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そうしてその後、二、三会話をしてそれぞれの帰路に就くことになった。
いつもより暗くなってしまった帰り道。
めいっぱい自転車を漕ぐアリーシャの心は、遅咲きの桜が咲いたような気持だった。
その日の夜、演劇部一年生から、凛子とアリーシャが喧嘩をしていたかもしれないという話を聞いた美緒莉から個人メッセージが送られてきた。
『りんちゃんが怒鳴ってたって聞いて』
大丈夫だったと、猫が首を傾げているようなイラストメッセージが添えられていたので、アリーシャはちゃんと誤解だと返事をしておいた。
『ケンカなんてしてないよ』
『むしろ凛子とは親友になれたと思う』
アリーシャが満足げに送ったメッセージの数秒後、美緒莉から電話がかかってきたのでそのままそれを受け取った。
「私は?!」
いつもの美緒莉と比べて非常に大きな声が電話から聞こえて、アリーシャは思わずそれを耳から遠ざけてしまった。
「私だって、高校の、初めての友達じゃん。私も親友だよね?!」
電話から聞こえた美緒莉の切実な叫び声を聞いて、アリーシャは驚いた。
まさかの美緒莉からの嫉妬である。
アリーシャは嬉しくて歪む唇を押さえながら、美緒莉に返事をした。
「勿論、美緒莉だって大切な親友だよ。あの日美緒莉が話しかけてくれたから皆と出会えたんだし、その切欠がなければ演劇部だって作れていなかった。美緒莉と友達になれたのは幸運だったって、私はちゃんと思っているよ」
こういうのは口にするのは恥ずかしいが、ちゃんと言葉にしないと伝わらないものなのである。
アメリカでは、何かある度に愛していると口にする習慣があるが、それはとってもいいことだとアリーシャは思っている。
「わ、私も。入学式の時アリちゃんを見つけて、とってもかっこよくって、かわいくって、絶対友達になるって決めてたから、友達になれて嬉しくって、皆に自慢するくらいには嬉しくって、だから、友達を取られちゃったと思ったら嫌だって思っちゃって」
勢い良く喋り出した美緒莉はだんだんと声が小さくゆっくりになって、そしてそのまま言葉が止まって沈黙した。
「変な嫉妬しちゃってごめんね」
落ち着きを取り戻した美緒莉は、恥ずかしそうにそう言って笑った。
「ううん。吃驚したけど、ちょっと嬉しかった」
「えへへ、りんちゃんと喧嘩していなくてよかった。じゃあまた明日ね」
「うん。また明日」
今日はまさかの形で友人二人と友情を確かめ合う一日となってしまった。
今日あったことも、きっとアリーシャの青春として記憶のどこかに刻まれることになるのだろう。
春も終わりを告げ、初夏の始まる頃ではあるが、夜はまだ少し肌寒さが残っていた。
それでも、なんだか火照ってしまった体を冷やすためにベランダの窓を開けると、遠くから鳴く蛙の声が聞こえた。




