影内視点第11話 捧げる機会
翌朝。
俺は再び志信様と鳴海へ向かうことになった。
昨日の失敗――水鳥だけを狙って成果が出なかったこと――を繰り返さないよう、
今日は慎重に獲物を探した。
志信様の足を引っ張るわけにはいかない。
旅は順調に進み、四日目。
鳴海軍の幹部・大牙の縄張りに入った。
事前に志信様から
何があっても決して敵対行為をするな
と命じられていた。
逆に攻撃された場合について尋ねると、
その時は志信様を逃がすことを最優先にするようにと言われた。
――志信様を逃がすために、俺は盾になる。
俺が殺されれば、俺は永遠に志信様の部下でいられる。
そう思うと、胸の奥が静かに熱くなった。
だが、そんな心配は杞憂だった。
志信様は大牙と無事に挨拶を済ませ、縄張りを抜ける許可を得た。
俺は後ろで控えていただけだが、
途中で俺の話題になったとき、
志信様は俺に都合の悪い部分をうまく誤魔化してくれた。
――志信様は、俺を守ってくれている。
その事実だけで胸が満たされた。
旅はさらに続き、
志信様の話では、北海道の最南端まで来たらしい。
明日は海を渡って、本州――
鳴海軍の総大将・蒼天のいる地へ向かうという。
海の向こうに本州が見える。
だが、今から渡れば途中で夜になるため、
今日は早めに餌を食べて休むことになった。
俺は獲物を探しに行き、
久々に――本当に久々に、水鳥を見つけた。
志信様の大好物。
絶対に仕留める。
水鳥は俺に気づいて飛び立とうとしたが遅い。
動きの先を読み、俺は一気に距離を詰めて仕留めた。
だが、勢いをつけすぎた。
急には止まれず、俺はそのまま崖下へ転げ落ちた。
衝撃で水鳥を離さないよう、
俺は必死に強く咥え続けた。
坂を転がり落ちても、
水鳥だけは絶対に離さなかった。
――よし。
これで志信様に喜んでもらえる。
体のあちこちが痛むが、そんなことはどうでもいい。
志信様が待っている。
早く戻らないと。
坂を登っていると、
志信様がこちらへ駆け下りてくるのが見えた。
俺を探してくれていたらしい。
「志信様の大好きな水鳥を仕留めましたよ。」
俺は水鳥を差し出した。
志信様は褒めてくれた。
胸が熱くなり、尻尾がぶんぶんと振れてしまった。
だがその直後、
「無茶はするな」
と注意された。
……だが、俺は志信様のためならいつでも命を捧げるつもりだ。
「大丈夫です。
志信様のためでしたら、俺はいつでも命を捧げます。」
本心だった。
その夜。
俺は明日の海越えについて考えた。
本州は遠い。
海は深く、流れも強い。
だが――
志信様を背に乗せて渡れば、
もっと志信様の役に立てる。
体力的に不安はある。
途中で力尽きるかもしれない。
だが、それでもいい。
最悪、俺の命に代えても渡り切る。
この旅の間に俺の命を捧げるなら、
明日は絶好の機会だ。
こんな機会は二度とない。
志信様を背に乗せて海を渡り切れば、
志信様は俺の忠誠心を褒めてくれるだろう。
――俺の命は志信様のものだ。
俺は静かに、明日の方針を決めた。




