爆ぜるはどちらか
すみません、遅れました。
「担イシ者タチ」第十六話です。
よろしくお願いします。
瓦礫の海に違和感を生み出すようにある一つの完成間近の家。その中で鈴は瓦礫の海を生み出した男を探していた。
「どこにいるのよ……。あっつ! もう……あいつ……放火しながら歩くの止めてよね……」
鈴は内心の恐怖を取り払うために、状況を楽観視しながら歩いていた。
建物内は炎が蔓延しており、一階のリビングと思しき部屋は隣接するキッチンと共に燃え盛っていた。
「ったく……なかなかいい家なのに……。あいつほんと最悪……。……私も、一人でいるときの口の悪さ、最悪だけどね」
鈴は燃え盛る家の中で自分の独り言を言っているときの口の悪さを心の中で嫌悪していた。
そんなときだった。
「! なに!?」
鈴の後ろでバキバキ、という音が鳴る。どうやら玄関の枠が燃えてしまい、崩れてしまったようだ。
「うそでしょ……私、帰れるの?」
自分の中の楽観が絶望に変わり、なぜか顔の表情筋が緩んでしまう。
どうやら人が苦境に立たされたとき、おかしくなってしまうというのは本当だったようだ。
「とにかく、早くあいつを見つけないと。帰れる可能性が0になる前に……」
鈴は早く決着をつけようとする。が、どうやら男は一階にはいないらしく、鈴はリビングの前の廊下の突き当たりを左に曲がり、階段を発見する。
階段はほとんど燃えておらず、鈴に通ってくれ、と言っているようだった。
「二階……絶対いるよね……。罠かもしれないけど、迷ってなんかいられない、早く行かないと」
鈴は躊躇せずに階段を上がり始めた。
右側にはバスルームがあり、そこもまた火の手がまわっていた。
「階段以外はもうやばいか……。うう……暑い……。だめ……だんだん意識が薄れてきた……」
祈とリンクして怪我が瞬時に治るのはいいのだが、どうやらその影響は酸素不足などには及ばないようで、鈴の意識がだんだんと薄れてくる。
鈴は朦朧とする意識の中、何とか二階にたどり着いた。
二階は決して広いとは言えない広さであり、階段を上がった後、廊下が五メートルほど続いており、その先に扉が一個、そのすぐ右に扉が一個と、わずか二部屋しかなかった。
一階ほどではなかったが、床が燃えており、不規則に揺れ動く炎が床板の継ぎ目から継ぎ目へと移っていく。
(どっちの部屋にいるの……? ……って、迷ってる暇はないか!)
心の中でそう言うと、鈴は一直線に走り、正面の扉を開けた。
(……あいつは……いない!)
と、なると男がいるのは当然……
鈴がそこまで考えた時、後方からバン! という音が鈴の耳に飛び込んできた。
「うおおぉぉ!」
「!」
自分の後方から男の叫ぶ声が聞こえ、あわてて振り返る。
男は炎を自分の手から噴き出させて鈴に振り下ろす。
(く……! かわせるか……!?)
