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河川敷にて  作者: 村上しのぶ


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7/13

みんな立派なのがいいんですかね?

 しばらく歩くと、野球場が見える場所まできた。


 私は練習風景が見えないかと思ったが、流石にこの時間に外で練習している選手はいなかった。


 我々は木陰を選んで芝生に座ると、持ってきた缶ビールを開けた。


「なんかこういう風景を見ると、落ち着きますね」

 と、私は野球場を眺めながら、永遠に対して言うように言った。


「本当です。でも、ここももうすぐ引っ越しちまうみたいですよ」

 と、滝村さんは言った。


「え、そうなんですか。どこに?」

「なんでも、茨城の方に立派な施設を作ってるんだそうです」

「立派な施設、ですか……」


 私はがっかりして、目を落とした。


 足元の芝生では、アリたちの解体作業が行われていた。

 体が半分になったバッタが、カラカラに乾いていた。


 私はビールをゴクゴク喉に流し込んだ。もうぬるくなっていた。


「また一つ、昭和が消えますよ」と滝村さんは遠くを見ながら言った。「昔は良かったですよ。私はこっちに来る前、子供の頃は、多摩川べりに家があったんです。よく河川敷に行っては、野球の練習を眺めたものですよ。あの頃はよかったなあ。巨人も日本ハムも、河川敷だったんです」


「最後に残った聖地が消えますね」


「みんな立派になっていきますね」

 という滝村さんの台詞は、誰か別の人に言うみたいだった。


「みんな立派なのがいいんですかね?」

 私は中途半端に、指でビールの缶を凹ませた。まるで子供が拗ねているみたいだな、と思った。


 生暖かい風が、ひゅうっと首筋を撫でていった。


「ねえ、滝村さん」

 と、私はおもむろに話題を変えた。そうしてもいいような気がした。別に、会話があっちこっち飛んだっていいじゃないか。そんなことしたって、風が咎めるわけでもなし。


「過ぎちゃいましたね、7月5日」

「ああ、そういえばそんなこともありましたね。私も過ぎてから気づきました。あれ、なんだもう過ぎてるじゃないかって」

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