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断章「記憶」

 その顔を覚えている。

 その感情を覚えている。

 胸の中にあるのは、たった一つの後悔。

 彼女が今からやる事は彼の今までの在り方を否定すること、ひいては、彼と彼女との時間を無いものにしてしまうということに繋がる。

「それでも―――」

 彼のために。後悔を『後悔』と思わないようにするために、彼女は自身の生への執着を放棄する。

 それがたとえ、生きる意味を失うことでも、命を失うことだとしても―――

「どうか‥‥‥彼を―――」

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