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久しく見ていない青空が恋しくなるこの頃、季節は梅雨の時期を迎えていた。
朝のニュース番組では傘の所持を促され、天気予報は傘か曇りのイラストが並んでいる。
日照時間が少なくなると、人は鬱になりやすいと聞くが、学校に通う生徒たちは昨今の空模様と関係なくとても元気だ。
演劇部の練習もゆっくりではあるが進んでいる。
まだパートごとに分かれての練習で、最初から最後まで続ける通しでの練習は行えていないし、台詞を間違えたり忘れたりで、あーだこーだと言っているが、本番まではまだかなり先だし、今は大きなトラブルもなく和やかな雰囲気で練習ができていることが何よりといったところだろう。
衣装の方は、昼休みに美緒莉の報告を聞く限り、演劇担当より引き締まった雰囲気で作業が進んでいるようだった。
衣装を作ってみたいというモチベーションが高いメンバーが集まっているが、経験はほぼゼロに近い人がほとんどで、まずは簡単そうな小人や運営に回る人用の簡単な、最初にアリーシャも作ったようなマントのような衣装をと、衣装デザインを元に型紙を作ったり、布を選んだりしているらしい。
布は冴が予算会議で勝ち取った分があるとのことで、カタログからどの布がいいだとか真剣に考えて会議をする時間も非常に楽しいのだそうだ。
大道具担当班は、冴曰く現在試行錯誤の真っ最中らしい。
段ボールという素材は、定期的に沢山手に入るので、どうやったら効率よく舞台に運べるのだとか、背景のセットとして不自然ではないだろうかとか、試しに作っては会議をし、会議をしては作り直しをしと、割と白熱しているようだ。
普通の文化祭の準備だとここまでこだわって作業ができないので、特に英会話部の助っ人男子たちの謎のこだわりの元作業は遅々と、しかし着実に進んでいるのだそうだ。
「ということで、現在問題があるのは演劇班だけって感じだね」
「演劇班も順調だって話じゃなかったっけ?」
昼休み、いつもの四人での昼食中で、据わった目をしながらパンを齧る冴の言葉に美緒莉が首を傾げた。
「前にも言ったけどさ、王子役が見つからないんだよねぇ」
「そういえばそんな話もあったよねー」
アリーシャとしては自分の相手役が見つかっていないという話だというのに、そう言えばという気持ちになってしまったのは、悠紀を気軽に誘ってしまったせいで、凛子の恋心を知ってしまうという大事件が起き、王子不在の状況より強く、アリーシャの記憶に刻まれてしまっていたせいだ。
あの日を思い出すとにやけてしまいそうになる口元を、アリーシャは必死に引き締めながら、何とか平静を保った。
誰にも言わないでと打ち明けられた凛子との約束を、反故にするつもりは毛頭ない。
「王子役は出番が少ないって言っても、流石にそろそろ見つけておかないとヤバいよね」
アリーシャが王子役を探していたことを知っている凛子は少し気まずそうに眉をひそめながらそう言った。
演劇班の練習が進めば進むほど、後から入ることになる王子の演技が見劣りする可能性が出てくる。
それは世界観を鑑みても避けたいところではあった。
「うーん。あ、そーいえばさ、この間の球技大会の時。一年生でバスケに出ていた子がね、凄く背が高くて、皆にキャーキャー言われてたの見たよ。ああいうキャーキャー言われ慣れている子なら王子様やってくれるじゃないかなあ」
「美緒莉。それ、詳しく」
冴の目が、獲物を狙う狩人のそれになった瞬間を、アリーシャはその時目撃した。




