化の魔法が掛かっていたのを忘れていた。
やばい、体を軽くするペンダントの効果は常時発動で大丈夫だろうけど、身体強化魔法がない……立てねぇぞ。
(やばい、立てなきゃフルボッコ確定コースじゃねぇか!)
ぴょこ!☆
魔導書が意思表示をしている、ココで攻撃しろってか!?立てなくてもチャンスと言えばチャンスか!
なんとか腕を動かし栞に触れて魔法を発動させる……魔法が出ない!?慌てて確認すると異変に気付いた。
……なんと、普通に立ち上がれた。
(身体強化魔法か!?)
ぴょこぴょこ!☆
どうやら、栞のページは身体強化の魔法陣だったようだ。攻撃魔法のページだって肯定しただろ、アンタ……
攻撃魔法が無くなって、翻弄してチマチマ削る計画が台無しになった。どないしよ……




