表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
78/94

77

部活が終わり、部室で着替え、皆に別れを告げて向かった駐輪場。

結局あの後、凛子(りんこ)と話す時間は取れなかった。

アリーシャは日本に来て、友達と喧嘩をしたことがなかったため、怒らせてしまった友人に対し、どう接したらいいのかがわからなかった。

凛子(りんこ)は、一年生の頃から仲良くしていたアリーシャの大事な友人だ。

失望されたままでいたくなかった。

もやもやと考えながら駐輪場まで辿り着くと、アリーシャの自転車の傍で、凛子(りんこ)が所在なさげに立っていた。


凛子(りんこ)


「あ」


アリーシャに名前を呼ばれた凛子(りんこ)は、アリーシャを見て泣き出しそうに顔を歪めて唇を噛み締めた。


凛子(りんこ)、あのね。私これからちゃんと―――」


ちゃんと練習に遅れないように参加するし、皆の期待を裏切らないように頑張るからと、そんなことを言おうとしていた。

しかし、アリーシャのそんな言葉を遮るように、凛子(りんこ)からの渾身の、涙声の謝罪が響いた。


「ごめん、ごめんねアリーシャアアァ!」


凛子(りんこ)はそのままアリーシャの方へ駆け出すと、戸惑っていたアリーシャの両手を取って握りしめ、鼻の先と目のあたりを真っ赤にして、しゃっくりをしながら謝罪を続けた。


「あたし、あたし。アリーシャに酷いこと言って」


言っていない。

アリーシャは心の中で即座に凛子(りんこ)の言葉を否定した。


「アリーシャを傷つけるような言葉を、ざわと選んで、言って。本当に、あたし最低で」


感情のまま涙を流しながら訴える凛子(りんこ)に、アリーシャは頭の中にクエスチョンマークが浮かんでいた。

いったいいつの話をしているのだろうか。

部活前のあの時の話をしたかったのだが、その話ではないのだろうか。


「部活だって、みんな集まってたけどちょっと始まるには早いくらいだったし、誰もアリーシャのことなんて、怒ってなかったのに」


続いた凛子(りんこ)の言葉を聞いて、やはり部活前のあの時のことだったとわかったが、凛子(りんこ)が酷いことを言ったという、その酷いことに心当たりが全くなかった。


「それなのに、あんな風に言って、アリーシャを傷つけて。あたし、本当に最低。ごめんね、ごめんねアリーシャ」


アリーシャの手を握っている凛子(りんこ)の手が、心なしか震えているような気がして、アリーシャはその手を握り返した。


凛子(りんこ)。私全然傷ついていないし、凛子(りんこ)が酷いこと言ったとも思っていないし、最低だなんてそんなこと全然ないよ」


アリーシャを傷つけたいのならば、強い言葉が必要だし、そもそも凛子(りんこ)は悪口の一つも言っていないのにどう傷つけるつもりだったのだろうか。

日本語って悪口のボキャブラリー少ないよね。

英語で会話しているスラングの方が、酷い言葉が多いような気がして、アリーシャは何故か得意気になった。


「私が部活に遅れたのも、悠紀(ゆうき)とふざけていたのも事実だし、皆の期待を背負っている立場だっていうのもちゃんと自覚しなきゃいかなかったのに、気が緩んでた私を注意してくれた凛子(りんこ)の言葉は事実だし、酷いことなんて言われてないよ。私、ちゃんと反省して凛子(りんこ)に認めてもらおうって思ってたんだよ」


「なにそれ。あたしが悪いのに、アリーシャいい子過ぎじゃん。遅刻ってほどの時間でもないのに、皆の期待とか言っちゃってうざって思っていいくらいなのに」


「確かに、遅刻って程ではないとは思った」


アリーシャのその言葉に、凛子(りんこ)は吹き出すように笑い、アリーシャもつられて一緒に笑い、そうして二人のぎくしゃくした時間は終わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