鈴が燃える床を思い切り蹴り、後ろへ飛んだ。
後方へ飛ぶための力が鈴の小さな体に加わり、重力に逆らってその体は微かに浮いた。そのまま少女の体は後方へ加速し、炎から離れた。
まさに間一髪。ギリギリのところで鈴は炎を避けたのだった。
「く……はずしたか」
男の手から噴き出した炎は床に接触し、床板の燃え移ってしまった。
(あ、危なかった……。もう、軽くホラーだよ……)
はあ、はあ、と息を切らし、鈴は薙刀を構えた。
「はは、もうそろそろ酸素が無くなってきたころか?」
そう言って男は部屋の扉を閉めた。
(そっか……。酸素が無くなってきてるからこんなに意識が遠のいていくんだ……)
鈴はぼやけていく視界と意識を必死に保とうとする。
「はは、部屋は密室状態だ。すぐに酸素はなくなるだろう」
「そうなれば……あなたも、無事で済まなくなるのでは……?」
「はは、わかってねーな。俺の魔術を。俺の魔術は、炎を発生させるだけじゃない。二酸化炭素でも呼吸ができる、っていうのと、自分が発生させた炎では体が燃えない、っていう常時能力付きなんだよ」
「な、なんですか、そのチート能力……。聞いてません……」
男が言った言葉に鈴は再び絶望する。
ここでこの男を仕留めなければ、ここの周辺地域が火の海、または瓦礫の海になるのは想像がつく。
鈴は一刻も早く男を倒すことを考え、男の方へ駆けだした。
「つまり……早くあなたを倒さなければならないということですね!」
薙刀を振り上げ、振り上げきる過程で男を切りつける。
「く……! 狭いところでは俺が不利、か。だが、後数秒だ。後数秒でこの部屋の酸素はすべてなくなる。その時がお前の最期だ!」
男は手から炎を吹き出し、鈴めがけて振り下ろす。
鈴はそれを左に避ける。
「でやあ!」
薙刀を横に振って男を切りつけようとする。
が、男はそれを後ろに下がることによって避けた。
「はは、あたんねーよ!」
「く……あ……」
鈴は一歩、二歩と後ずさりして倒れてしまう。
「お? どうした? もうゲームオーバーか?」
(う……あ……もう無理……なの……?)
「はは、残念だったなぁ……。一思いに爆発かなんかで殺してやれれば良かったんだが、この家は建設中だからか、ガスが通ってないみたいなんでな。爆発させられないんだよな」
(爆発……? そうか! どうせ酸素がないなら……どうせこのまま死ぬくらいなら……賭けるしかない!)
そう思うと鈴は残った力を振り絞って立ち上がった。
「? なんだ? ……! 何のつもりだ!?」
「せやあああぁぁぁ!」
鈴は叫びながら部屋にただ一つあった窓に突っ込んだ。
(ここで……魔術を発現する……! 変換の対象は二酸化炭素!)
鈴は自分の魔術を使い、自分の体を二酸化炭素で包み込む。
(お願い! これで、あいつを倒せますように!)
鈴の体が窓と接触する。
次の瞬間、窓がバリン! という音をたてて割れる。そして同時に、部屋から外に向かって爆炎がほとばしる。
「! な……! ぐあああああああぁぁぁぁ!」
男は驚嘆と恐怖、絶望の入り混じった声をあげ、爆ぜた家の瓦礫の下敷きになった。
「う……ぐ……ああ!」
鈴が飛び出した窓は二階の窓だった。もちろん普通に落ちれば無事には済まないだろう。
鈴は重力によって地面にその小さい体をたたきつけられ、ゴロゴロところがっていった。
「う……あ……や……った……」
薄れていく意識の中、鈴は家が爆ぜる様子を見届ける。
「ふふ……。あなたは爆発を起こす方法をガスなどに火を近づけるという方法しか知らなかったのでしょう。瞬間爆発……部屋の中で物を燃やして酸素が足りなくなったことによって発生した一酸化炭素は、外から急に酸素が取り入れられた場合にそれと急速に反応し、爆発を起こす……。昔、映画か何かで見たことがあります……。あなたの大好きな爆発が見れて良かったですね」
鈴は男を皮肉った。
「「鈴!」」
祈と美佳が鈴のところに駆け寄ってくる。
「ああ、祈、美佳……やったよ」
「うん、やったね……」
「ほんと、すごいよ」
二人からの称賛の声を浴びせられ、満足したのか、鈴はそのまま気を失った。
読んでくださりありがとうございます。
まずは度重なる投稿延期についてお詫び申し上げたいと思います。次話を楽しみにしてくださった方には本当に悪いことをしてしまったなと思っております。
今回の話はかなり長かったです。そのせいというのもあるのですが、遅れてしまい、本当に申し訳ありませんでした。
やっと爆破犯との決着がつきました。次は主人公が久しぶりに登場してきます。結構ハツキ君見ていませんね笑
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