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そうこうしているうちに五分の休憩は終わり、各自与えられた班の班長が仕切るミーティングが始まることとなった。
美緒莉は衣装班の班長として仕切るために体育館の後ろ側へ、凛子は七人の小人役の一役として参加するので、アリーシャと一緒に演劇班が集まる舞台側へと向かった。
ついでに部長の冴はどこにも所属していないそうで、衣装班のミーティングに、顧問の原先生を呼んだ後は、宣言通り今日は大道具・小道具班のミーティングに参加している。
演劇班の班長は台本を担当してくれた真由美だ。
候補者全員のオーディション練習に分け隔てなく付き合ってくれた心強い存在である。
そんな真由美の元に役者として選ばれた面々が集まると、真由美は全員に着席を促し、両手を腰に当ててから話始めた。
「全員揃ったようなので、これからミーティングを始めます。まずは自己紹介から行きましょう。私は台本と演劇班の班長を務めることになった二年の佐藤 真由美です。何度か言ってるけど、台本はまだ完成していない状態です。皆さんの演技や、舞台の都合で変えなければならないところは変えていくつもりです。そのため、皆さんの屈託のない意見が必要だと思っています。意見を言うためにはお互いを知らないといけません。演技をする側として選ばれた皆さんには、はっきりとした声で、堂々とした自己紹介を期待しています。ということで、白雪姫から行きましょう。アリーシャさん」
「はい」
真由美に名前を呼ばれたアリーシャは、返事と共に立ち上がった。
「自己紹介では、何役に選ばれたのか、学年と名前、そして何か一言、意気込みを言ってもらってから、次自己紹介をする人を指定してください。主演として、先輩として、お手本になるような自己紹介をお願いします」
「は、はい。えっと」
真由美の圧のある前振りに、アリーシャは少したじろいだが、その場で目を閉じ、深呼吸をして落ち着いて、そして目を開けた。
自分のペースを取り戻し、心をきちんと落ち着かせてから、ちゃんと自己紹介するために口を開いた。
「先ほど白雪姫を演じさせてもらうことが決まりました、二年生のアリーシャです。白雪姫は私が子供の頃、一番憧れていたお姫様です。その頃の私が憧れていた気持ちや、一緒にオーディションをして白雪姫を目指した、長江さんや五十嵐さんに恥じないよう、そして、投票してくれた皆の期待に応えられるような演技を精一杯やりたいと思っています。どうぞよろしくお願いします」
そう言うとアリーシャはその場で皆に向かって頭を下げた。
周囲から暖かな拍手が響いたのを聞いて、一拍置いて頭を上げると、笑顔で拍手をしてくれている千種と目が合った。
オーディションに落ちた後も、アリーシャに対し笑顔を見せてくれている千種の姿を見て、アリーシャはぐっと唇に力を入れて表情を何とか保った。
逆の立場だったら、アリーシャはあんな風に笑顔でいられる自信がなかった。
目が合った千種は、アリーシャに何か訴えるように小さく手を上げた。
アリーシャは一瞬どういうことかと目を瞬いたが、そういえば次に自己紹介をする人を決めなければならなかったことを思い出し、次の自己紹介を千種へ託すことにした。
「では次の自己紹介を、一緒に白雪姫を目指した長江さんへお願いします」
「はい!」
元気のいい返事と共に立ち上がった千種に代わり、アリーシャはその場に静かに座った。
紹介の仕方はあれでよかったのだろうか、少し嫌味っぽく思われなかっただろうか。
ちょっとした後悔が胸に渦巻いている最中、千種の元気のいい自己紹介が始まった。
「白雪姫に落ちて、小人役になった一年の長江 千種です。私は、最初の自己紹介の時にも言ったように、内気な自分を変えたくてオーディションに参加しました。とっても、とーっても緊張して、でも凄くいい経験ができたって思っています。オーディションまでの間、凄くプレッシャーを感じていて、とても苦しくて、正直、白雪姫に落ちてしまったことに安心している自分が悔しいです。今年の文化祭で、小人役で舞台に慣れて、来年もう一度、主役の座を狙いたいと思っています。よろしくお願いします」
千種の自己紹介に、アリーシャも拍手を送った。
オーディションまでの間、何度か千種の相談に乗っていたが、そこまで苦しんでいることに気づけていなかった。
白雪姫の座を取り合うライバルとしてではなく、先輩としてもう少しちゃんと向き合うべきだったのかもしれないと、少し反省をした。
「次は一緒にオーディションを頑張った、五十嵐さん。お願いします」
例を終えて頭を上げた千種は、同じオーディション参加者の美鈴へと自己紹介を促し座った。
千種が座ると、美鈴が立ち上がり、自己紹介を始めた。
「この度お妃様役に選ばれました、一年生の五十嵐 美鈴です。お妃様のイメージを壊さないよう、精一杯頑張りたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします」
シンプルな自己紹介の後、頭を下げて拍手をもらった美鈴は、グループ練習でお世話になったのでと、侑奈を指名して着席した。
そうして順々に全員の自己紹介を終え、次回からシーンごとに分けられた台詞読みの練習を行うということで、最初のミーティングは終わった。
ミーティング終了後、美緒莉と顧問の原先生が率いる衣装班が合流し、後日全員の採寸を行うことが告げられ、そのスケジュールを組んで部活の時間が終わった。
アリーシャは部室で着替え、そして帰路に着くところだった。
夏も近づく春の夕暮れは、日は伸びてきたが、もう少しすれば暗くなってしまう。
アリーシャの心境は、白雪姫に選ばれた実感がまだちゃんとなく、ふわふわした気持ちと、ライバルとして競った二人のことと、これからアリーシャに合わせて作られる衣装のことと、選ばれたからにはちゃんとやらなければいけないというプレッシャーと、いろいろな感情がごちゃ混ぜになっていた。




