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その後、凛子(りんこ)のバイトが近づいたとのことで集まりは解散となった。

宿題として、全員部員募集のポスターの案を考えてくることになった。

コピー用紙サイズで掲示されるポスターは、来年新入生が入ってきたときにも使いまわしができるようなものを作るようにとの指示があった。

解散後、(さえ)が勝手に入部を決めた友人に会いに行くとのことだったので、アリーシャも同行させてもらうことにした。

どんな子なのか気になったし、いざとなったらアリーシャからも入部をお願いするつもりだった。


(さえ)に連れられて向かったのは学校の図書室だった。

(さえ)曰く本の虫なだけあって、彼女は図書委員会に所属しているとのことだ。

本の貸し出しや返却された本を本棚に戻したりするというのが主な仕事らしいが、委員会で当番が決まっているため、その仕事をいつもしているわけではないとのことだ。

しかし、その子は仕事があろうがなかろうが放課後毎日図書室にいるのだという。


「ハードカバーの本って買うと高いじゃん、部屋に置くとなると場所も取るし。でも図書室にいけば山ほど置いてあるから、それがいいんだって」


廊下を歩きながら(さえ)はその子が図書室に入り浸っている理由をそう話してくれた。


高校には飲食が禁止されていない自習室があり、図書室は教室から少し離れた場所にあることもあり、利用者は少ない。

日の入りが早くなった秋の夕暮れの、仄暗(ほのぐら)い廊下を抜けて、アリーシャと(さえ)の二人は図書室へとやってきた。

入り口を開けてすぐのカウンターに座っている生徒は、目的の人物とは違うようで、入ってきたこちらにちらりと目を向けたが、すぐに軽く礼をして視線をそらされた。

(さえ)は目的の人物がどの辺りに座っているのか知っているように進むので、アリーシャもそれに続いた。

図書室の少し奥まった、入り口から視線の届かない長机の端に、口角を上げて読書に勤しんでいる生徒の反対側の席まで来ると、(さえ)はその椅子を引いて座った。

椅子を引く音が静かな図書室内に響くと、本を読んでいた彼女もそれに気づいて顔を上げた。

どうやら彼女が目的の人物のようだ。

アリーシャは席に座らずに、(さえ)の座った席の後ろに立ったまま彼女たちの動向を静かに伺った。


「よ」


席に座った(さえ)の第一声に、幸せそうに本を読んでいた彼女の眉間にしわが寄った。

かけた眼鏡の奥にある視線は、心なしか冷ややかだった。


「図書室では静かにお願いします」


「まだ一言しか喋ってないじゃん」


彼女の言葉に苦笑する(さえ)は、どうやらあまり歓迎されていないようだ。

アリーシャは彼女たちのやり取りに、どうしたものかと内心かなり気をもんでいた。


「ちょっとお願いがあるんだけど、場所変えない?」


アリーシャの心境を他所に(さえ)は早速本題とばかりに座った椅子から身を乗り出して、向かいの彼女に詰め寄った。

読んでいた本を盾にしながら、心底面倒だという表情を隠しもしない彼女の方は、非常に迷惑そうだ。


「お断りします」


「まあそう言わずに、ジュース奢ってあげるから」


「結構です」


取り付く島もないとは正にこういうことを言うのだろう。

二人のやり取りを見てそんな感想を抱いたアリーシャではあったが、そのやり取りを黙って見るためだけについてきたわけではなかった。

何せ(さえ)のお願いというのは演劇部のためのものであり、元はと言えばアリーシャのためのものであるのだ。


「あ、あの」


(さえ)の座る側の机に手をついて、勇気を振り絞って出たアリーシャの声は、思ったよりも大きく図書室内に響いた。

出した自分の声の大きさに、自分自身で驚いて、少し気まずくなりながら、それでもアリーシャは必死に言葉を続けた。


「私からも、お願いします」


最初の勢いから尻すぼみになるような形になりながら、アリーシャは何とか言い切った。

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