89
「本当に?! 頑張ったじゃん!」
文化センターでの小人パート練習初日。
アリーシャは、本当にここで合ってるよねとか、勝手に入って大丈夫なのかなとか、そんな不安を感じながらそっと施設の扉を開けて、ロビーで小人役の数人と合流し安心していたところ、凛子もそこに合流したため、件の英会話部との打ち合わせ結果をそっと確認してみた。
練習場所を借りられる時間がまだ数分先だったため、周囲もなんとなしに雑談をしていたところだったのだが、アリーシャの声はちょっと大きくなってしまい、ちょっと気まずく口を押えて周囲に会釈をして声を抑えて会話に戻った。
「衣装の打ち合わせの時、向こうの部長とその幼馴染一年女子も来てさ、その子編み物が好きなんだけど作っても着てくれる人がいないから、衣装を編み物で作りたいんだとか言ってて、美緒莉と盛り上がっちゃってさ」
なんでもその子は、気に入った先で買い込んだ毛糸玉が家に大量の在庫としてあり、編み物で服を作って配ってもそんなにいらないと断られるくらいには作りこんでいたらしい。
沢山作っても誰にも迷惑をかけず、そして着てもらえるという今回の機会を逃さないためにも、衣装作りは最低限でいいと主張する英会話部女子と、毛糸の衣装だけでは無理があるだろうし、一人で作るのにも限界があるからちゃんと作ってもらった方がいいという英会話部男子でまさかの内部論争になっていたそうで、今回の打ち合わせは英会話部的にもありがたかったんだそうだ。
結局美緒莉が、衣装は演劇部の衣装班が作るとまとめ上げ、毛糸の衣装は小物として演劇部で使用する分と英会話部で使用する分を作ってもらうのはどうだろうかと提案し、大団円で打ち合わせは終了したのだとか。
「大変だったねえ」
「本当にねー、まああたしは話聞いてただけなんだけどさ。おかげで白雪姫の衣装がちょっと豪華になりそうよ」
小人たちにおそろいの付け襟が編まれたり、衣装にレースが加えられたりするらしい。
「その流れで美緒莉と、その英会話部の一年女子、吉川さんっていうんだけど、その二人が仲良くなっちゃってさ」
夏休み中に衣装班も学校の裁断室を開放してもらい衣装作りをすることが出来る日を確保したらしく、原先生指導の元来れる人が集まってやるという、お裁縫会の集まりにその吉川さんもどうかと誘ったらしい。
「非常に喜ばれて、その日が丁度夕方から夏祭りがある日とかぶっててさ、帰りに一緒に行こうって言うから、うちらと一緒に行くんじゃなかったのってあたしが言ったら、じゃあみんなで行こうって」
その吉川さんとその幼馴染である英会話部部長と、打ち合わせに来ていた悠紀と、そしていつもの四人で行こうという話になって、女子が多すぎて男子が気まずいからと後何人か誘ってという話になり、大人数になるならと英会話部の部長が、その時まだ売れ残っていた有料の桟敷席を予約までしてくれ、合計十人で夏祭りを楽しむという話になっているらしい。
「勝手にそんな流れになって申し訳ないんだけど、英会話部の部長にだけ桟敷席代出させるわけにもいかないから、後で集金してもいい?」
「勿論だよ。というかあそこって売ってたんだね、なんか関係者しか座れないのかと思ってた。凄く楽しみ」
金額を聞いたら、余っていた席ということもあり頭数で割るとそこまで高い値段でもなく、アリーシャとしては得した気分だったが、凛子からすると急にお金がかかってしまう話になってしまったので言い出しにくかったらしい。
「半分くらいあたしのワガママじゃん。あいつと夏祭り行きたいなぁってさ」
気まずそうにそう言う凛子は可愛かった。
恋をすると女の子は可愛くなると言うが、こういうことなのだろうと納得させるくらいの説得力があった。
「というか、凛子のワガママじゃなくて、美緒莉が英会話部と意気投合した結果じゃん」
「いや、あたしが誘導したとこもあるし、美緒莉は悪くないよ」
「どちらにしろ悪い話じゃないし、むしろ嬉しいから気にしないでいいよ。私去年は人混みでお神輿ちゃんと見れなかったし、楽しみだよ」
日本のあの神社とか、そういう神道や民間信仰の施設や神事には、何か独特な神秘のようなものを感じられてアリーシャは好きだった。
自分たちとは違う神様を信仰しているのだけれど、それが不思議で、少し怖くて、何故か魅力的なのだ。




