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焼け跡から続く光〜薬師の私を攫ったのは、人間嫌いの獣人でした。  作者: 不津倉 パン子
後編 未来を見つめて

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57/58

決着

リコリスは、初めて人を殺した感覚に全身を震わせる。命を奪うという行為は想像を絶するほど重いものだった。


こんなに憎い相手でも、胸が締め付けられるように苦しくなる。


「クロウさん…私…私…」


言葉にならない言葉が、リコリスの口から洩れる。


手の震えが止まらない。


そんなリコリスに、霊獣の姿のクロウが寄り添った。彼の温かい毛並みが、リコリスの震える身体をそっと包み込む。


「お前、本当に優しいんだな。俺も、お前を愛していて良かった。」


クロウの声は、いつもより低く、そして優しく響く。彼の声と温もりによって、リコリスは少しずつ落ち着きを取り戻していく。


しばらくすると、クロウが何かを感じ取ったように呟く。


「そろそろ…だな」


霊獣化が解け始めているのだ。

クロウの身体から、神々しい光が薄れていく。


「悲しむ事はない。お前が目になってくれるんだろ?」


クロウはリコリスを見つめ、優しく微笑みかける。


その言葉に、リコリスはハッとする。彼女は、クロウの目を治すと誓ったのだ。悲しんでいる暇はない。


「はい!必ず、目を治してみせます!」


リコリスは、クロウの言葉に応えるように、明るく答える。


「今度は上手に笑えてる。ありがとう、リコリス」


クロウは満足そうに目を閉じる。


光が消え、人の姿に戻った。 霊獣化が解け、人の姿に戻ったクロウの目は濁っていた。


リコリスの方に顔を向け、頭を撫でながらため息をついた。


「だから泣くなって…」


リコリスは、クロウに泣いていることを指摘され、驚いて顔を上げる。


「どうして分かるんですか…?」


彼女は、自分が泣いていることにさえ気づいていなかった。


「どうだっていいだろ?あー疲れた…帰るぞ。」


クロウはいつものようにぶっきらぼうな口調で言い、リコリスを促す。


リコリスは、クロウを支えながら、村へと帰還する。彼の身体はまだ少し熱を持っているが、その温かさが、リコリスの心を温める。


ふたりは互いを支え合いながら、ゆっくりと歩を進める。 これからどんな困難が待ち受けているか分からない。しかし、リコリスとクロウは、決して諦めない。彼らは、愛と希望を胸に、未来へと向かって歩み続ける。


ーーーーー


手配した馬車は、ゆっくりと田舎道を進んでいた。


揺れる車窓の外には、懐かしい風景が広がっている。なだらかな丘、穏やかに揺れる麦畑、遠くに見える小さな村の屋根。


「……帰ってきましたよ。」


リコリスがそう呟くと、隣に座るクロウは小さく息を吐いた。


「ああ。ようやくだな」


それだけの短い言葉だったが、そこには長い旅路のすべてが詰まっていた。命を賭した戦い、失ったもの、選び続けた決断。


それらをすべて抱えたまま、

それでも――帰ってきたのだ。


村の入口に馬車が止まると、先に気づいた子どもたちの声が響く。


「クロウ兄ちゃんだ!」


「リコリスさんもいる!」


次々に人が集まり、やがてカイルをはじめとする顔なじみの村人たちが二人を囲んだ。


「無事でよかった……噂は聞いていたぞ。大変だったな。」


その温かな声に、リコリスは胸がいっぱいになり、何度も頭を下げた。クロウは少し照れくさそうに、しかし誇らしげに立っている。


こうして、二人の新しい生活は始まった。

次回最終回です。

本日22時30分に投稿します。

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