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体育館は授業でもなんとか式とかでも、よく利用する所ではあったが、授業とは違う熱量で部活をやっている体育館へお邪魔するのは初めてで、アリーシャは少し緊張した。
ボールの弾む音や、大きな掛け声、授業などでは見たことのないジャージ姿の人はコーチだったりするのだろうか。
アニメで見る部活のあのシーンみたいだとか、そんなことを密やかに思いながら、アリーシャと集まった面々で二人くらいずつで並んで体育館の端を通って舞台の方へ歩いていく。
体育館の端にある扉から、舞台の方へ上がることが出来るらしく、先頭を歩いていた冴が扉を開け中に入るのに皆が続いた。
扉の先は放送用の道具などが置いてある部屋で、奥には小さな階段があった。
その階段を上った先が舞台裏に繋がっており、全員そちらへ移動していくので、アリーシャもその流れに続いて舞台の方へ上がっていった。
「わあ、結構高いねえ」
アリーシャの後ろから舞台に上がってきた美緒莉が、舞台からアリーナ側を見て楽しそうにそう言った。
アリーシャも美緒莉の言葉につられて、舞台からアリーナ側を見てみれば、確かにいつも見ている風景より高く、体育館を見下ろす形になっており、なんだか不思議な気分だった。
「舞台も結構広いね」
「ねー。上ってみると下から見てたのと印象変わるねー」
そうして美緒莉と二人ではしゃいでいる間に、男子二名は簡単な見取り図を舞台の端で書き始め、冴は使えそうな備品の確認をしていた。
「凛子と清水は園田の指示に従って見取り図の作成と計測。私と真由美はこっちにある備品の数と大きさを書いていくから、美緒莉とアリーシャは舞台の写真をいろんな方向から撮っておいて」
てきぱきと指示を飛ばす冴は、流石部長といったところだ。
舞台の写真はイメージ図などを作るときにも役に立つが、後から見て何があったとか、どういう雰囲気だったとかを思い出すのにも使えるらしい。
体育館はいつだって行く気になれば見に行ける場所ではあるが、部活の邪魔になったり、見たいと思ったときに閉まっていたりする可能性もある。
写真で済むならそれに越したことはないのだろう。
美緒莉とアリーシャは手分けして、部活の邪魔にならないように、体育館の入口から見た舞台や、近くで見上げた角度、舞台側からアリーナ側を写した写真、舞台裏や放送器具など、目に入ったものを片っ端から写真に撮って、グループチャットに専用の写真フォルダを作り、そこにアップした。
写真をある程度撮って満足し、舞台計測組に合流すると、一人男子の中に取り残された凛子が音を上げていた。
「毎回あたしがこっち持って走り回るのおかしくない?! そっちが動けよ、ふざけんなよ」
「だって凛子数字読み間違うじゃん。危うく超台形の舞台が出来上がるところだったよ、どうなっちゃってんのよ」
合流した舞台計測組はどうやら苦戦しているようだった。
「ふふふ、りんちゃん楽しそうだね」
そうだろうか、そう見えるのは美緒莉だけではないのだろうか。
アリーシャはそんな感想を飲み込んで、無難そうな顔で笑った。
凛子、騙されているぞ。
本来はゼロ固定で、メジャーを持っている方が動くのだから。
もうすぐ計測が終わりそうだったため、あえて口には出さなかったが、アリーシャは一人そんなことを思った。
言わぬが花という言葉は、アリーシャが日本に来てから覚えた言葉の一つだった。
その後、全員が測った結果を、助っ人の佳輝がまとめてくれて、今日の部活動は終了となった。
得意だと呼ばれただけあって、本当にきれいにまとめてくれた結果は、冴がありがたく受け取っていた。
今年の十一月、あの大きな舞台で劇をやるのだと思うと、まだ役すら決まっていないのにアリーシャはなんだか少し緊張してしまった。
帰り際、まだ部活動で使われている体育館の奥にある、舞台を目に焼き付けて、アリーシャは帰路に就いた。




