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英会話部が上げてきた衣装のリスト分と王子役の亜姫の採寸と衣装の準備が順調に行われ、アリーシャも亜姫の破壊力満点の顔にようやく慣れてきた頃、季節は梅雨が明け、夏も真っ盛りとなっていた。
蒸し暑くなってきた体育館、一学期の終わりと夏休みが近づいてくると、部活は一時お休みとなった。
原因は暑さではなく、期末テストだ。
テスト期間は部活もお休みとなる。
衣装班と大道具・小道具班はなんだか個人的に家に持ち帰り、ちまちま物を作っている人もいるようだが、テスト期間はテスト期間。
大っぴらに活動はできないのである。
かくいうアリーシャも、テスト勉強の息抜きに台詞読みをしたりしてしまっているのではあるが。
このテスト期間が終わったら夏休み。
夏休みに合宿などはないそうなので、テスト期間から夏休み明けまで練習が一切行われないということになる。
今まで積み上げてきたものが、抜け落ちてしまわないか、アリーシャは少しその空白が不安だった。
「小人班は夏休みちょっと集まって練習するって話出てるよ」
「ええっ、聞いてない!」
いつもの四人で集まりテスト勉強をしている時に、思わず漏らしたアリーシャの不安の声に対して、凛子は何でもないような感じでそう言った。
「なんか小人ズ結構仲良くなっちゃってさー、折角なら集まって練習しようぜって誰かが言ったら盛り上がっちゃって」
「ええー、私は?! 白雪姫だって登場するじゃん、誘ってよ!」
「あはは、そうだよねー。ちょっと聞いてみるよ、多分大丈夫だろうし」
凛子の言葉にアリーシャは喜んだ。
夏休みの合宿はないが、自主練として皆で集まるなんて、とても青春っぽい。
勿論練習に手を抜くつもりはないが、そういうイベントに胸をときめかせてしまうのは、性分であるから大目に見てほしい。
「夏休みといえばさー、お祭りあるじゃん。また皆で行きたいよねー」
テスト勉強のペンがなかなか進まないでいる美緒莉が、ノートに片頬を付け項垂れて、思い出したかのように言った。
去年経験した日本のお祭りというやつは、夏の暑さと独特の雰囲気と、果てしない人混みとで、いつもの日常が、いつもの景色が、いつもと全然違って見えて、それが神秘的で不思議で、本当にアニメの世界に迷い込んだかのような気持ちになり、非常にはしゃいだ記憶があった。
派手な神輿、屋台の食事、そして最後の花火。
記憶を辿るアリーシャの頭の中で、真っ黒な夜空に花火が音を立てて打ち上がり、大輪の花を咲かせた瞬間閃いた。
これは、あれだ。
いつもと違う浴衣姿で友達とお祭りに行った男女が、友達とはぐれて二人だけで良い感じの雰囲気になって、目と目が合って、どちらかが何か言おうとした時に花火が打ち上がって、その音で声が聞こえなくって、その後友達と合流できた時に、なんかいつもと二人がちょっと違う雰囲気になっていて、本当はあの時の言葉聞こえてたんでしょとかいう感じの、そんな感じのやつだ。
そんな感じのやつだ。
アリーシャがそんなことを考えている間にも、周囲は皆でお祭りに行く計画を立て始めていた。
アリーシャはこの会話の中で、いかにして自然に、悠紀もお祭りに誘うかを思索した。
ソロで誘うのは間違いなくおかしいし来てもらえない可能性も高い。
何なら悠紀が友達と夏祭りに来るなら偶然を装ってあちら側と合流するという方が理想的なような気もする。
「そういえばさ、英会話部って夏休み練習とかするのかなぁ」
アリーシャは悠紀の予定が知りたくて思わずそう口にしてしまったが、話の前後を考えると自分でも吃驚するほど話が変わりすぎて、これからこの話題をどう続けるべきか、三人の視線を受けて変な汗をかいた。
「そうだよ、テスト期間終わったら夏休みじゃん。追加の衣装の相談もしてなかったし、練習あるならお邪魔しないと!」
「ああ、じゃあその辺は私が場所を設けると言ったし確認しておくよ。あの大根っぷりじやぁ流石にまずいだろうから練習するだろうしね」
助かった。
美緒莉の衣装への情熱のおかげで、アリーシャの話が変な方向に行っていたことが違和感なく処理されたようだった。
なんとか凛子と悠紀が一緒に夏祭りに行けるように動きたいところではあるが、アリーシャが口を出したところで上手く事を運べる気がしない。
流れに身を任せる他ないのだろう。
人の恋路というやつに口を出すのはよろしくない。
そんな諺が日本にはあったはずだ。
その打ち合わせとやらで、なんとか二人の仲が進むことをアリーシャはただただ祈った。




