断章「交錯」
それは、彼方の記憶―――
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両親が運転する車に乗せてもらっていた時のこと。三回に一回ぐらいの頻度で、猫の死体を見かけることがあった。
「またか。」
両親はため息交じりに言った。
身体を後方へ向け、車窓から猫のそれをもう一度目にすると、心がずきんと痛んだ。
そうして一週間が経った頃。再び、猫が倒れている姿を直視した。
同じ動物なのに、あんなにも簡単に命は潰えてしまうのだと恐怖を覚えた。
気づけば身体は震えていて、ふと、一つの思考に至る。
『あれが人間だったら―――』
それに呼応するかのように別の記憶への扉が開かれる。
両親とスーパーへ買い物に出かけていた時のこと。
「どの魚が食べたい?」
両親は同じ背の高さまで屈んで尋ねてくれた。
商品へ視線を移すと、そのさらに奥の従業員作業スペースが視界の端に映った。商品よりもそちらの方が気になったので、両親には悪いけれど、少しの間だけ眺めることにした。
中の光景は、至ってシンプルだった。
五人の従業員。四つの作業台。まな板。大きな包丁。
そして、ライトに照らされた××。
視点が定まらなくなる。吐きそうになる。
だってそれは、いつか見た××とよく似ていたから―――




