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影内視点第7話 役に立つ方法

牢を出た瞬間、外の空気が胸に刺さった。

だが、自由になったわけではない。

志信様がすぐ後ろに立っていた。


「影内、俺の管轄の洞窟まで来てもらう。

 後ろをついて行くから、ゆっくり歩け。

 逃げようとは思うなよ。」


その声音は冷静で、怒りを押し殺しているように聞こえた。

――お仕置きは、洞窟で行われるのだろう。


俺は、せめて最後に志信様の役に立ちたかった。


「志信様、俺の背中に乗ってください。」


思わず口から出た言葉だった。

志信様はもう歩ける。

本来なら必要のない提案だ。


ただ、俺は――

生きている間に、少しでも志信様の役に立ちたかった。


「……何を考えている?」


警戒の色を含んだ声。

当然だ。俺は信用を失っている。


「志信様が背中に乗っていた方が、俺は逃げることが難しくなります。」


本当の理由――

“役に立ちたい”

“嫌われたくない”

“最後に何かを残したい”

そんな弱い願いは言えなかった。


志信様はしばらく黙り、やがて言った。


「……確かに、俺が後ろを歩くよりは脱走しにくいな。

 だが、念のためお前の首筋に牙を当てておく。

 少しでも怪しい動きをしたら、そのまま掻き切る。」


当然の判断だ。

俺には信用がない。


「分かりました。どうぞ、お乗りください。」


俺は伏せて背中を差し出した。

志信様が乗り、首筋に冷たい牙が触れる。


――これでいい。

もし志信様のお怒りが少しでも鎮まるなら、俺の首などどうなっても。


俺は立ち上がり、洞窟へ向かって歩き出した。

足はふらつかないが、志信様の重みがいつもより強く感じる。


だが、洞窟に着けば――

俺は殺される。

それで志信様のお怒りが鎮まるなら、それでよかった。


洞窟の奥まで運ぶと、志信様が降りた。


「よし、ここでいい。

 しばらくそのまま待て。」


怒られなかった。

それだけで胸が熱くなった。


志信様は、周義様や部下と何かを話していたが、話が終わると、俺を洞窟の外に出るように命じた。

俺は、命令通り洞窟の外に出た。


だが、次の命令でその熱は凍りつく。


「お前たち、ここに穴を掘れ。

 影内の体を埋められる大きさの穴だ。」


……生き埋め。


俺は思わず志信様を見上げた。

志信様の視線が俺を貫く。


――怖い。

――嫌われたくない。

――でも、逆らえない。


俺は視線を逸らし、伏せたまま震えた。


志信様のお怒りを鎮めるためなら、どんな罰でも受ける。

生き埋めでも構わない。

俺はもう、生き残るつもりはなかった。

少しでも志信様のお怒りが鎮まるのであればそれでよかった。


部下たちが黙々と穴を掘る音だけが響く。

俺はただ伏せて、死を待った。


「終わりました。」


掘られた穴は、俺が伏せて入れるほどの大きさだった。


「影内、穴の中に入れ。」


志信様の命令だ。

逆らう理由はない。


俺は穴に入り、底で伏せた。

頭を上げることもできない。

志信様の顔を見るのが怖かった。


――このまま土をかけられて死ぬのだろう。


そう思っていた。


「兄さん、本当に埋めるつもりなの?」


周義様の声が聞こえた。

だが志信様は答えず、代わりに太い木の枝を穴に落とした。


「影内、その枝を咥えていろ。

 力を入れて食いちぎるなよ。」


喋れなくするためだろう。

俺は枝を咥えた。


次の命令が来る。


「影内、その場で立て。」


……立つ?

生き埋めにするなら、立たせる必要はないはずだ。


迷っていると、志信様が低く言った。


「立てと言っている。」


俺は四本脚で立ち上がった。


「よし、その状態で動くな。」


俺の体は穴から上半分が出ている。

この状態では埋められない。


――何をするつもりなのだろう。


答えはすぐに分かった。


「影内が動かないうちに、穴を埋めるぞ。

 影内の脚を四本とも埋めろ。」


脚だけを埋める――

つまり、俺を地面に固定するための穴だったのだ。


俺は命令通り動かず、脚が完全に土に埋められるのを受け入れた。


結果、俺は

脚を地面に埋められ、枝を咥えたまま、地面に這いつくばるような姿勢で拘束された。


牙も脚も使えない。

完全に無力だ。


――これで、お仕置きの準備が整ったのだ。


「俺は的盧様に話をしてくる。

 お前たちは持ち場に戻れ。

 門番は交代で影内を見張れ。

 影内は、このまま大人しくしていろ。」


志信様は洞窟から離れていった。


俺は動けない。

ただ、志信様のお仕置きを待つだけだ。


だが――

志信様の役に立てるなら、それでいい。


俺は静かに、地面に伏せたまま目を閉じた。

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