13) 練習の成果なのね。
「今日の予定は、朝から模擬戦で、そのあとはお休みになるのよさ?」
「イキナリですな……模擬戦ってナニ?」
「これまでの練習の成果を試すために、召喚された勇者達に実践演習を行ってもらうのよさ?」
「なるほど、それは死んじゃったりしないのか?」
模擬戦といえども実際に戦うワケだから、その辺りは確認をしておきたいわけで……
「ええ、大丈夫だと思うのよさ?」
「そこは疑問符で終わらせるトコじゃないでしょっ?」
「大丈夫、首が飛んでも元通りにくっつけてあげるから、大丈夫なのよさ?」
「いや……疑問で括られてるのと、大丈夫ってコトバが連続してる時点で超怪しいんだけど!?」
「そこそこイケルと思うんだけどなぁ?」
「何を根拠に!?」
小柄ちゃんが今「私が教えたんだから?」と自信満々で仰るので、仕方なく心を決める。
「あぁ、それと支度品があったのよ?」
そう言って袋から数点の品物を取り出した。
「先ずは、パーティ編成用プレートね?」
勇者たるもの自分がリーダーとなりパーティを組むものだと言うが、参加者全員がリーダーって無理があると思う。
「次は、魔導書だけど……キミは既に持ってるから、要らないかな?」
支度品の魔導書とオイラの魔導書?を取り替えて手渡される。
「そして、魔導士用ローブね?」
なんか、幽霊が着るようなローブだった。灰色でボロボロ、丁寧にささくれているフードまである。
「最後に各種回復薬とそのホルダーね?」
緑色の魔力回復薬と、初めて見る真っ赤な治癒促進剤が幾つかベルトに装着されている。
「あとは……私からの応援よ?」
斬撃や打撃に対応できる金属糸が織り込まれたという革鎧。それと魔導書用ベルトと保護カバーらしきもの。
オイラが革鎧を装着している間に、魔導書用ベルトと保護カバーは小柄ちゃんがセットしてくれた。
「因みに、保護カバーの表面は“打ち消し”が、裏側は“荷重無視”の魔法陣が3軸同時入力方式で作っているのよ?」
「荷重無視は解るけど、打ち消しってナニ?」
打ち消しの効果は、発動させると半径10m程度の範囲で魔法効果を完全に消すらしい。
ただ消すだけなので、被せて発動させることはできる……と。
荷重無視の効果も半径10mの重力を完全に無効、つまり無重力領域を発生できると、しかも任意の時間で。
「キミは攻撃手段が殆ど使えないので、しっかり守る努力をするのよさ?」
「攻撃はどーするんですかね……?」
「そりゃ、パーティ組んだ他の2人に任せるのよさ?」
「2人?」
「そう、編成は2~3人で組まれるのよ?」
「なるほど、オイラは護衛に回って戦うのは残りに任せるというわけだ」
「そういうことよ?」
小柄ちゃんの戦術講座が始まった。
まず、メンバーになった他の勇者にはオイラの魔法特性を伝える事。次に打ち消しを行っても驚かずに攻撃に専念する事を伝える。
打ち消しの魔法については、物理的なモノは防ぐ事が出来ないとのこと。例えば剣戟などは勿論、矢や投石もダメだという。
無重力の魔法は一瞬でも発動させることで、相手の足場を崩す事ができるので多用するはずだという。
つまり、魔法は打ち消して戦士相手には無重力で対応。っていうスタイルが合っていると締め括られた。
「さ、演習場へ向かうのよさ?」
「了解!」
小柄ちゃんが先に部屋を出ると……アノ魔導書がオイラの腕から飛び出し、貢物置き場へすっ飛んでいった。
(他人が見てないと元気なんだよなぁ)
いつもの事なので、魔導書を拾い上げたら魔道具を咥えていた……というより挟まっていた。
その魔道具は“栞”だった。たしか魔導書を緊急発動させる場合、表紙と裏表紙以外に背表紙と挟んだ栞を介する4通りの方法が可能と言ってたな。
今の魔導書は背表紙が無いから、表裏の表紙と栞の3通りか。ただ、栞を挟んだページが何の魔法陣か解らないので開こうとしたら拒否された。
(栞を使ったら何の魔法が……って属性魔法は効果が薄いんだったな、こりゃ飾りだわ)
演習場では召喚された人達が集まりだしていた。雰囲気が重く、皆疲れた顔をしている。
「おはぁよう!37人の未来の勇者諸君ん、ちゃんと鍛錬はしたかねぇ?」
久しぶりに、キンキン罰ゲームオッサンの声を聞いた。
「さぁ、コレからチョットした模擬戦を行って貰うよぉ」
模擬戦のルールはこうだ。
2~3人でパーティを組み、籤の順番でトーナメント方式の対戦を行うそうだ。
怪我については失格、つまり戦闘不能と判断された段階で回復されるという。それまで痛いままってのが怖いな、切られる事だけは避けよう。うん、絶対。
「それではぁ、パーティを組みたまへぇ!」
キンキン罰ゲームオッサンの号令とともに、召喚者たちは次々とパーティを組んでいく……
「えーっと……」
結局、オイラ一人だけ取り残された。呪いの事が知れ渡っており、戦力外確定ってか……早々に降参して降りるかねぇ。
そう考えていると、編成用プレートからパシンと音がした。
誰かが編入されている……
「おおう、誰?一緒に戦ってくれる勇者様はドコっ!?」
ハブられていたはずなのに、誰かが可哀想に思って入ってくれたのか?即座にプレートで名前を確認する……と。
『☆導きの書☆』
「はい?導きの書??誰???」




