第66章「測る人」
昼。
残灯の砦の門前に、
見慣れない三人が立っていた。
白と灰の外套。
武装は最小限。
「……聖具協会です」
名乗りは、それだけ。
クロは、一歩前に出る。
「……用件は」
「調査です」
感情はない。
「北東戦場における
魔力波形の確認」
ヨルが盾に手を添える。
構えない。
ただ、離さない。
「……敵意は?」
「ありません」
「本日は確認のみ」
砦の中。
調査官たちは、
物資庫、
見張り台、
焚き火跡を
淡々と見る。
「……人は多いですね」
「……数十から百規模」
「避難所では?」
「……違う」
クロは短く答える。
調査官は記す。
「“選んで残った”
という理解で?」
「……そうや」
ミケが口を挟む。
「安全やからおるんちゃう」
「危ないって分かってる」
調査官は一瞬だけ顔を上げた。
「……承知」
やがて、一人が地面に膝をつく。
「……死霊系統、残留反応」
空気が張る。
「……説明を求めます」
クロは否定しない。
「……人を逃がすために使った」
「被害は」
「……最小限」
調査官はうなずく。
「目的は理解できます」
「ですが」
「協会規定第七条」
「死霊術は管理対象」
「善悪の問題ではありません」
「秩序の問題です」
誰も、反論しない。
やがて調査官は立ち上がる。
「現時点で処分はありません」
「ただし」
「監視対象として記録します」
門を出る前、振り返る。
「……ここは」
「人が集まりすぎている」
「均衡は、
人数から崩れます」
忠告だった。
脅しではない。
三人は静かに去った。
しばらく、誰も口を開かない。
ミケが笑ってみせる。
「……思ったより普通やったな」
「……普通が一番怖い」
ヨルが答える。
クロは門の外を見ていた。
敵はまだ来ていない。
だが、
秤には乗った。
誰が重く、
誰が軽いか。
それは、
これから決まる。




