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勇者36番  作者: ハムリンゴ
第一幕:急に呼ばれて、困ってしまう件について。
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14) 頑張ってみるのね。

 いきなりの編入に、チョット焦りました……はい。

 呪いで戦力外認定されていたオイラのパーティに入ってくれているのに、名前だけでドン引きした事は謝ります。

 さぁ、☆導きの書☆なんて偽名は置いといて、早くオイラの前に姿をお見せ下さい!


「えっと……?」


 結局、誰も姿を現さなかった。今、オイラは演習場横の作戦部屋で一人で佇んでいる。

 きっと、緊張してトイレにでも行っているのかもしれない。いや、皆の間で呪われたパーティに入ることを躊躇ったに違いない。

 体感時間で5分は過ぎた……もう来ないかも知れない。キンキン罰ゲームオッサンの嫌がらせの一環だと思い始めた。

 こうなったら、そのへんの猫でも捕まえて無理矢理パーティに……あ!

 ふと、とんでもない考えが頭を過ぎった。


「もしかして、おまえかぁ!?」


 叫びながら、手に持った魔導書に目をやる。


ぴょこぴょこっ☆


 うっわ、栞が動いてる!?もしかして意思の疎通を図ろうとしているのか!?

 コレ、生きて……イヤ生きてたよな、最初から意思を持ってた気がする、襲われたしな。

 だったら、今まで“喰わせた”魔法陣が使えるかもしれない。


「なぁ、中身……見ても良いか?」


ぷいぷい☆


 栞が横に2~3回振れた。


「嫌って事か?」


ぴょこ☆


 よし、YES/NOの表現は解った。それで、だ……どうやって中の魔法を使うかだよな。

 開いて手を当てなきゃならんのに、どうやりゃいいのか。


「今、栞で挟んでいるページは攻撃魔法のページか?」


ぴょこ☆


 よし、これで少々だが攻撃できる目処が付いた。何とか相手の攻撃を避けて、チマチマと削っていく作戦で行こう。


「さって、頑張りますか!」

ぴょこ☆


 模擬戦開始前の合図が鳴り、“オイラ達”は揚々と出て行く。しかしオイラに降り注ぐ周囲の目線が痛い、痛すぎる。

 掲示板に対戦表が貼り出された。3ブロック編成でトーナメント戦を行い、次に各ブロック3組勝利チームでのバトルロワイヤル形式。え?そのあと決勝戦??


「ひでぇ……悪意しか感じられん」


 オイラ達のチームと3ブロックを勝ち抜いた1チームで決勝戦とな。はい、オイラ達のチームは、超シード扱いでした。

 銅鑼が鳴って一回戦目が始まる。37人全てが勇者扱いと言っても、得意な分野があるようだ。物理的な剣や斧、弓や体術。魔法にも攻撃や支援、回復だったり。


 何も知らされずに行き当たりばったりで組んだ3人が短い時間で作戦を練り、戦いが始まる。当然最初の戦闘はグダグダだった。

 戦闘内容は思っていたより凄惨なものだった。切れたり焦げたりするものだから、観戦者内で吐いたり俯いたりしている。騒ぐと“罰”が飛んでくるので、叫ぶものは居ない。

 しかし、2回戦目にもなると立ち回りや要領が掴めて動きも良くなる。足止めした所を狙って魔法攻撃したり、フェイントや支援魔法を使ったり。

 それでも四肢が飛んだり死ぬ事も無く、戦意喪失と判断されると数回の“罰”を喰らって、意識を失うまで戦わされる。


 今回の模擬戦は、連携の訓練なのかもしれん。まぁ、中には3人とも個人プレイに走っているチームもあるけど。

 準決勝の3チーム混合戦は、団体戦というより対多数戦闘を想定しているのかもしれない。

 そして、剣士/槌戦士/魔法使いの組が勝ち残った。個人プレイを主体にしていたチームだった。

 ……次は、オイラ達のチームとの決勝戦だ。


「なんか、勝てる気がしねぇ」


 こっちは初戦、相手は少なくとも3戦は乗り越えて来た奴等だ。どう考えても不利過ぎる。

 トボトボと演習場の開始位置へ行き、相手チームと目を合わせる。

 しかし、開始の銅鑼が鳴らない。


『3ブロック戦勝者の休憩を行います』


(酷過ぎるだろ……キンキン罰ゲームオッサンの考えだろうな。)


「おい、ボーナス君。お前、ボーナス君で良いよな?」

「古龍の件で一番レベルが上がっているって噂だぞ」

「俺達の美味しい経験値となってくれよな」


 向こうから酷い言われ様だ。気にしないようにする。

 休憩時間でもう一度作戦を考える。オイラの使える魔法で一番効果のある戦い方を。


「なぁ、コレ見てくれよ?ミスリル銀製の剣なんだぜ?ほら、こうやって炎が出るんだぞ」


 剣士っぽいヤツが自慢気に言い、自分の剣に触れて刀身から炎を噴出させる。


「オイオイ、戦闘前からMP使っちゃダメだろ?戦闘時間が長引いてMP切れになったらどーすんだ?」

「ハハッ!お前の“破壊槌”だって、もう発動させてMPがダダ漏れじゃねぇか!」

「俺が向こうに乗り換えて2対2にした方が楽しくならないか!?」


 オイラに聞こえる……っていうか演習場全体に聞こえる様に大声で威嚇してくる3人。

 そうなると、逆になんとなく冷静になってきた。オイラは向こうの戦い方を3回は見ている。こっちの戦術は知られていない、そこは重要な鍵となるな。

 足場を崩して物理攻撃を阻害し、魔法攻撃は無効化できる。その隙にコッチの攻撃を叩き込んで削る。

 短い時間で何度も頭の中でシミュレーションを行う。そのイメージを走らせると同時に魔道書に手を乗せ、感覚を研ぎ澄ます。


「足止めして攻撃。足止めして攻撃。足止め、攻撃……」


 ブツブツ呟く事で何とか出来るとは思ってないが、繰り返しイメージをすることで動じない心を練り上げる。


「こえー!ボーナス君が何かブツブツ言ってるよ?」

「ぎゃははは!念仏じゃないの!?」

「ココに佛様なんていやしねぇっての!」


 なんだか、ヤラレ役っぽい発言をバンバン言ってるなぁ……

 だが、オイラの魔法では奴等を蹂躙するだけの持ち手が無い。逆にこっちがヤラレ役になりそうだ。


「痛そうだけど、頑張ってみるか……なぁ?」

ぴょこぴょこ☆


 シッカリと掴んで尋ねると、☆導きの書☆は元気に応えた。

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