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その後、アリーシャは王子様役が見つからないと冴が昼休みに言っていたため、部活へ向かう途中で見かけた悠紀に声をかけていたという経緯を説明し、王子役は断られたこと、英語で話す内容はお上品でない内容ばかりであることを話し、凛子が嫉妬するような関係ではないことを改めてわかってもらえた。
「でもね、私凛子に言われて調子に乗っていたところもあったかもしれないって反省したの。選ばれたら終わりってわけじゃないのに、今日は遅刻したし」
「そんなことないよ。あたしが意地悪言おうと思って無理やりこじつけて言っただけだし、アリーシャはいつもちゃんと頑張ってるよ」
「ううん、聞いて。多分私態度より内心で、すっごく調子に乗ってたと思うの」
覚悟していたよりもずっと優しく白雪姫役を得られたことも、同じ白雪姫役を競った千種が非常に優しかったことも、アリーシャの気のゆるみに繋がっていたように感じられた。
その気のゆるみが大きな綻びとなる前に、凛子に叱って貰えたのはむしろ良かったとアリーシャは感じていた。
「だからね、私は白雪姫役を真剣に取り組んで、部活に遅刻とかできるだけしないようにするし、皆に認めて貰えてここに立っていることを忘れないで、皆が投票してよかったって思ってもらえるように頑張るから」
アリーシャは凛子の目を見つめて、口角を上げて続ける。
むしろここからがアリーシャにとっての本題だった。
「だから凛子も悠紀に少しでも素直になれるように頑張ろう!」
「うえぇええっ?!」
赤みが収まっていた凛子の顔が、またしても朱色に染まった。
「このままだとずーっと片思いのままじゃん。私は悠紀には興味なかったけど、悠紀のことを好きになる子が出来ちゃったらどうするのさ。クラスも別になっちゃって、接点部活だけじゃん、その部活だってあいつなかなか顔出さないんだから」
「で、でもぉ、あたし小学生の頃からずーっとあんな感じなんだよ、今更どーやって態度変えればいいかわかんないしぃ」
「そこは一回出そうな言葉吞み込んで、凛子なりに頑張るしかないよ。夏になったら夏祭りもあるし、秋には体育祭と文化祭もあって、それ終わったら今年は修学旅行もあるんだよ。この青春イベントを一緒に過ごさなくってどうするのさ!」
アリーシャはこの青春イベントに憧れて日本に来た身であるからして、その言葉にはそれなりの熱が入ってしまうのは仕方がないことだった。
しかもそれに加えて友人のコイバナである。
いつもツンとした態度の友人が、顔を真っ赤にして語ってくれたコイバナである。
テンションが上がらないわけがなかった。
悠紀に凛子のことをどう思っているか聞きに行きたいくらい、アリーシャの心は勝手に盛り上がっていた。
流石に人の恋路に口を出すのはタブーなのはわかっているので、行動に移すつもりはないのだけれども。
「わかった、あたし」
凛子はそう口にして、でも一度言葉を止めて唇を噛み締め、目を自信なさげに彷徨わせた。
「修学旅行。クラス違っても友達で班作れるって、先輩が言ってたから。そこであいつと同じ班になれるように頑張る」
「うんうんうんうん」
凛子のささやかな、でも凛子からすれば大きな一歩に、アリーシャは胸の前で手を組んで何度も頷いた。
「その間に、なんとかあいつにキツいこと言わないように頑張るし、す、素直になる努力もするから。だから、アリーシャも一緒の班になれるように、協力、してくれる?」
泣きそうな顔をしてアリーシャの顔を覗き込むように見上げる凛子の上目遣いは、友人としての贔屓目を抜きにしても、今日一番の可愛さだった。
「あったりまえじゃん!」
アリーシャはそのまま凛子に抱き着いた。
凛子のことは友人だと思っていたが、今日凛子の好きな人の話を聞いて、共通の秘密を作ったことにより、大親友と言っても過言ではないくらいの友情が芽生えていた。
アリーシャに秘密を打ち明けてくれた凛子を、絶対に裏切ることはないとアリーシャは心に誓った。
打ち明けてもらった秘密の代わりにアリーシャも何か秘密を打ち明けられればよかったのだが、残念ながら今のところ、誰かしらに片思いをするようなこともなく、凛子に打ち明けられる秘密がないことが口惜しいくらいだった。




