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こうしてアリーシャは二年生となった。
最初のホームルームで、これからの進路に対して個人面談があるだとか、そういう話が出るくらいの、未来について真剣に考えなければならないお年頃になった。
アリーシャが十歳の頃真剣に描いた夢は、今ここでそんな話を聞いている時点で叶ってしまっていた。
そしてこれからの夢を、アリーシャはまだ鮮明に描けていなかった。
アリーシャは将来何になりたいのだろうか。
将来というものは、考えると不安で、今という時間が終わることが憂鬱で、まだ先だと思ってしまう話で、それでも必ず向き合わなければならないものだ。
卒業後の先だなんて、まだ全然わからない世界で怖いけれど、この二年生という時間を使って向き合っていこうと思う。
「ということで、今日から皆さんは二年生になりました」
放課後のホームルームで、新しく担任となった先生から、将来の話があって、将来についてのあれそれを考えながら部活に顔を出したアリーシャ。
春休み明けに会う久しぶりの演劇部メンバーと雑談をしながら、運動を始め、一通り終わった後に、冴が言った言葉が、今日ホームルームで先生が言ったような言葉だった。
「二年生になったということは、一年生が入ってくるということです」
だが続いた言葉は先生の言っていたそれとは違った。
「春休み前に話した新歓の話は覚えているかな」
冴の言葉に全員が頷いた。
「一年生の前で部活の紹介をするやつだよね」
新歓というものが新入生歓迎会の略であることは知ってはいたが確認のため、アリーシャは質問をした。
「そ。水曜日に入学式があって、翌日が新歓。例年通り、先生から学校の紹介と、生徒会から学校行事の案内があって、その後部活動紹介の流れになる感じだね」
冴の説明を聞いている残りのメンバーは、そういえばそんな行事もありましたねといった感じの頷き方をしていた。
歓迎する側はいろいろ準備もあるが、される側は全校集会と同じような気持ちで臨むため、悲しいことに記憶の隅に追いやられがちだ。
「それで、全部終わったらチラシ配りができて、放課後部活の時間にチラシを持った一年生が見学に来る可能性もあるので、覚悟しておいてくださーい」
「おおっ、じゃああれやる? 最近練習している短い劇。ネットに落ちてたやつ」
「そっかあ、見学来るよね、緊張するなあ」
冴の言葉に侑奈は両手に握りこぶしを作りやる気満々で、夏海は両手を頬にあてておろおろとしていた。
琴葉もどちらかといえば緊張しているようで、胸元でぎゅっと手を握っていた。
アリーシャはどちら側といえば侑奈側で、楽しみに感じている、ふと目が合って笑ってくれた美緒莉も同じようだった。
ついでに絶対に役者側に回らないと豪語していた真由美は素知らぬ顔をしていた。
「はいはい、慌てない。どーせ本番では文化祭でいっぱいの人に見てもらうんだから、一年生が何人来たって関係ないじゃん。うちらの今の実力見てもらおうぜ」
凛子はたまにこんな風にかっこいい言葉を言ってくれることがある。
人をまとめるのが冴なら、士気を上げてくれるのが凛子だ。
「関田さんかっこいい」
「一番台詞噛んでるのにかっこいい」
「カムパネルナ」
「それ以上いけない」
「お、ま、え、らぁー!」
凛子の言葉に感動している夏海に続いて、侑奈と琴葉が茶化したのを真由美が止めに入ったが許されなかったようだ。
きゃあきゃあと悲鳴を上げながら追いかけっこが始まってしまうくらいには、演劇部に人が増えた。
ここに一年生が入ったら、演劇部として白雪姫の練習ができることになる。
アリーシャは楽しみな未来の話に、一人顔をほころばせた。
「おーい、そろそろ部活再開するぞー」
冴の掛け声で散らばっていた皆がゆっくりと戻ってきた。
入部希望の一年生に、見てもらって恥ずかしくない演技を目標にして、その日の部活は再開した。




