12) 練習は大事なのね。
「頑張ったね……気は済んだ?」
「あぁ、コツだけは掴めた」
魔道具を使わない、簡単な身体強化魔法の熟練度が上がった様で、魔法を発動させたオイラは満足していた。
素質がないからといって、使うのを諦めたわけでは無い。この呪いがある限り、身体強化と無の魔法は必要不可欠だ。
「それでは、検査に行きますかー?」
今日からガタイ君はオイラを運ぶことはない、魔道具と魔法の効果により、自身で歩けるからだ。勝った!オイラは勝ったぞ!
んで、大柄サンの待つ小部屋へと入る。
「あらー、調子を取り戻したみたいねぇ」
「えぇ、おかげさまで助かりました。ありがとう」
「あらあらあら、随分と大人な言い回しができるのねぇ。関心しちゃったわ」
(大柄サン!?オイラをどんな目で見てたのよっ!?)
今日、何度目かの軽いショックを受けながら椅子に座る。
そして、プレートに手を置きステータスを開示する。
「ステータスオープン」
パシンと音を発したプレートをオイラは覗き込む。
「前より数字が少し上がってる?表記も増えてるし」
「あらあら、特性とスキルを習得出来てますね。おめでとうござ……あらぁ?」
大柄サンが増えた表記のヒトツを指差す。
「おお!属性魔法のスキルが付いてる!?しかも属性魔法行使のスキル!!」
「えっとですね……その属性魔法行使のスキルなんですけど、珍しく減少効果なんですよねぇ」
「減少?」
「はい、通常より効果が低く発動するという意味です」
「って事は、どんな魔法を使っても効果が無いってワケ?」
「いえ、属性のある魔法限定の様ですね。それと、使用時の効果が低くなるだけですね」
「それで、属性がある魔法がダメってことは無属性はどうなんだろね?」
「無の魔法ですか……それは属性魔法ではないので、恐らくこちらは関与されないと思います」
「身体強化魔法は?」
「無属性系列であれば問題無いと思います。寧ろ支援魔法(受動)のスキルが増えているので、通常より効果は大きくなるかと思われます」
「なるほど……スキルの方は解った。新しく増えた特性の方なんだけど……」
「はい、3つほどありますね。前からある“呪”に加えて“勇者”と“限界突破”ですね」
「“勇者”って特性なの?職業かと思うんだけど?」
「そうですね、確かに職業ですが特性として出たケースは初めてですので、これから調査致します」
「んじゃ、残りの“限界突破”は何だろね?」
「それも、初めて見る特性ですね。もう少し様子を見させて下さい」
あとは、微妙なステータスの値を聞いてみたが、残念な結果だという事が知らされた。
通常、大人でもこの数値の振れ幅は3~18程度らしく、その数値と個人の特性を以て就ける職業が選べるらしい。
前回見たときはオール1だった……産まれたての仔鹿より低いんじゃないかと思う。
今回は微妙に知力と知恵が1ずつ、つまり2になっていた。
「先生、質問。知力と知恵が呪いによって下がったってことは、オイラはバカになったって事でしょうか?」
「いいえ、呪いの効果は基礎値とは別の問題ですので、本来の能力を損なう事はありません。意識の外側で発動していますね」
「でも、数値が上がってるということは、要領良くなったとかそういうことですか?」
「そうですね、行動によって増減するようです。または、魔道具や支援魔法を使うことでも向上させることが可能ですね」
なるほどなるほど、地味な努力が実を結ぶってか。良いじゃないか。
反復運動は問題無いな、さっきも身体強化魔法をバンバン練習してたしな。
「とりあえず、頑張ればなんとかなると言うのが解って良かったよ」
「そうですね、素晴らしい特性をお持ちで羨ましいです」
大柄サンはメモを取り、状況確認を小柄ちゃんと話し合って検査は終了となった。
部屋へ戻る時もペンダントを発動させて歩いていくことができた。
さて、午後からの小柄ちゃんの解呪スキル上げでは、オイラも身体強化魔法のスキル上げを同時に進行させることができた。
「おはよー!今日も一日修行するよ?」
「了解!テンション上げて行くぞ~!」
というわけで、次の日の朝も演習場へと意気揚々と向かう。何やら今日からは小柄ちゃんも魔法の修練をすると意気込んでいた。
オイラが頑張っているのを見て、負けていられないと呟いた。
「そうそう、こういうのも作ってみたのよさ?」
小柄ちゃんがポンとオイラに手渡したのは腕輪だった。
「腕輪には嫌な思いがあるのは解ってるんだけど、どうしても小さくできなっかの。ごめんね?」
「イヤイヤ、もう慣れちゃったよ。気にすんなって……ところで効果は何なの?」
「えっと……周囲から魔力を活性化して吸収、つまり取り込む構造なのよさ?」
「おおう!魔力回復効果ってヤツですか!?」
オイラは貰った腕輪を装着後に起動させて、魔法の訓練を始めた。確かに魔力が枯渇する寸前までの時間が長くなった気がする。
それと、どこで得意魔法が開花するか解らないので、魔法は満遍なく試してみる事を小柄ちゃんが提案してくれた。
小柄ちゃんは隣で魔法の訓練をしているが、オイラが魔法を発動するタイミングや魔力の込め方も指導してくれる。
魔法を発動させながらオイラへの指導もできるなんて、流石だなーと思ってたら……小柄ちゃんは魔法に於いて権威者だった事を思い出した。
「うっえ……不味いのよさ?」
「慣れてないんかい!?」
魔力回復薬を飲みながら小柄ちゃんは不味い不味いと連呼する。その地位に至るまで何本も飲んでたら慣れるんじゃないのか?と思ってみたり。
「でも、野菜的な要素が摂取できて、健康的だと思うんだが?」
「私、肉食なのよさ?」
「ちゃんとバランス良く食べないから背……!?申し訳ありませんでしたぁぁぁぁ!!」
殺気を放ちながら、コッチに魔法を撃とうとする小柄ちゃん。オイラは即座に土下座をすることで何とか危険を回避できた……アブねぇ。
小柄ちゃんに身長の話は禁句だという事が解った。おそらく胸の話も同様なのだろうと安易に想像できる。
次に午後の公開生贄だが、徐々に貢物がお金に変わってきている。どうやら魔道具関連が出尽くした様だ。
金銭については相場が全く解らず置き場所もないので、ガタイ君経由で宝石や魔石というモノに換金しておいた。
そして、そんなサイクルを一週間ほど完了した、ある日……
「さって、今日は練習の成果を見せる時が来たのよ?」
「はい?」
清々しい朝を迎えて、唐突にそのイベントはやってきた。




