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部活が終わり、部室で着替え、皆に別れを告げて向かった駐輪場。
結局あの後、凛子と話す時間は取れなかった。
アリーシャは日本に来て、友達と喧嘩をしたことがなかったため、怒らせてしまった友人に対し、どう接したらいいのかがわからなかった。
凛子は、一年生の頃から仲良くしていたアリーシャの大事な友人だ。
失望されたままでいたくなかった。
もやもやと考えながら駐輪場まで辿り着くと、アリーシャの自転車の傍で、凛子が所在なさげに立っていた。
「凛子」
「あ」
アリーシャに名前を呼ばれた凛子は、アリーシャを見て泣き出しそうに顔を歪めて唇を噛み締めた。
「凛子、あのね。私これからちゃんと―――」
ちゃんと練習に遅れないように参加するし、皆の期待を裏切らないように頑張るからと、そんなことを言おうとしていた。
しかし、アリーシャのそんな言葉を遮るように、凛子からの渾身の、涙声の謝罪が響いた。
「ごめん、ごめんねアリーシャアアァ!」
凛子はそのままアリーシャの方へ駆け出すと、戸惑っていたアリーシャの両手を取って握りしめ、鼻の先と目のあたりを真っ赤にして、しゃっくりをしながら謝罪を続けた。
「あたし、あたし。アリーシャに酷いこと言って」
言っていない。
アリーシャは心の中で即座に凛子の言葉を否定した。
「アリーシャを傷つけるような言葉を、ざわと選んで、言って。本当に、あたし最低で」
感情のまま涙を流しながら訴える凛子に、アリーシャは頭の中にクエスチョンマークが浮かんでいた。
いったいいつの話をしているのだろうか。
部活前のあの時の話をしたかったのだが、その話ではないのだろうか。
「部活だって、みんな集まってたけどちょっと始まるには早いくらいだったし、誰もアリーシャのことなんて、怒ってなかったのに」
続いた凛子の言葉を聞いて、やはり部活前のあの時のことだったとわかったが、凛子が酷いことを言ったという、その酷いことに心当たりが全くなかった。
「それなのに、あんな風に言って、アリーシャを傷つけて。あたし、本当に最低。ごめんね、ごめんねアリーシャ」
アリーシャの手を握っている凛子の手が、心なしか震えているような気がして、アリーシャはその手を握り返した。
「凛子。私全然傷ついていないし、凛子が酷いこと言ったとも思っていないし、最低だなんてそんなこと全然ないよ」
アリーシャを傷つけたいのならば、強い言葉が必要だし、そもそも凛子は悪口の一つも言っていないのにどう傷つけるつもりだったのだろうか。
日本語って悪口のボキャブラリー少ないよね。
英語で会話しているスラングの方が、酷い言葉が多いような気がして、アリーシャは何故か得意気になった。
「私が部活に遅れたのも、悠紀とふざけていたのも事実だし、皆の期待を背負っている立場だっていうのもちゃんと自覚しなきゃいかなかったのに、気が緩んでた私を注意してくれた凛子の言葉は事実だし、酷いことなんて言われてないよ。私、ちゃんと反省して凛子に認めてもらおうって思ってたんだよ」
「なにそれ。あたしが悪いのに、アリーシャいい子過ぎじゃん。遅刻ってほどの時間でもないのに、皆の期待とか言っちゃってうざって思っていいくらいなのに」
「確かに、遅刻って程ではないとは思った」
アリーシャのその言葉に、凛子は吹き出すように笑い、アリーシャもつられて一緒に笑い、そうして二人のぎくしゃくした時間は終わった。




