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悪と呼ばれたネクロマンサー 〜拾えない命を拾うために、僕は悪を選んだ~  作者: よすが


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第59章「把握」


 王都。

 白い部屋だった。

 装飾は少ない。

 地図だけが、

 壁一面に掛けられている。

「……報告です」

 兵が、

 一歩前に出た。

「北西街道沿い、

 旧砦跡に人の集まりが

 確認されました」

 机の向こうで、

 勇者は地図を見ている。

「……人数は」

「正確ではありませんが、

 数十から百規模かと」

 勇者の手が、

 地図の上をなぞる。

「……名は?」

「……“残灯の砦”と

 呼ばれているようです」

 その言葉に、

 部屋の空気が

 わずかに変わった。

「……残灯」

 勇者は、

 繰り返した。

「灯りが、

 残っている

 という意味か」

「はい」

「夜間も

 完全には消えないと」

 勇者は、

 否定も肯定も

 しなかった。

「……指揮系統は」

「不明です」

「軍事組織の形跡は

 ありません」

「武装も、

 限定的かと」

 勇者は、

 しばらく

 黙っていた。

「……避難民の

 集まりか」

「……はい」

「……指示は

 守られているか」

「王都の避難勧告は

 一応……」

 兵は、

 言葉を濁した。

「……一部、

 従っていない者が

 いるようです」

 勇者は、

 兵を見る。

 責める視線ではない。

 確認する目だった。

「……現時点で

 害はない」

「……なら、

 監視のみ」

「深入りは

 不要です」

 側近が、

 念を押す。

「……勇者様、

 ネクロマンサーの

 噂も……」

 勇者は、

 首を振った。

「……噂だ」

「……確認できるまで

 動く理由には

 ならない」

 それは、

 冷静な判断だった。

 誰も、

 反論しない。

「……ただ」

 勇者は、

 地図の一点を

 指で押さえる。

「……名前を

 持った場所は」

「人を

 集め続ける」

 側近が、

 息を呑む。

「……記録に

 残せ」

「……“残灯の砦”」

 その言葉は、

 命令だった。

 兵は、

 深く頭を下げる。

「……承知しました」

 勇者は、

 再び地図を見る。

 灯りは、

 まだ小さい。

 だが、

 消えていない。

「……今はまだ」

 勇者は、

 誰にともなく言った。

「……正義の

 邪魔ではない」

 その一言で、

 会議は終わった。

 勇者は、

 英雄のままだ。

 ただ。

 世界は、

 残灯の存在を

 記録し始めた。

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