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勇者36番  作者: ハムリンゴ
第一幕:急に呼ばれて、困ってしまう件について。
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10) 選んでみたのね。

「ほほう、魔法に階級とかあるのか?」

「ううん、隷属階級の人が好んで使うって意味よ?」


 小柄ちゃんの豆知識(その3)が披露される。

 重力制御の魔法は荷物運搬時に荷重を軽くするために使用するケースが多いという。

 また、大きな荷物を持つ、運ぶというのは隷属の仕事であるという理念まである。

 さらに、魔法的な属性が無いために誰でも使える“無の魔法”という位置付けまで成されている。

 要は隷属が使用する属性の無い魔法なんて使えるか!ってイメージなのだそうだ。

 生活魔法と呼ばれる簡易的な魔法も無属性魔法が多く、上流階級には不人気らしい。


「オイラ的には、身体強化魔法と組み合わせれば歩く程度は可能と思うんだよなぁ」

「なるほどね、その魔法陣が必要なワケね?」


「できれば、全軸同時入力方式……でいいのかな?一度触れると発動や停止が可能なヤツで」

「了解、作ってみるのよさ?」


「作ってみる……って誰が?」

「私よ?一応、魔法陣構築は一通りできるのよ?」


「すげー、そんな事まで出来るんだ?やるなぁ……」

「でしょ?褒めて褒めて、もっとほめて~!」


 仔犬のように体を揺すって喜ぶ小柄ちゃん。

 それにしても、権威者なのに威厳の欠片も見られないって……ある意味すげーよなぁ。


「それじゃ、明日持ってくるね?」

「おう、よろしく頼みますわん」


 夕食の時間になり、小柄ちゃんは出て行った。

 午後からの解呪生贄のバイトの後に身体強化魔法も受け、少々は動ける。

 そのお陰で1時間は掛かっていた食事が10分程度で完了した。

 そして、夕食後の小柄ちゃんの解呪スキル上げ開始までに30分以上時間が余る。


「何しようっかな~?」

(おっと……独り言じゃないか)


 オイラはちょっとした恥ずかしさを覚えながら、魔法陣が描かれた羊皮紙に視線を移す。


(そういや、アレって魔導書って言ってたなぁ。挟むんだっけ?)


 続けて先日オイラに特攻してきた(?)魔導書を手に取る。

 相変わらず、頑として閉じたままだ。


「どうやって、魔法陣を挟めば良いんだか……」


 独り言も気にせず、手に魔導書と魔法陣を取り上げる。

 魔法陣を挟み込んで、バインダーやスクラップブックの様にするらしい。

 もしかすると、開かないなら魔法陣を押し付けたら吸収するかも……と思い重ねて見ると。


ばふん!

「うおっ!?」


 魔法陣が喰われた、見事な噛み付きっぷりで。

 魔導書が魔法陣を『食べた』。まるで、啜る様に取り込んだ。

 そして……『んぺっ』と吐き出した。よく見ると、魔法陣の無いクチャクチャになった羊皮紙だった。


「うぉおおおおお!?」


 ひと呼吸置いて、オイラは叫んだ。信じられないが魔導書は魔法陣を『喰った』。

 しかも、羊皮紙に描かれた魔法陣の模様だけを。

 ふた呼吸して、興味が湧いた。


「まだ、食べるか……な?」


 適当に選んだ魔法陣を魔導書に投げる。


ばふん!


 未知の生物に出会ったかの如く、恐る恐る幾つかの魔法陣を食べさせてみた。

 どうやら一度食べた同じ魔法陣は食べないが、その上位は食べるという事に気付いた。


「おおう、オヌシもグルメよのぉ……」


 なんだか餌付けしている様で、段々と楽しくなってきた。


「入るね~?」


 小柄ちゃんがコンコンとドアを叩くと同時に部屋に入ってきた。ノックする意味がないよな……


「食事はすんだかな?準備するよ~?」

「なぁ、この魔導書……凄いんだが!」


「当たり前じゃん、レア素材で作られているのよさ?」

「いや、そうじゃなくて……コレ、魔法陣を食べた」


「はい?ソレが魔法陣を食べたって意味?」

「そう、バクっと食べた!」


 そう言って、まだ取り込んでいない種類の魔法陣を魔導書の上に乗せた。


「……?」

「……」


 何も起きなかった。


「……で?」

「おお?さっきは食べたのに、何故にっ!?」


 魔導書を持ち上げてみる、変化なし。

 強く振ってみる、変化なし。パンパンと叩いてみる、変化なし。

 頭の上に掲げてみた段階で、小柄ちゃんが冷たい視線でオイラを射抜いた。


「さ、どーでも良い事は置いといて、私の解呪レベル上げに付き合ってよ?」

「おっかしいなぁ?ほら!食べた後に出すものも出したんだけど……」


 すっかり相手にしてくれる素振りも見せなくなっていたので、渋々オイラは解呪スキル上げの生贄になる。

 そして、淡々と魔道具が切れるまで解呪を受け、続けて気不味い雰囲気はそのままで掃除を始める。


「また明日ね~。そうそう、無の魔法陣は朝にはできると思うから持ってくるのよさ?」


 小柄ちゃんはヒラヒラと手を振りながらドアを閉め、出て行った。


ごっ!


 閉めたと同時にオイラはいきなり誰かに鈍器の様な物で殴られ、意識を失った……


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