ふたり旅
ついに最終章が始まります。
リコリスとクロウの旅も、最後の道へと進みます。
危険や困難が二人を待ち受けていますが、
これまでの絆が彼女らを支えます。
次の日の朝。
目を覚ますとそこにクロウはいなかった。
簡単に身支度をし外に出ると、目隠しをしたクロウがトレーニングをしていた。
大きな岩を投げ、そこにナイフを命中させる。砕け散り振り注ぐ石の礫を感覚を頼りに避ける。
見るからに危険なトレーニングに励むクロウの姿に見惚れていると、こちらに気が付いたクロウが目隠しをしたまま声をかけてきた。
「リコリス…眠れたか?」
「はい!……それよりこのトレーニングは危険過ぎませんか?心配です…目隠しなんてやりすぎですよ!」
リコリスはクロウの身を案じた。
「敵は手加減なんてしてくれねぇからな。」
目隠しを外し、こちらを見て笑うクロウ。
——否、正確には「こちらを向いた」だけだった。
それでも、彼は迷いなく微笑んだ。
優しい眼差しに、リコリスの胸がざわめく。
その理由を、彼女はまだ言葉にできなかった。
クロウが口を開く。
「そういえば…お前たちが過去を改変したからだろうか、記憶が曖昧なんだが…レインはおそらく生きてるぞ。」
クロウのとんでもない一言に、リコリスは驚きを隠せない。レインは死んだと聞かされていたからだ。
「…会いたいのか?」
声は低く、感情の起伏が読み取れない。だが、なぜかその一言には、微かな棘が混じっていた。
「もちろんです!大切な仲間ですから!」
リコリスは目を輝かせた。レインは、リコリスにとって、かけがえのない仲間だ。彼が生きているというのなら、会って話がしたかった。
「なら、明日からリオン達とは別行動だ。それと、リオンにはこの事を言うなよ?」
秘密にする理由はよく分からないが、リコリスはクロウの言う事を受け入れる。彼の言葉には、何か特別な意味があるのかもしれない。
ーーー
リコリスとクロウは、リオン達と別れる。
リオンは少し寂しそうだったが、リコリスの決意を尊重してくれた。ふたりは人目を避けるように、静かに村を後にする。
久しぶりのふたりきりでの旅。リコリスは、クロウの隣を歩きながら、胸が高鳴るのを感じる。
「きれいですね、この湖……」
リコリスがそう言うと、クロウは遅れて頷いた。
「……ああ。森は、変わらないな。」
クロウと再び歩ける事が、何よりも幸せだった。
「前行った亜人の村…覚えてるか?あそこに行く。」
クロウが、行き先を教えてくれる。リコリスは、少し驚いた表情で尋ねる。
「カイルさん達が住んでいるあの村ですか?」
クロウは静かに頷く。
あの村は、かつて勇者を輩出した場所。しかし、魔王軍の襲撃によって、一夜にして滅ぼされてしまった。リコリスは、クロウと一緒に、あの村を訪れたことを思い出していた。
一体、あの村とレインに何の関係があるのだろうか。 リコリスは、クロウに尋ねる。
「あの村に、レインさんがいるんですか?」
「…わからない。だが、何か手がかりがあるかもしれない。」
クロウは、詳しいことを話そうとしない。リコリスは、それ以上何も聞かなかった。
クロウには、何か考えがあるのだろう。彼女は、クロウを信じて彼の後を追うことにする。
ふたりは森の中を歩き続ける。木々の間から差し込む光が幻想的な風景を作り出している。
リコリスは様々な薬草や植物に目を向ける。クロウは周囲を警戒しながら、リコリスを守るように歩いている。
時折、ふたりは言葉を交わす。それは、他愛のない世間話だったり、過去の思い出話だったりする。
しかし、どんな会話も、ふたりの距離を縮めていく。 彼の隣にいるだけで、心が温かくなる。
この幸せがいつまでも続くように
この旅を続けていこうと思った。
最終章へ進むにあたり、
ここまで読んでくださった皆さまに感謝します。
ふたりの旅路の結末はまだ描かれていませんが、
最後までお付き合いいただければ嬉しいです。
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