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断章「英雄」
『英雄』
それは偉大な事を成し遂げた誰かを指す言葉。
救世主
王
聖女
聖職者
航海者
学者
騎士
暗殺者
兵士
庶民
ジャンルは問わない。行動の善悪は関係ない。何人、人を殺そうとも関係ない。血を流すことが正義だと発言しても構わない。何であれ、結果的に、人間という種において有益だと世間が認める、あるいは祀り上げればそれは英雄だ。
基本的に、英雄は他人を平等に扱う。特別扱いすることはない。とは言っても、愛する人がいない訳ではない。ただ、彼らは自身が正しいと感じた責務を行動に移すだけ。それらを天秤に掛け、平等に扱うことを選び、自分自身すらも犠牲に出来る人間こそが英雄たり得る。
"カレ"とて、生まれる時代、国が違ったのなら、彼ら彼女らと似たような在り方、結末を辿っていたかもしれない。
けれど、彼が生を受けたのはとても穏やかな世界。見えない戦争が続いてはいるものの、相対的に平和であると言える世界。敗者は存在するが、圧倒的多数が勝者となる世界。己の歓びを求めようが、誰も文句は言わない。それこそが、人間だ。生きるという事だ。しかし、どんな世界だろうが何だろうが、彼はそう在り続けるだろう。
『人類の英雄ではなく見知らぬ誰かの英雄として』




