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冬休みとは、日本では稼ぎ時である。
年末年始という時期は、流石の日本人もお休みがあるらしく、多くの社会人は一週間くらいのお休みを年末年始でもぎ取ってくる。
ここの休みの単位が、月でないところが日本である。
そして、その一週間くらいのお休みで、コンビニもスーパーもお休みになるかといえば、そうはならないのが日本なのである。
この一週間の時期すら休まず営業する店がほとんどで、そしてそこで働く人たちの給料は、いつもよりちょっとだけ高くなったりする。
アリーシャはその時期、都合がつく限り一生懸命働いた。
冬休みが明けたら、平日のバイトを部活のために減らして、土日メインに働く予定に変えたため、稼げるときに稼ぐというハングリー精神で頑張った。
そうして頑張ってバイトをこなし、宿題を片付ければ、あっという間に冬休みも終わってしまった。
久ぶりに袖を通した学校の制服が、なんとも愛おしい始業式だ。
冬休みが明けたと言っても、待っていたのは特に変わらない日常だった。
キンと冷える真冬の空気に、鼻先と耳を冷たくしながら通う通学路。
秋に葉を落とした木々が、青空に手を伸ばすかのように枝を伸ばしている、澄んだ空がどこまでも青い日本の冬は、アリーシャお気に入りの季節だ。
あれから入部希望者が増えることはなく、冬のより一層冷たくなった空気の体育館で、いつもの四人で部活を続けていた。
真由美は冬休み明けまでにきっちり台本を仕上げてくれたのだが、ちゃんと台本が配られるのは、一年生が入部してからになるのだそうだ。
部活に参加していない真由美は、現在大道具や小道具はどういったものが必要になるのかを、冴の指示で書き出しているらしい。
誰一人まともに演劇というものに携わったことのない演劇部のため、真由美も、大道具や小道具が具体的にどう作るべきなのか、どういうものが必要かなどのイメージが掴めず、苦戦しているらしい。
冴から本日の部活は自習室での会議を行うと連絡が入ったのがそんな折だった。
英会話部と掛け持ちをしている悠紀も集合し、久しぶりに演劇部全員が顔を合わせる形となった。
自習室には冴、美緒莉、アリーシャが横並びに座り、真由美、凛子、悠紀が向かい合うように席に着いた。
「えー、本日はお集まりいただきありがとうございます」
「前置きはいいからはよ始めろ」
冴の話が長くなりそうだと察したのか、真由美が遮って本題に入る流れとなった。
そんなやり取りの間にも、美緒莉が机にお菓子を並べているあたり流石としか言いようがない。
急な呼び出しだったはずなのに、何故いつも鞄に皆に配れるくらいのお菓子が入っているのか、アリーシャは一人戦慄していた。
「えーっと、グループチャットでも伝えた通り、真由美が白雪姫の台本を完成させてくれました」
冴の言葉に、真由美が小さく頭を下げたので、周囲は小さく拍手をした。
「それで、その後劇に使いそうな大道具や小道具の一覧を作ってもらいました」
冴に促され、真由美は手元の鞄から書類をテーブルの上に出した。
書類には鏡や大鍋、森の木々などの舞台をやるにあたって必要となりそうな大道具、小道具の一覧が書かれていた。
「最初背景はプロジェクターで映すという手を考えたんだけれど、舞台を明るくすると見えなくなるだろうからやめたの」
一覧表を広げながら、真由美はそれらの説明を続ける。
「体育館にいくつかキャスター付きのホワイトボードがあったから、それに段ボールを張り付けて、シーンごとに回収がしやすい背景が作れたらいいなって今は考えているの」
それは密やかに魔女が毒を作る地下室や、小人の家の壁や扉の役割としても使用できるのではないかと考えているという。
「お城や森のような大きくて開けた場所は、前の方に小さな張りぼての植木とか、調度品とか、草だったりを置いて遠近感を出せば囲気が出ると思うの」
いろいろ考えてくれていただけあって、真由美の具体的な提案に、アリーシャもイメージがしやすく、頷きながら話を聞いた。
「小道具としては、小人の仕事用にピッケルとか、そういうのって段ボールで作れるかわからないけどとりあえず書き出してみた。林檎とそれを入れる籠については、美術部にデッサン用の物があるっていうから見に行ったけど、ちょっと舞台で使うには林檎が小さいかもしれないと思ったかな。観客が見るときに違和感を感じないくらいの大きさで作れないかなと思って、とりあえず作成するものリストには載せておいたね」
「真由美が出してくれた一覧は、あくまでも予定で、実際演技をやると使わなくなったり、足らなくなったりすることがあると思うんだけれど、とりあえずこれくらいのものが必要になるかなという目安で作ってもらった感じ。実際作り始めるのは、一年生が入って、役割が決まってからになると思うんだけど、作るにあたって、実際どのくらいの大きさになるのかを考えなければいけないので、今日はこれから体育館で舞台の計測を行いたいと思います」
今日全員が集まったのは、体育館の舞台側を使っているバスケ部から許可が貰えたので舞台の計測を行うためだったそうだ。
真由美が作ってくれた、大道具、小道具のリストを参考にしながら、どの辺りを測っていくべきか軽く計画を立ててから作業開始となることになった。
美緒莉が持ってきてくれたお菓子を摘まみながら、計画を練っている間に、悠紀が英会話部から助っ人を一名、見取り図を描くのが上手だからと以前部室の片づけを手伝ってくれた佳輝を呼んでくれて、全員集合したところで、体育館へ移動となった。
今日はいつもの第二体育館ではなく、大きな方の体育館だ。




