断章「残骸」
あの日のことを鮮明に思い出せなくなる日が来たとしても、徐々に思い出せなくなっていったとしても、その想い出が自分にとっては確かに大事なことだったんだと、かけがえのないものなんだと理解できている。だから、思い出せなくなっても想い出を刻んだ心がちゃんと憶えていてくれる。
あの想い出を忘れたくない。形としてちゃんと記憶に残るものを作りたい。
だってそうだろう?大切だと思えるのなら、その鮮やかさのまま残したいと思ってしまうのだから―――
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話してくれた。
伝えてくれた。
教えてくれた。
寄りそってくれた。
委ねてくれた。
『ありがとう』と言ってくれた。
『ごめんね』と言ってくれた。
でも
『さようなら』
それだけは言ってくれなかった。
本当に、貰ってばっかりで‥‥‥何一つとして返すことが出来なかった‥‥‥。
過去を肯定するために今を生きる。
もはや、その正誤すら判断できない。
―――でも―――
そうしなければ、後悔をし続けて、後悔を抱えたまま死んでいくと確信できたから。
なにより‥‥‥大切な想い出を形として遺したいから。
それだけが、唯一の望みだから―――




