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悪と呼ばれたネクロマンサー 〜拾えない命を拾うために、僕は悪を選んだ~  作者: よすが


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第79章「残灯の砦で起きていたこと」


 朝は、静かだった。

 七日の期限は、昨日で切れていた。

 砦の門前に、

 整列した兵が立つ。

 白と灰の外套。

 協会の印。

 王都正規軍の装備。

 剣は抜かれていない。

 声も荒れていない。

「残灯の砦の住民に告げる」

 落ち着いた声だった。

「当砦は、

 ネクロマンサーを匿い、

 協会命令に背いた」

「よって、

 本日をもって

 強制退去とする」

「抵抗が確認された場合、

 鎮圧に移る」

 砦の中。

 人は、動かなかった。

 誰も前に出ない。

 誰も逃げない。

 ただ、

 クロがいないことだけが、

 そこにあった。

 レインが一歩前に出る。

「……退去せえ、

 言うたんやな」

 兵は頷く。

「最終通告は終わっている」

 カイが、

 弓を握る。

「兄貴」

「分かっとる」

 二人は、

 同時に後ろを振り返った。

 ミケ。

「……行け」

「え?」

「今すぐや」

 レインは笑った。

「走れ。

 振り返るな」

 カイが、

 ミケの背を強く押す。

「クロを、

 連れ戻せ」

「……嫌や!」

「嫌でもや!」

 矢が放たれた。

 空を切る音。

 兵が動く。

 その瞬間、

 レインとカイは前に出た。

 数では勝てない。

 分かっている。

 それでも、

 止まる理由はなかった。

 剣が、

 レインの胸を貫いた。

 血が跳ねる。

 カイの頬を濡らす。

 カイは、

 兄を見なかった。

 最後の矢を放つ。

 兵の喉に刺さる。

 次の瞬間、

 カイの身体が斬られた。

 崩れ落ちる。

 ミケは、

 泣きながら走った。

 背後で、

 何かが崩れる音がした。

 ヨルは、

 盾を構えていた。

 前に出ない。

 下がらない。

 ただ、

 人の前に立つ。

 剣が、

 盾を叩く。

 一撃。

 二撃。

 三撃。

 膝が折れる。

 それでも、

 盾を離さなかった。

「……下がれ!」

 誰かが叫ぶ。

 ヨルは、

 首を振った。

 次の一撃が、

 彼女を吹き飛ばす。

 盾を抱いたまま、

 崩れ落ちる。

 動かなかった。

 フェイは、

 レオを抱いていた。

「大丈夫や」

「お母さん、

 ここおる」

 剣が、

 フェイの背中を裂いた。

 声は、上がらない。

 倒れながら、

 レオを包み込む。

 刃が振り下ろされる。

 土煙が上がる。

 何が当たったのか、

 誰にも分からなかった。

 医者の助手、サラは、

 患者の前に立った。

「……行きなさい」

「私は、

 ここで」

 剣が振るわれる。

 血が飛ぶ。

 サラの身体が揺れる。

 それでも、

 倒れなかった。

 逃げなかった者たちは、

 逃げなかったまま

 倒れていった。

 鍬を持った老人。

 石を投げた女。

 子を庇った男。

 戦いではなかった。

 処理だった。

 砦が、

 静かになる。

 煙が、

 空に上がる。

 兵の一人が言った。

「……終わったか」

 返事はなかった。

 そこに、

 ネクロマンサーはいない。

 ただ、

 守ろうとした人間の

 死体だけが残った。

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