09) イイコト思い付いたのね。
そして、伝説が始まる。
その呪いを解くことができれば、国家級の解呪師になれるらしい。
数多の魔術師が、その呪いに挑戦しようとする。
その代償は手数料であり、挑戦する魔術師のプライドと同等の価値とする金や品物。
使用できる魔法陣や魔道具に制限無し。
何度でも挑戦可能。
「謳い文句は素晴らしいんだが……」
午前中は魔法の特訓、午後は解呪の生贄、夕食後は小柄ちゃんの解呪スキルのレベル上げに付き合う。
まったく隙のないスケジュールを1週間ほど過ごした。
オイラ的には炎の魔法……と言っても焚き火レベルだが、使えるようになった。
慣れるまでは同じ魔法を使ったほうが良いという方針で、火と炎しか使っていない。
生贄としてのバイト代(貢物)は部屋の片隅どころではなく、圧迫し始めていたが意外なトコロで解決に至った。
ガタイ君の実家が商家という事だったので、その伝手で貢ぎ物を換金することができた。
また、使えそうな魔道具や羊皮紙(魔法陣)はちゃんと取ってあり、結構な種類が揃った。
小柄ちゃんはチャッカリ挑戦作業のマージンを取っており、その金でガタイ君の実家から解呪用魔道具を安く仕入れている。
見たところWIN-WINの関係ってヤツか。
いや、そうでもないか……解呪できると大口を叩き、失敗してプライドがズタボロになったヤツも何人か居たな。
その解呪とヒトクチに言っても手法は様々で、余程危険な行使で無ければ執り行っている。
危険かどうかは小柄ちゃんが判断しているようだ。
相変わらず高周波帯の声を額から出してる感じだが、見た目と違って権威者らしい。たぶん。
挑戦者達は、当初は軽い気持ちで挑戦していた様で、どう見ても余ったものとか必要が無くなったモノが捧げられていた。
しかし、後半にもなると本気で取り掛かってきた。
品物を見ても価値は解らんが、挑戦者が持ち込んだ物を意気揚々と説明する場合は高価な貢物と思われる。
そのうち、全魔力を注ぎ込んで倒れるとか、奇怪な踊りでガタイ君を魅了して強制退場させられる者まで来る始末。
あまりにも本気モードで挑戦してくる魔術師を見て、小柄ちゃんが制限を掛けたくらいだ。
「私の本気モードは最初やったんだけどねぇ、ダメだったのよさ?」
「なんじゃそりゃ?」
「だから、キミに解呪魔法を最初に掛けた時が本気モードだったワケよ?」
「それ以降は何だったんだ?」
「それはスキルレベル上げの為の練習よ?」
「本気で解除してくれよ……」
「だって、本気で無理だったのよ?どうしようも無いじゃない?」
「あぁ、そういうことか……すまん、気付かなかった。今回の件にしても、色々と有難うな」
敢えて追求せずに感謝の気持ちを表すと、やはりツンデレモードが発動したようだ。目線が泳ぎ、顔を伏せ、モジモジする。
「べ、別に礼なんて、要らないの、よ?こっちも、利用させてもらってる、ワケ?だし?」
「そうか、んじゃお礼は取り消す」
「えっ!?取り消さなくてもいいじゃないのよ!?」
「ワケ解らん方向になってきたな……」
などと話をしていると、夕食の時間が迫って来たので小柄ちゃんは掃除を始め出す。
床に散らばるゴミをイソイソと小袋に回収する姿に何か違和感があった。
そういえば、前にも小さな袋に大量のゴミを詰め込んでたな。
「どんだけ入るんだ?その袋」
「これ?この部屋位の荷物なら入るんじゃない?」
「なんちゃらポケットみたいだな……」
「そのポケットは知らないけど、精霊付きの袋よ?」
「精霊とは、またロマンだな」
「ロマンは解らないけど、便利なのは確かよ?」
小柄ちゃんの豆知識が披露される。
精霊付きの袋というのは魔道具であり、レア物品らしい。
曰く、魔力で精霊界と繋がっており、一部を借りてそこに仮置き出来るとのこと。
ただ、仮置き中の物品を精霊にイタズラされる事もあるそうだ。
落書きとか中身入れ替えとか、時には物品自体無くなったり。
教訓、精霊付き袋には重要なものは入れちゃマズイと。
「ゴミは入れても無くならない、ってか?」
「ゴミじゃないよ?集めて燃やして残った金属がまた使えるのよ?」
「ほほう、リサイクルってやつか。すごいなぁ、こっちにもあるんだ」
「さっきからワケ解んない言葉があるのよさ?」
小柄ちゃんの豆知識(その2)が続けて始まった。
魔法陣は魔力を通す金属が入ったインク、或いは金属そのもので描く。
物理的に壊しに掛からない限り、魔法の使用で壊れることは稀。
魔法陣が壊れる理由として、魔力の逆流や魔力の超過注入などがある。
逆流とは魔力で無理矢理捻じ曲げた現象が、具現化することが出来ずに戻って来る事。
超過注入とは、魔法陣の許容量を超えた魔力の注入の事を指す。
今回、オイラの部屋に散らばった魔道具の成れの果ては、逆流によるものらしい。
呪いを解くために魔法陣を通して出た力が、解けないまま行き場を失って魔法陣に戻る……と。
そして、魔力は力場となり魔法陣自体を粉砕するって……何か怖いぞ?
「話を戻して、だな……解呪が難しいなら、現状をできるだけ良い方向にしたいんだが……」
「何か良い案でも見つかったの?」
話を戻せたかどうかは解らんが、最近手に入れた魔道具によって得た知識を持ち出してみた。
その魔道具は所謂メガネであり、効果は“解読”だった。
会話は忌々しい腕輪のおかげで何とかできていたが、文字の方は読めなかった。
それが、“解読”の魔道具で文字を認識できるようになった。
これも手に入れた魔法の解説書を読むにあたって、色々な魔法形態があることも解ってきた。
そして、自分の身体に起こった現象を打破できないかと調べてみると、良いものが見つかったわけだ。
「身体強化魔法で足りないなら、身体を軽くしてみれば良いんじゃないかと思ってさ」
「風の魔法で浮いてみるの?」
「あぁ、そういうのもあるのか……オイラが見たのは重力制御の魔法だ」
「あ……無の魔法ね。あまりお薦めできないけど?」
「何故に?身体が軽くなれば色々便利だと思うんだが?」
「だって、隷属階級の魔法なのよさ?」
「なんじゃそりゃ?」




