14) 頑張ってみるのね。
いきなりの編入に、チョット焦りました……はい。
呪いで戦力外認定されていたオイラのパーティに入ってくれているのに、名前だけでドン引きした事は謝ります。
さぁ、☆導きの書☆なんて偽名は置いといて、早くオイラの前に姿をお見せ下さい!
「えっと……?」
結局、誰も姿を現さなかった。今、オイラは演習場横の作戦部屋で一人で佇んでいる。
きっと、緊張してトイレにでも行っているのかもしれない。いや、皆の間で呪われたパーティに入ることを躊躇ったに違いない。
体感時間で5分は過ぎた……もう来ないかも知れない。キンキン罰ゲームオッサンの嫌がらせの一環だと思い始めた。
こうなったら、そのへんの猫でも捕まえて無理矢理パーティに……あ!
ふと、とんでもない考えが頭を過ぎった。
「もしかして、おまえかぁ!?」
叫びながら、手に持った魔導書に目をやる。
ぴょこぴょこっ☆
うっわ、栞が動いてる!?もしかして意思の疎通を図ろうとしているのか!?
コレ、生きて……イヤ生きてたよな、最初から意思を持ってた気がする、襲われたしな。
だったら、今まで“喰わせた”魔法陣が使えるかもしれない。
「なぁ、中身……見ても良いか?」
ぷいぷい☆
栞が横に2~3回振れた。
「嫌って事か?」
ぴょこ☆
よし、YES/NOの表現は解った。それで、だ……どうやって中の魔法を使うかだよな。
開いて手を当てなきゃならんのに、どうやりゃいいのか。
「今、栞で挟んでいるページは攻撃魔法のページか?」
ぴょこ☆
よし、これで少々だが攻撃できる目処が付いた。何とか相手の攻撃を避けて、チマチマと削っていく作戦で行こう。
「さって、頑張りますか!」
ぴょこ☆
模擬戦開始前の合図が鳴り、“オイラ達”は揚々と出て行く。しかしオイラに降り注ぐ周囲の目線が痛い、痛すぎる。
掲示板に対戦表が貼り出された。3ブロック編成でトーナメント戦を行い、次に各ブロック3組勝利チームでのバトルロワイヤル形式。え?そのあと決勝戦??
「ひでぇ……悪意しか感じられん」
オイラ達のチームと3ブロックを勝ち抜いた1チームで決勝戦とな。はい、オイラ達のチームは、超シード扱いでした。
銅鑼が鳴って一回戦目が始まる。37人全てが勇者扱いと言っても、得意な分野があるようだ。物理的な剣や斧、弓や体術。魔法にも攻撃や支援、回復だったり。
何も知らされずに行き当たりばったりで組んだ3人が短い時間で作戦を練り、戦いが始まる。当然最初の戦闘はグダグダだった。
戦闘内容は思っていたより凄惨なものだった。切れたり焦げたりするものだから、観戦者内で吐いたり俯いたりしている。騒ぐと“罰”が飛んでくるので、叫ぶものは居ない。
しかし、2回戦目にもなると立ち回りや要領が掴めて動きも良くなる。足止めした所を狙って魔法攻撃したり、フェイントや支援魔法を使ったり。
それでも四肢が飛んだり死ぬ事も無く、戦意喪失と判断されると数回の“罰”を喰らって、意識を失うまで戦わされる。
今回の模擬戦は、連携の訓練なのかもしれん。まぁ、中には3人とも個人プレイに走っているチームもあるけど。
準決勝の3チーム混合戦は、団体戦というより対多数戦闘を想定しているのかもしれない。
そして、剣士/槌戦士/魔法使いの組が勝ち残った。個人プレイを主体にしていたチームだった。
……次は、オイラ達のチームとの決勝戦だ。
「なんか、勝てる気がしねぇ」
こっちは初戦、相手は少なくとも3戦は乗り越えて来た奴等だ。どう考えても不利過ぎる。
トボトボと演習場の開始位置へ行き、相手チームと目を合わせる。
しかし、開始の銅鑼が鳴らない。
『3ブロック戦勝者の休憩を行います』
(酷過ぎるだろ……キンキン罰ゲームオッサンの考えだろうな。)
「おい、ボーナス君。お前、ボーナス君で良いよな?」
「古龍の件で一番レベルが上がっているって噂だぞ」
「俺達の美味しい経験値となってくれよな」
向こうから酷い言われ様だ。気にしないようにする。
休憩時間でもう一度作戦を考える。オイラの使える魔法で一番効果のある戦い方を。
「なぁ、コレ見てくれよ?ミスリル銀製の剣なんだぜ?ほら、こうやって炎が出るんだぞ」
剣士っぽいヤツが自慢気に言い、自分の剣に触れて刀身から炎を噴出させる。
「オイオイ、戦闘前からMP使っちゃダメだろ?戦闘時間が長引いてMP切れになったらどーすんだ?」
「ハハッ!お前の“破壊槌”だって、もう発動させてMPがダダ漏れじゃねぇか!」
「俺が向こうに乗り換えて2対2にした方が楽しくならないか!?」
オイラに聞こえる……っていうか演習場全体に聞こえる様に大声で威嚇してくる3人。
そうなると、逆になんとなく冷静になってきた。オイラは向こうの戦い方を3回は見ている。こっちの戦術は知られていない、そこは重要な鍵となるな。
足場を崩して物理攻撃を阻害し、魔法攻撃は無効化できる。その隙にコッチの攻撃を叩き込んで削る。
短い時間で何度も頭の中でシミュレーションを行う。そのイメージを走らせると同時に魔道書に手を乗せ、感覚を研ぎ澄ます。
「足止めして攻撃。足止めして攻撃。足止め、攻撃……」
ブツブツ呟く事で何とか出来るとは思ってないが、繰り返しイメージをすることで動じない心を練り上げる。
「こえー!ボーナス君が何かブツブツ言ってるよ?」
「ぎゃははは!念仏じゃないの!?」
「ココに佛様なんていやしねぇっての!」
なんだか、ヤラレ役っぽい発言をバンバン言ってるなぁ……
だが、オイラの魔法では奴等を蹂躙するだけの持ち手が無い。逆にこっちがヤラレ役になりそうだ。
「痛そうだけど、頑張ってみるか……なぁ?」
ぴょこぴょこ☆
シッカリと掴んで尋ねると、☆導きの書☆は元気に応えた。




