ナメクジは壁を這い上がろうとしているが、塩が待っている。
なんてことをぼんやりと考えながら歩いていたが、考えはまとまらなかった。
仕方ない、この暑さなんだ。
と、私はそう思うことにした。
そのうちに例の角に来て、私は人の少ない方へ曲がった。
はたして向こう側に曲がった人たちは、本当に幸せなのだろうか、と思った。
改めて考えてみると、そうとは言えないような気がした。
本当に幸せな人は、こんなところで駅を降りたりはしないのだ。
政治の正解はわからないが、それが答えであることは間違いないような気がした。
ハローワークに着いた私を、生ぬるい冷気が出迎えてくれた。
私はいつもここに来ると気分が悪くなった。
なんだか自分が、100メートルもある壁を這いあがろうとしているナメクジになったような気分になる。
焦ったさと後ろめたさが交互にやってきた。
私は間違った方向に進もうとしているんじゃないだろうか。
私が進むべき道は、目の前の壁じゃないところにある。
そんな気になるのだが、ではどこにそんな道があるのか、探しても見つからなかった。
目の前の100メートルの壁以外に、行ける道はないような気がした。
でも、苦労して100メートル登り切った先には、塩が待っているかもしれないのだ。
いや、私はそれ以前に壁を登り切れないのではなかろうか。
しばらくの間、パソコンを使って求人を検索した。
いや、検索しているフリをした。
また後ろめたさが、今度は別の後ろめたさがやってきた。
驚くべきことに、後ろめたさにも種類があるのだ。
まあ、いいさ、と思うことにした。
熱中症にかかるよりはマシだろう。
私はそのまま昼近くになるまでそこにいた。




