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変わらないものと変わるもの

「担イシ者タチ」最新話です。

かなり遅くなってしまい、本当に申し訳ありませんでした。

今回、長くなっています。

よろしくお願いします。

 杉並区の東に位置する元都市。今は瓦礫の海となったその街の中、一人の少年とその妹はその光景に驚かずにはいられなかった。

「なんだ……これ……」

「家も、ビルも、何もかも、全部崩れちゃってる……」

 過崎ハツキはあたりを見回し、少なくとも周囲150メートルは全て同じ状況であるということを確認した。なにもない、というよりはありすぎる、と言った状況で、歩くたびに瓦礫が足に当たりそうになり、今まで何もない地面を歩いてきたことがどれだけ楽なことだったかを思い知らされているような気分だった。

(いったい何が起こってこんなことになったんだろう)

 頭に浮かんだ疑問の答えを探すべくあたりを歩き回る。

 と、そこで

「お兄ちゃん、あれ……もしかして」

 過崎梓は瓦礫が無数に転がる辺りの、ある一点を指した。

「ん? あ、あれって……」

 梓が指したほうに目をやると、そこには気を失っていると思われるあかがねすずと鈴を抱える霧科きりしないのり、そしてもう一人の人影があった。

 ハツキと梓はどこか見覚えのあるその人影を目を凝らしてじっと見た。

「祈さんと鈴さん……あと……美佳さん!?」

 梓が叫ぶと、祈と美佳がハツキたちに視線を向けた。

「あ、ハツキー!」

 祈は叫び、手招きした。

 ハツキと梓は祈達のもとへ走っていき、身をかがめた。

「美佳……無事だったんだな」

「まあね。ただ、楓たちとははぐれちゃったわけだけど……」

「そっか……。まあ、ひとまずは美佳が無事でよかった。それで、鈴はどうしたの?」

 ハツキのその質問には祈が答えた。

「実は、さっき自分は魔術師だっていう男がこのあたりを爆発して回っててさ……。鈴がそれを止めてくれたんだよ」

「魔術師を名乗る男か……。それにしても、かなり暴れまわってたみたいだね」

 ハツキは周りの惨状を見ながら言った。

「うん……。あ、そうだ! 今美佳と話してたんだけど、これから私たち、どうすればいいかな。いつまでもここにいたらまたあの研究員みたいなやつらに見つかっちゃうし……」

「そうだね……どうしようか……」

 ハツキは深く悩んだ。

 この街は完全に鬼狩の部下に包囲されていると言ってもいい状況である。そして、つい先ほど知ったことだが、どうやら魔術師は警察などの政府側から敵視されているらしい。

 そのため、この街から他の街へ行くことぐらいは可能かもしれないが、どこかに身を隠さない限り、どこかで見つかってしまうのがオチだろう、とハツキは考えていた。

「ね、ねえ、お兄ちゃん。刀地さんのところに匿ってもらう、っていうのはダメかな」

「刀地さんか……。そうだな、頼ってみよう。……よし、そうと決まったらさっそく行こうか。鈴は僕が背負っていくよ」

 ハツキは勢いよく立ち上がり、鈴を背負い、歩き出した。


 薄暗い路地裏のような道。もう日が暮れかけているのも相まっていっそう不気味さを増しているとある質屋の周りにハツキ達はいた。

「ここだよ。瀬川せがわ刀地とうじって人が運営しているカジノがあるんだ」

「お兄ちゃんはここで五万円も稼いだんですよ」

「五万!? どうやって!?」

「ここはイカサマしていいカジノなんだ。だからイカサマした」

 ハツキは堂々と言った。

「あ、そう言えばお兄ちゃん、まだどんなイカサマしたか教えてくれてないよね」

「ああ、そうだっけ。そのうちわかると思うけど、まあ、今言ってもいいか。実は魔術を使ったんだ。僕の魔術は光を操る魔術……、だから、どんなカードがきても、光を屈折させたりして、望みのカードに見せることができるんだ」

