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勇者36番  作者: ハムリンゴ
第一幕:急に呼ばれて、困ってしまう件について。
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11) 特訓なのね。

「あだだだだだ……」


 目が覚めると後頭部にタンコブが出来ていた。

 後頭部を強打したと思われる。


「っていうか、何にぶつけたんだろ?」


 辺りを見回すと、既に食事が置かれている。

 そして、あの魔導書……


「これで、2回目だよ……な?」


 やはり、前に投げ捨てた時に跳ね返って直撃したのは偶然じゃない、と思えてきた。

 今回は振ったりバンバン叩いたりしたからなぁ。

 小柄ちゃんがレア素材って言うくらいだから、意思を持っていても不思議じゃないのかも知れない。

 昨日は魔法陣を食べていたし、確実に生きている魔導書だと思うね。


(と、いうことは……)


「すまなかった!」


 オイラは魔導書に向かって土下座をした。また飛び掛られてはたまったモノではないからな。


「なにしてるの?」


 背後から小柄ちゃんが声を掛けてきた。なんというタイミング!


「え?あ、いや……魔導士たる者、自分の魔導書を無碍に扱っては為らぬと実感したもので」

「ふ~ん?」


 適当に取り繕った誤魔化しが通用したかどうかは定かではないが、この場は切り抜けたと思う。


「はい、これ……昨日言ってた無の魔法陣よ?」

「おおう、ありがとう。……って羊皮紙じゃないんだ?」


「うん、身に着けることができるようにしてみたよ?」

「すごいな、魔道具……しかも首飾りタイプか」


 早速、装着してみる。体育の時間で使う筒状ホイッスルの雰囲気が感じられる。


「発動は筒の先を2目盛ほど捻るんだよ?」

「了解、やってみるよ」


 言われた通りに筒を捻ると、カチリと音がして異変を感じる。確かに身体がフワリと浮く感触がある。

 しかし、何か軽すぎやしないか?と思っていると……


「身体強化魔法が切れると丁度いい感じになると思うのよさ?掛かってるのなら1目盛なのよさ?」

「あ、なるほど。そういうことか」


 小柄ちゃん、ちゃんと考えてくれてるんだ。流石だね、あと10年くらい経てばオイラのヒットゾーンに入って来るぞ。関係ないか。


「んじゃ、今日も魔法の特訓に行くんだよー?」

「了解、行きましょう」


 今回、初めて自分の足で演習場まで歩いて行ったが、着いたとたん魔力切れを起こしそうになった。


「あら……5分も持たなかったのよさ?再調整が必要かな?」

「それでも、歩けるって良いよねぇ……健康が一番って実感できたよ。本当にありがとな」


 今朝も草の味のする小瓶を飲み干し、魔法の特訓を始める。

 魔法の発動回数が日毎に増えており、順調かと思いきや魔法の威力が上がらない。


「んー?素質の問題かなぁ?」

「素質ってナニ?」


 小柄ちゃん曰く、魔法行使にも素質があるらしく、素質が低いとスキルの伸びに影響が出るとのこと。

 それと、突出した素質は特性と称されてステータスプレートにて可視化されるという。

 同様にスキルもある程度使用できるレベルに達すると可視化されるらしい。


「というわけで、午後から検査に行くからね?」

「なるほど、ここ一週間での成長度を確認するのか」


 炎の魔法を練習している途中で魔力の減りが異様に早いと思ったら、もらった魔道具がONのままだった。

 まぁ、魔力を使い切る目的とすれば問題ないか……そのままにしておく。

 魔力切れの時に飲む草の味のする小瓶が、いつの間にか中瓶になっていてちょっと辛い。

 隣で練習している背の高い魔道士も小瓶を飲んでいるが、飲み終えたあとの顔がちょっと複雑だ。コレが不味いのは共通感覚だな、うん。


「しっかし、まぁ……威力調整に魔力を注ぎ込んでも全然凄くならないのな」

「そうだね、ちょっと本気で素質がないのかも?」


「それは言い過ぎだろ……泣くぞ?」

「あ?え?仕方ないのよさ?」


「という訳で……何に素質があるか解らんから、今回は土の魔法陣を持ってきた」

「あらあら、ヤル気のある事ですね。評価が上がりますよ?」


 土の魔法の基本は地面の起伏を操作することで、穴を開けたり出っ張らせたりと面白そうだ。

 試しに小柄ちゃんが土の魔法を使ってみると、長さ2メートル程の柱が突出した。

 アレを足元で発動されて股間にでも当たろうモノなら……考えるだけで悶え死にそうだ。


「んじゃ、オイラも早速やってみますか」


もぞっ……


 なんだかモグラが出ますよ?って感じの盛り上がりができた。あれ?オイラの魔法の成果か??

 まぁ、最初なんだから仕方ないと思いつつ午前中は土の魔法だけに没頭する。


「あー、もしかしてオイラに土の魔法も素質無しか……」

「でも、まだ残りの属性もあるから頑張って?」


 午前中の訓練も終わり午後は検査かと思ったが、開始時刻が夕方だと知らされた。

 それまでの時間は身体強化魔法を自分で使えるように頑張ってみた。


「えっと、発動しない……?」

「それは、単純に魔力が弱いから逆流して……戻ってる?珍しい現象なのよさ?」


 なるほど、破壊されるレベルの魔法行使じゃないってか……コッチも素質無しってか。


「魔力が減らず、魔法陣も壊れないってなら連射だ!」

「頑張って精進するのよ?」


 検査の直前まで身体強化魔法を軽く4桁を超えるであろう回数で使い倒した。

 今回、ガリガリと削り取られたのはオイラのプライドだった。


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