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焼け跡から続く光〜薬師の私を攫ったのは、人間嫌いの獣人でした。  作者: 不津倉 パン子
中編 進んだ先は過去

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処刑台

王都へ続く街道を、リコリスたちは走っていた。


息が切れ、足が重い。

それでも、止まれない。


遠くに王都の城壁が見えた瞬間、胸の奥が強く締め付けられた。


「どうか……間に合って…ください…」


祈るように呟いた。


たどり着いた城門前には、異様な数の兵士が配置されている。槍を構え、目を光らせ、誰一人として通す気配がない。


……処刑が近い。


誰の目にも、それは明らかだった。


リオンは短く息を吸い込み、二人を振り返る。


「正面突破しかない。」


迷いのない声だった。


「僕が兵士を引き付ける。その隙に、二人でレインを助けてくれ。」


「待って!」


リコリスの声が震える。


「そんなの……危険すぎます!他に方法が……!」


リオンは、リコリスの肩にそっと手を置いた。


「大丈夫。」


優しく、しかし強い目で。


「僕は勇者だ。……信じて。」


一瞬、言葉を失ったリコリスだったが、唇を噛みしめて頷くしかなかった。


「……必ず、戻ってきてください。」


「お互いね。」


その言葉を最後に、リオンは城門へと駆け出した。


ーーー


王都の広場は、地獄だった。


人、人、人。

歓声と罵声が渦を巻く。


広場の中央――

木の台に、磔にされた一人の男。


「……レインさん……!」


リコリスの喉から、声にならない悲鳴が漏れた。


衣服は裂かれ、血と泥にまみれている。

顔には無数の殴打痕。

頭は垂れ、意識があるのかすら分からない。


「裏切り者!」

「勇者様を殺した罪人だ!」

「死ね!死ね!」


石が飛ぶ。

腐った野菜が投げつけられる。

怒り狂ったかのように罵声が浴びせられている。


――人々は、裁きを下した気になって楽しんでいた。


その瞬間、城門前が騒然とした。


「何者だ!」


兵士の叫びと同時に、聖剣の光が閃く。


「レインを解放しろ!」


リオンの声が、広場に響き渡った。


兵士たちが一斉に彼へ向かう。

剣と槍がぶつかり合い、金属音が空気を裂く。


「今だ!」


クロウが低く叫び、リコリスの背を押した。


二人は人混みをかき分け、処刑台へと駆ける。


石が飛び、罵声が降り注ぐ。


「裏切り者の仲間だ!あれは人外じゃないか!」

「一緒に殺せ!」

「死ねヒトモドキ!!」


リコリスは震える手で縄に触れた。


「レインさん……!」


指が滑り、結び目がなかなか解けない。


「……もう……いい……」


レインのかすれた声。


「……ここで……死なせてくれ……。」


「ダメです!」


涙が視界を滲ませる。


「あなたは……何も悪くない……!」


その瞬間。


――ゴンッ。


投げつけられた石が、リコリスの肩に当たった。


体がよろけた次の瞬間、

黒い影が前に出た。


「……黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって。」


クロウだった。


リコリスとレインを背に庇い、漆黒の剣を抜く。


「人間の外道さには……もう、うんざりだ。」


兵士たちが、一瞬たじろいだ。


剣から溢れ出す、禍々しく黒いオーラ。

それは明確な――殺意だった。


「さっさと逃げろ。」


低く、凍りつく声。


「ここは……俺が引き受ける。」


「クロウさん……!」


「行け!」


その一喝に、リコリスは歯を食いしばり、レインの肩を支えた。


ちょうどその時、リオンが合流する。


「こっちだ!」


一瞬だけ視線を交わす。


――生きて帰る。


その想いだけを共有し、リコリスとリオンはレインを連れて森へと走り出した。


背後で、剣が振るわれる音。

兵士の悲鳴。

そして、恐怖に染まった叫び声。


「ば、化け物だ……!」


黒いオーラが広場を覆い、兵士たちは次々と倒れていく。


森の中を、必死に駆ける。


枝が頬を裂き、足がもつれる。

それでも、止まれない。


背後から、まだ怒号が追ってくる。


――クロウは、今も戦っている。


リコリスは歯を食いしばり、ただ前を見た。


「絶対に……」


声は、震えていた。


「……絶対に……みんなで……生きて……」


その祈りが、闇に飲み込まれていく。


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