「な、なるほど……」

「せこいね……」

 呆れたような顔で美佳が言った。

「しょうがないだろ。こっちは食がかかってるんだから」

 ハツキは少し笑ったような顔で言った。

「とりあえず刀地さんに取り合ってみよう。まあ、あの人なら簡単に承諾してくれるだろうけど」

 ハツキはそう言って質屋の中に入っていった。

「ん? うお、ハツキ。一日に二回くるとは……。って、今回はカジノ出稼ぎにきたってわけじゃなさそうだな」

「ええ、まあ」

「ん? なんだ? お前、妹さんが四人もいたのか?」

「いや、違いますよ。同じ孤児院にいた友人です」

「えと、初めまして。霧科祈と申します」

「初めまして。結城美佳です」

「おう、これはご丁寧にどうも。ハツキから聞いてるかもしれないが、瀬川刀地だ。よろしく。で、そっちの気絶してる子は?」

「あ、この子は、銅鈴と言います。こんな状態でごめんなさい」

 祈が鈴のかわりに挨拶をした。

「いや、いいんだ。……もしかして、さっきの杉並のショッピングモール周辺の爆発に巻き込まれたのか?」

「あ、はい……そんなところです……」

「そうか……まあ、命に別状はないみたいでよかった。で、なんでまたここに来たんだ?」

 刀地は腕を組み、問いを投げかけた。頭に巻いているタオルと相まって、今にもおいしそうな料理をふるまいそうな料理人のように見える。

「えっと、言いにくいのですが、僕たちをここに匿ってもらえませんか?」

「匿う? ……ハツキ、まさかお前、またあいつらに追われてるのか?」

「はい。状況は前よりひどくなっていますが……」

 少し暗い顔になって言った。

「ったく、鬼狩のやつも諦めようとしねーな。いいぜ、お前はもう俺のダチだ。何日だって泊まっていくといい。……と、胸を張って言いたいところだが……実は、店の前で倒れてた女の子がいてな。二階で休ませてるんだ。そんなわけで上の階の部屋が一部屋しか余っていないんだが……それでもいいか?」

