第74章「判決」
王都。
石の建物の中は、
冷えていた。
クロは、
鎖をつけられて立っている。
拘束は乱暴じゃない。
扱いは丁寧だった。
「被告、クロ」
裁きを告げる声。
協会の者。
王都の役人。
そして、
勇者側の立会人。
勇者本人はいない。
それが、
余計に現実だった。
「ネクロマンサーとしての
能力保持」
「及び、
未登録の魔具(杖)の所持」
「さらに――」
紙がめくられる。
「要管理区域における
能力行使の記録」
クロは、
口を開く。
「……人を救った」
「助けた」
裁く声は、
否定しない。
「救命の事実は
認める」
「功績も
記録されている」
だからこそ、
次の言葉が重い。
「しかし」
「死霊術は
禁止体系である」
「理由は
悪意ではない」
「制御不能の危険が
社会秩序を
崩し得るため」
クロは、
目を伏せた。
知っている。
最初から。
「判決」
空気が止まる。
「被告を
“危険存在”として拘束」
「処遇は、
公開処刑を原則とする」
その言葉は、
静かに落ちた。
怒号はない。
歓声もない。
ただ、
手続きの終わり。
クロは、
息を吐いて言う。
「……砦は」
役人が答える。
「残灯の砦には
通達が出る」
「非戦闘員の
段階的退去」
「自治の解散」
「七日の猶予をもって
退去を命じる」
「期限を過ぎて
従わない場合は――」
言葉が、
硬くなる。
「反乱拠点として
鎮圧対象となる」
クロの胸が、
少しだけ痛んだ。
自分のせいで。
また、誰かが。
だが。
勇者側の立会人が、
淡々と告げる。
「勇者殿は
“選択肢”を与えた」
「退去すれば
命は奪わない」
「英雄が
無辜を斬ることはない」
それは、
正しい。
正しいからこそ、
逃げ道がない。
クロは、
目を閉じた。
灯りを残せと
言った。
消すなと
言った。
(……間に合わんかもしれん)
それでも、
自分の手で
風を呼んでしまった。




