16) 回避一辺倒なのね。
「拙いな……」
唯一の攻撃と思っていた☆導きの書☆で発動した魔法は、身体強化だった。栞を差し替えようとして引っ張ってみたが、抜けなかった。
こうなったら肉弾戦しか無いようだ。バランスを崩したところで蹴る殴るという地味な攻撃だ。
「おい、武器が重くなったぞ?そっちは大丈夫か?」
「なんじゃこりゃ?体も重いわ。支援切れか!?」
「ちょっと待っとけ、掛け直す!」
魔法使いくんが魔道書を開きパラパラと支援魔法のページを探す。
バシッ!
「うわ!何すんだコノヤロウ!!」
そんな隙を見逃すワケには行かない。オイラは魔法使いくんの魔道書を叩き落とし、そのまま殴りかかった。
二発目を振りかぶったが、範囲外へと逃げられた。
「何やってんだお前ら!守れよっ!バカか!?」
慌てて2人の戦士が魔法使いくんとオイラの間に割り込む。魔法使いくんは取り上げ損なった魔道書を拾い上げる。
「何の魔法か解らんが、デバフだろ?」
「ってうか、武器が無くても殴ってイイんだろ?」
どうやら、召喚前の世界でも殴ることが好きだった感じな連中か?
オイラはペンダントと身体強化の魔法でやっと普通の動作しかできないのに、あっちはソレがなくても戦闘力はオイラより高そうだ。
仕方ないので、相手側の身体強化魔法を打ち消した衝撃によるダウンを狙って蹴り飛ばす作戦を思いついた。
「時間稼ぎか?強化魔法が掛かればボッコボコにしてやる!」
逃げ回って時間を稼ぎ、相手全員が支援魔法が掛かったのを確認した。
そして、打ち消し魔法の効果範囲内へ3人を収める為に移動を始める。
ばちん!
全身に激痛が走った。魔法使いくんの攻撃魔法かと思ったが、ヤツも少々驚いている。
アナウンスが流れた。
『戦闘拒否とみなし、指導を行います』
(酷い……3人全員に支援魔法が掛かるのを待っていたんだろ。やるなら逃げた段階でやれよ……)
痛みで蹲ったオイラは、3人に何度も蹴られる。
亀のように固まって耐えていたが、身体には思うほどダメージが無い……
(あぁ、そうか装備の効果か……ダメージ軽減?小柄ちゃんには後で御礼を言わないとな)
しかし、そんなに痛くないと言ってもダメージは蓄積されるし、頭は無防備だ。節々がズキズキとしてきた。
どれくらいの時間が経ったかは解らないが蹴り飽きた様子を見せ、3人は思い出したかのように戻っていく。
「そういえば、こんなのがあったよなぁ」
「あぁ、ドカンとヤリますか」
「火葬の準備もしておかないとね」
戦士2人は各々自分の得物を拾いに行った。しかも、☆導きの書☆はベルトを外されて魔法使いくんに囚われている。
その隙に立ち上がったオイラは、不利な状況で為す術も無くジリジリと壁際まで追い詰められる。
ばちん!
また全身に痛みが走る。そしてさっきと同じアナウンスが流れる。
『戦闘拒否とみなし、指導を行います』
(追い詰められるまで待ってた?……そこまでやるか!?)
「最初はオレでイイよなぁ?」
剣士はニヤつきながら炎の剣をゆっくりと振り上げる。オイラは蹴られた痛みを堪えながらどうやって避けるかを考える。右か左か?
(くっそ、魔道書が戻って来れば!)
その時、剣が振り下ろされる直前に魔法使いくんの手を振り抜けて、☆導きの書☆がすっ飛んできた!オイラ目掛けて。
(来た!来てくれたんだ!!え!?)
手を伸ばし☆導きの書☆をキャッチしたとたん、何故かそのまま頭上へ……☆導きの書☆は、炎の剣とオイラの間に割り込んだ。
ばくん☆
オイラは真剣白刃取りをしていた、導きの書☆で。
無意識でやった……というより☆導きの書☆の意思によってか?
そして、魔法陣の時と同じようにした芸を披露する。簡単に言うと“炎の剣を喰った”。
剣士が驚いて得物を手放したので、そのまま啜る様に飲み込み“ぺっ”と何かを吐き出した。
それはゴトンと音を立てて、転がる。
「剣が!俺の剣が溶かされた!?」
「クソ……が!」
呆気にとられていたオイラへ向かって槌戦士は得物を振り抜き、☆導きの書☆を弾き飛ばす。それを今度も魔法使いくんが拾い上げて、しっかりホールドする。
せっかくの反撃チャンスをフイにしてしまった。今度は肩口に打撃を受ける、流石にダメージが半端ない。
ブンブンと振り回す槌に当たるわけにはいかない。何度か避けていると、槌戦士は自らの得物を捨てた。
その行動に呆気にとられていると、後ろから殴られた。そしてまた、ボコボコに蹴り倒される。
「くそ!くそ!くそっ!俺の剣を!」
「もう、容赦しねえからな!」
やはり、防具が高性能なので大きなダメージは入っていないが、やっぱり防具で保護されていない部分は痛い。頭なんかクラクラしてきた。
痛みが少ないうちに立ち上がろうと考えてみたが、その隙に頭を狙われるとアウトなので必死に耐える。
そのうち使っていない魔道具にふと気付く、“魔力回復の腕輪”だ。ここで魔力を回復していても意味がないのが解っているのだが、気になりだして仕方がない。
(使ってみないよりマシか)
ありったけの魔力を魔力回復の腕輪と身体強化の魔道具に注ぎ込み発動させた。グルグルと目眩がしたが、意識はまだある。
(あぁ、魔力回復効果の魔道具に、魔力を大量に使ってら……)
自嘲気味に思っていると、異変は既に起きていた。2人の攻撃が止まっている。
不意打ちを誘っているんじゃないかと警戒をしてチラッと腕の隙間から覗くと、倒れていた……3人とも。
意味が解らないまま起き上がって確認すると、ピクリとも動かない。
魔法使いくんから☆導きの書☆を取り返してみると、パランとページが開いて栞が落ちた。あ、ページの中身は何も描かれていない。
そういえば☆導きの書☆は中を覗かれる事を嫌がっていたので、オイラは拾い上げた栞を挟んで静かに閉じた。
さっきの炎の剣で少し焦げていたので、回復薬を少し塗ったら焦げ目が綺麗に取れた。やっぱり生きてるんだね。
『勝者、36番……となりました』
嫌々、渋々と言えそうなアナウンスが演習場に響いた。