「ふえええぇぇぇ!? ひ、一部屋……ですか!? じ、じゃあ、ハツキと一緒の部屋ってことですか!?」

 祈がなぜか興奮して言った。

「え……あ、まあ、そうだな。申し訳ないことだが」

「いえいえいえいえいえ! ぜんっぜん! ありがとうございます!」

「い、祈、どうした?」

 祈の急すぎるテンション上昇を見てハツキは戸惑っていた。

「鈍感だねー。変わってないや」

 美佳は驚いているハツキを見て呆れと安堵が混ざったような顔をした。

「そうですね」

 美佳に同意し、梓は笑みをこぼした。


「じゃあ、二階の二つある部屋のうち階段側から見て一番奥にある部屋を使ってくれ」

「はい、ありがとうございます」

「ああ、ハツキ。鈴さんを部屋に置いたら、いったん俺のところに来てくれないか? いくつか訊きたいことがあるんだ」

「あ、わかりました」

 ハツキは承諾し、右側にある階段を上がっていき、それに続いて祈たちも刀地に礼を言ってから階段を上がっていった。

「奥の部屋、か」

「うん、前に僕がここに泊まらせてもらった時にいたのもその部屋だったんだ」

「そうなんだ。ハツキの部屋みたいなものだね」

「いや、美佳、それは違うよ……」

 ハツキは少し呆れたような表情で言った。

 階段を上がり、そこから左に続いている廊下を少し進むと、刀地の言っていた通り、二つの部屋があった。

 部屋と部屋との間隔はそこそこ広く、少し騒いだくらいではあまり気にならないであろう。

 外から見た感じはTHE和風な感じであり、入り口にはドアのかわりに最近ではあまり見ないふすまが設置されていた。

 ふすまを開け、中に入ると案の定和室であり、修学旅行の時に泊まるような和室と全く同じ見た目であった。

「わ、すごい。きれいだね」

 祈は部屋を見まわし、畳に塵一つ落ちていないことや、奥のデッキテラスにもほこりなどが全くないことを認識し、驚いた。

「刀地さん、掃除が趣味らしいからね」

「ギャップでキャラを濃くしようとしているな……」

「美佳、そういうことは言わないでおこうか」

 ハツキは危うい発言をする美佳を停止させ、鈴を床に寝かせた。

「よ、し。じゃあ、僕は刀地さんのところに行ってくるよ」

「うん、いってらっしゃい。鈴は任せといて」

 祈がそう言ったのを確認してハツキは刀地のところに向かった。

「おお、来たか、ハツキ。……まあ、こんなところで話すのもあれだし、カジノホールに行くか」

「カジノホール……ですか? でも、かえって話しにくいんじゃ……」

「大丈夫。今日はもう閉めた。久しぶりに何か勝負でもしながら話さないか?」

 刀地はカジノホールへの入り口を親指でさした。

 ハツキと刀地はカジノホールへと向かった。

 カジノホールはさっきハツキとルミがいた時とは全く雰囲気が違っていた。先ほどの騒音のようなにぎやかさは跡形もなく消え去り、ホール全体を照らしていた照明も数個しか点いておらず、ただ薄暗く広い空間でハツキ達は歩いていた。

「ルーレットにしようか」

 刀地はそう言ってとあるルーレットの台の前で立ち止まり、椅子に座った。

 ハツキも刀地の座っている場所の反対側に座り、刀地と向き合うような形になった。

「……刀地さん、訊きたいことって……?」

「ああ、ちょっとな。魔術師について訊きたくてな。あと、その魔術師に対抗するためにつくられた組織について、少し忠告をしておこうと思って」

 刀地はルーレットのゲームを始める準備をしながら真剣な面持ちでそう言った。


 ハツキ達が質屋にたどり着いたころ、元ショッピングモールであった瓦礫の海では警察が調査をしていた。

「くそ! 離しやがれ!」

 ショッピングモールを瓦礫の海にした犯人は叫んだ。

「少しは黙れ。お前は犯罪者なんだぞ」

 コートを着た経験が豊富そうな、あくまで豊富そうなだけの刑事はそう言った。

「こんな手錠、俺の魔術で……って、え? 魔術が使えない?」

「残念だったなー。この手錠はある科学者が魔術師用につくった手錠でな。これをつけられたら魔術を使えなくなるんだ」

 経験豊富そうな刑事は自分の腰にぶら下げていた手錠を文句を言っている男に見せて言った。

「おい、木川。そろそろ私は行くぞ。周辺に魔術師はいないみたいだからな」

 二十代後半と思われる、ゴーグルをつけたスーツ姿の男はそう言った。男はゴーグルを外してその死んだ目を露わにした。

「あ、はい。お疲れ様です。瀬川魔術対策部長」

「ああ。その男は任せたぞ。では」

 スーツ姿の男はそう言うとその場を立ち去った。

「魔術対策部か……つくられた時は何のためにあるんだーって思ってたけど、まさか本当に魔術師なんてものが現れるとは。警察の情報収集力ってのはすごいなー。ほら、行くぞ」

「くそ……わあったよ」

 コートの刑事と爆破犯は近くに止めてあるパトロールカーのもとへ向かった。

 その様子を、スーツ姿の男は横目で見届けていた。

「……魔術師か……。ふ、しばらく退屈しないかもしれないな」

 スーツ姿の男は笑ったように見えたが、あくまで無表情のまま、無感情にそう言った。

読んでくださり、ありがとうございました。

皆さん、お久しぶりです。今回は投稿が二週間も空いてしまいました。早く投稿しますと言っておいてこの体たらく……本当にすみませんでした。

今回はなごんだり物語が進展していったり大変でした。話を考えたり書くことは楽しいのですが、ただ漢字の変換などがめんどうなのです笑 特に刀地は「かたな」を変換してから「じ」と打つので時間がかかってしまいます笑

次は二週間も空かないように早く投稿しますので、よろしくお願いいたします。

感想や文章の指摘などがあれば送っていただけると嬉しいです。

ブックマーク等もしていただけると光栄です。

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